ーCONTENTSー
2020年4月執筆、2023年7月更新
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2020年4月執筆、2023年7月更新
そもそもニッケルハルパ(Nyckelharpa)とは何なのか?
→ニッケルハルパは「スウェーデンの伝統楽器(民族楽器)」と言われています。
→→つまり「スウェーデンの伝統音楽(民族音楽)を演奏する時に使われてきた楽器」と言い換えても良いかもしれません。
といっても、スウェーデンの音楽ではニッケルハルパ以外の楽器も使用します。
むしろ割合としては、ニッケルハルパよりもフィドル(ヴァイオリン)の方が多いですし、その他の楽器ももちろん使われています。
また、スウェーデンの多くの人々が「ニッケルハルパがスウェーデンの楽器である」という認識を持っており、スウェーデンの旧紙幣にもニッケルハルパが描かれていたものの、
実はその起源がスウェーデンにあるのかどうかは謎に包まれています。
ヨーロッパ大陸の他の国から伝えられた楽器である可能性も高いと言われています。
それでもニッケルハルパが「スウェーデンの伝統楽器」と言われる由縁は、
今現在スウェーデンの「ウップランド地方」にのみ伝わっている楽器であり、そこに連綿と続いた伝統があるからです。
(スウェーデン以外の国でニッケルハルパが過去に存在していたのだとしても、今現在は消滅し、伝統が残っていません)
「ニッケルハルパ」。
日本語で一度聞いただけでは覚えにくい名前ですが、スウェーデン語ではちゃんと意味のある名前です。
「金属のニッケルと関係しているの?」とよく聞かれますが、違います。
ニッケルハルパの「ニッケル=nyckel」という単語には「鍵、キー(英語のkey)」という意味があり、ニッケルハルパの楽器で言うと、「鍵盤部分」のことを指しています。
そして「ハルパ=harpa」という単語は、昔は「弦楽器全般」のことを指していたそうです。
つまり、「キー(鍵盤)のついた弦楽器」です。
ちなみに現代のスウェーデンでは、一般的に「harpa」と言うと「ハープ」のことを指します。私も最初は「ハープ」の方の意味なのかと思っていました。
そもそもスウェーデンはどこなのか?という話なのですが、
↓スウェーデンはこここです↓
(地図は左がノルウェー、下がデンマーク、右がフィンランド)
いわゆる「北欧」と呼ばれる地域に含まれています。
(※北欧の定義にも様々なものがありますので、上記の国以外にももっと範囲を広く含む場合もあります)
国旗は上の画像のようなもの。面積は日本の約1.2倍(約45万㎢)。人口は日本の1/12ほど(約1000万人)です。(2020年現在)
スウェーデンといえば思い出されるのは、
イケア(IKEA)。ボルボ。ABBA。ノーベル賞。世界一臭い缶詰。魔女の宅急便の街のモデル。H&M。長靴下のピッピ…
などなど。
写真:首都ストックホルム
Ericsson(今はSony Ericsson)、Spotifyなども実はスウェーデンの企業で、イノベーションも盛んな国なんです。
また、J-POPの楽曲にもスウェーデン人作曲家が曲を提供しているそうです。
ちなみに、よく「スイス」(ハイジ)や「フィンランド」(ムーミン)と間違われますが、違います。
「ス」始まりでスイスと間違われること多数。
「ムーミンとか、マリメッコの国でしょ?」とフィンランドと間違われること多数。
「長靴下のピッピ」の国、スウェーデン。
ぜひよろしくお願いします!
少しだけ、スウェーデンの風景をお楽しみください。
ブレーキンゲ地方。留学先の学校の敷地内です。
ストックホルム、ユールゴーデン島の野生のリス。
北の方の街、ウメオにて。ベンチの奥は普段は湖。凍って雪原になっています。
ブレーキンゲ地方にある島Aspö。朝の散歩にて。
当HPの写真は、プロフィールや演奏写真など私が映っている写真を除いて、私自身が撮影したものを使用しています。
写真のクオリティやボケ具合はさておき、ただの素人が普通のデジカメと携帯カメラで撮っただけで、きれいに映るスウェーデンの風景はすごいです。
そのスウェーデンの中でも、ニッケルハルパが伝承されているのは「ウップランド地方」です。
地図の、色が濃くなっているところがウップランド地方です。
スウェーデンの真ん中あたり。首都ストックホルムの北部を含みます。
Wikipediaより。Lapplänning (highlighting by Lokal_Profil) – Based on Sverigekarta-Landskap.svg by Lapplänning which was based on SWE-Map Kommuner2007.svg by Lokal_Profil, CC 表示-継承 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7028776による
ここで「地方」について少し説明