峰村茜のホームページへようこそ!どうぞごゆっくりご覧ください。

6.製作家、手作りの楽器

手作りの楽器

ここまで、楽器の弾き方や楽器の構造について解説をしてきましたが、

最後にニッケルハルパの製作についてご紹介します。

2020年4月執筆

手作りの楽器です

「ニッケルハルパって楽器屋さんで買えるんですか?」

と聞かれることがあります。

 

答えは「買えません」(売っていません)。

そうお伝えするとだいたい「やっぱりね~」と言われます。

なんとなく「売っていなさそう」というのは初めて見た方でもわかるようです。

変わった形だし、そもそも名前だって聞いたことのない楽器ですから。

 

ニッケルハルパは一台一台、個人の製作家によって大切に作られています。

手作りの楽器です。

 

記事の中でも何度も

「私の楽器は○○ですが、そうでないものもあります」

と書いているのも、

一台一台の楽器の個性が自然と違ってくるからです。

 

同じ製作家が同じように作ったつもりでも、出来上がりや音色は少しずつ違います。

ましてや製作家たちは皆さん好奇心旺盛で工夫好きな方が多いです。

ちょっとでも改善点を見つけるとそれを次の楽器製作に活かす人たちなので、同じ製作家の作る楽器の特色も変化していきます。

更に、ニッケルハルパは年数を重ねるごとに音が良くなる(響くようになるのと、安定する)傾向にありますので、

同じ楽器でも年を経て響きや状態が変わっていきます。

 

一台一台違う個性

その個性も、時とともに変わっていく。

人も楽器も一緒です。

 

製作期間

ニッケルハルパを買いたい場合は、製作家本人に直接注文します。

おおまかな製作期間や値段などは、最初に製作家から教えてもらうことができます。

 

製作期間は、早い人では1年ほど。

注文がたくさん入っている製作家の場合は5年以上待つこともあります。

ですが、これも目安なので…。聞いていたよりも早くできることもあれば、かなり遅い場合もあります。

 

時間がかかるのは、まず手作りであるがゆえの作業時間、

そして木材でできた楽器であることから

材料を乾燥させたり、その形状に馴染ませたりする時間が必要になるのです。

 

注文を受けてから作り始める

基本的に、製作家が楽器を作るのは注文を受けてからです。

注文が入ることを見越して先に作り始める人はいますが、

「楽器店のように完成品がずらりと並んでいてそれを試し弾きして買う」ということはありません。

私が注文する際には、事前にその製作家の楽器の特徴や相場を聞いたうえで、

工房を訪ねてすでに完成した楽器(製作家本人用のもの)を弾かせてもらったり、話をした上で決めました。

これはスウェーデンでの話なので、他の国ですと事情が異なります。

(スウェーデン以外の国では、完成した楽器をいくつか取り寄せて販売しているところもあります)

そうでないと、他国ではなかなか楽器を手に入れられませんから。

完璧ではない楽器

「試し弾きできないんだったら、出来上がりが不満だったらどうするの?」

と思う方もいらっしゃるかもしれません。

どうするのでしょう。

おそらく「買わない」という選択肢もあると思います。

私の周りでそうしている人は今のところあまり見たことがありませんが、それもありだと思います。

 

でも、誰か製作家に楽器を注文した時点で「その製作家の作風がどういうものか」はある程度知っているはずなので、

思っていたのと全然違う!という事態には基本的になりません。

 

また、楽器は完璧ではありません。

特に「出来立ての楽器」は赤ちゃんのようなもので、これから育てていく必要があると聞きました。

最初から完璧なニッケルハルパは存在しませんし、完璧に作ったつもりでも後から修正箇所が出てきます。

ある程度の期間弾いてみて初めてわかる課題などもあります。

 

完成した楽器に不具合があれば、その場で言って(もしくは後で連絡して)製作家に手直ししてもらいます。

製作家は「自分の作った楽器は売った後も面倒を見る」という気持ちを持っていますので、

楽器が自分の手を離れた後も、きちんと対応してくれます。

作って売って終わり、ではありません。

 

だからこそ、製作家は「大切に弾いてくれる人のために楽器を作りたい」と思っています。

 

手間がかかっても…

ニッケルハルパは「手間がかかる」と言える楽器かもしれません。

メロディ弦が切れても、日本の普通の楽器店には売っていません。

(共鳴弦はギターの弦を使っているので大丈夫です)

修理の技術がある工房も限られています。

(工房が存在しているだけでありがたいです)

大きな修理になるとスウェーデンに送り返すことになるかもしれません。

 

それでも私がニッケルハルパを演奏しているのは、この音色が好きだからです。

柔らかさと鋭さを持つ音。

激しさと優しさを持つ音。

親しみと気高さを感じさせる音。

とても美しい音を出す、楽しい楽器です。

 

「手間がかかる子ほどかわいい」…と思えるほどの境地には、まだ至っていない私です。

やっぱりどこにいてもメンテナンス可能な楽器の方が、安心そうなイメージはありますし、

何かあったら、自分でアクションを起こしてどうにかしないといけないなといつも思っています。

でもその分、何かあった時に人に相談することや人に頼るということを以前よりも積極的にできるようになってきましたし、

そんな風に人ときちんと繋がって音楽ができるのは本望です。

 

手間がかかると言ってしまえばそれまでですが、それによって「得られるもの」もまたあるんです。

 

「誰が作った楽器?」

製作家の名前が書いてある

この写真、楽器の中(f字のあなの中)に紙が貼ってあるの、見えますか?

どの楽器にも製作家の名前と製作年が書かれています。

私の楽器はBo Nilsson作、2019年完成の楽器です。

 

セッションなどで初めて会う人とは、よく「誰の楽器?」という話を最初にします。

弾く人は大抵、楽器とその製作家について興味があります。

製作家の数も限られていますので、楽器を見ただけで誰が作ったかわかるものもあります。

色、形、大きさ、重さ、装飾、音、弾き心地…。

いつ頃作られた楽器か、も話題になります。

同じ製作家の楽器を持っている人がいれば、それだけで仲間のように思えてきたり。

製作家と楽器の話でも結構盛り上がります。

 

誰の楽器を弾くべきなのか、という問いに正解はありません。

 

楽器の値段

楽器の値段です。皆さん気になるようで、よく聞かれます。

なんでもそうだと思いますが、物によってそれぞれ値段が違います。

はっきり「これぐらい」と言い切るのは難しいですし、できればトラブルも避けたいので書こうか迷いました。

 

それでも、「ニッケルハルパを始めてみたい」という方の参考になったら良いなという前向きな気持ちと、

値段以上の価値がある楽器だということを知って欲しいという想いを込めて書きます。

 

私なりの表現にしますが、スウェーデン国内でニッケルハルパを購入した場合、

楽器本体がだいたいオーボエと同じくらいの相場の範囲かな

という印象です。

オーボエというのは、オーケストラとか吹奏楽で目にする黒と銀色の木管楽器です。クラリネットと形状が似ています。

「オーボエ 相場」と検索して頂ければだいたいの範囲が出てきます。

楽器ですから、値段の幅はあります。

 

あえてこのようなふんわりとした表現にしてみましたが、想像がつきますでしょうか?

 

これは楽器本体のみの値段なので、

これにニッケルハルパ用のソフトケース(3~5万円くらい)、

ニッケルハルパ用の弓(数万円のもの~十数万円、もしくはそれ以上のものまで様々)

などを購入する必要があります。

弓はフィドル(ヴァイオリン)やチェロの分数弓(子供用などで小さめに作られている弓)を使用している人もいます。

 

また、これはスウェーデン国内で購入した場合なので、

スウェーデン国外で販売されているものは更に様々な諸費用(輸送コスト、輸入消費税、通関料等)が上乗せでかかるそうです。

輸入時の為替相場の変動の影響も受けます。

 

また、販売者は「楽器の管理」にも気を配っています。

輸入してあとは売るだけ、ではありません。

例えば日本に到着したてものは、楽器が日本の湿度に慣れていませんので、湿気にやられないようにきちんと管理することも求められます。

スウェーデンは寒くて乾燥しているため、スウェーデンで育った木で作られたニッケルハルパも「乾燥に強く、湿気と熱に弱い」という特徴を持っています。

特に日本で過ごす最初の夏は楽器も不安定になりやすく、湿気でキーが膨張して途中で引っ掛かってしまうこともよくあります。

キーの引っ掛かりはあまりにもひどいようでしたら、キーをほんの少しだけ削って調整することもありますし、

あまり使わないキーは「放っておいたらいつの間にか改善した」ということもあります。

 

「高い」と思いますか?

この相場、高いと思いましたか?

私は最初、思いました。まだニッケルハルパをよく知らなかった頃です。

理由はありませんが、なんとなく「もっと安いんじゃないかな?」と心のどこかで思っていたようです。

 

でも楽器が作られる過程や、どれくらい手がかかっているものなのか

どれくらい大切に作られたものなのか、ということを知るうちに

自然とその思いは消えていきました。

 

ましてやニッケルハルパを好きな人達の「ひたむきさ」を見ていたら、「値段以上の価値がある楽器だ」と思うようになりました。

皆さん純粋なんです。ニッケルハルパやスウェーデン民族音楽が好きなんだなーと思います。

そういう人達と知り合い、繋がることができて、

この世界に足を踏み入れるきっかけをくれたニッケルハルパに感謝しています

 

余談ですが、スウェーデンでは「ニッケルハルパを弾いている」はイコール「スウェーデン民族音楽を弾いている」です。

他のジャンルの音楽も弾く人はいますが、そういう人も民族音楽を知った上で他のジャンルの音楽「も」弾いています。

また、スウェーデンの民族音楽ではニッケルハルパ以外にもフィドル(ヴァイオリン)をよく使います。

(というかフィドルの方が圧倒的に多いです)

これについてはスウェーデン民族音楽の記事をご覧ください。

 

参考:ニッケルハルパを始めてみたい人へ

ここまで読んできて「ニッケルハルパを始めたい」「ニッケルハルパが欲しい」と思う方がいらっしゃるかもしれません。

そんな方へ向けて「ニッケルハルパを始めたい人へ」という記事を作りました

私がニッケルハルパを初めて手にしたのも日本(東京)でしたので、ぜひ参考にして頂ければと思っています。

ちなみに私の場合、しばらくは自分の楽器を買わずに練習していました。そのこともご紹介しています。

記事は以下のボタン(もしくはメニューの「解説記事」から)をクリックしてご覧頂けます。

日本でニッケルハルパを販売しているところの情報も載っています。

「ニッケルハルパを始めたい人へ」の記事へ

ニッケルハルパ入門記事は今回の記事で終了です。

いかがでしたか?

この他にも解説記事がありますので、ぜひご覧ください。

ちなみにこの記事をお読みの方におすすめなのは、

「スウェーデン民族音楽について」の記事です。

そもそもスウェーデン民族音楽ってどんな音楽なのか?ということを簡単にご紹介しています。

ニッケルハルパとスウェーデン民族音楽の世界を、どうぞこれからもお楽しみください。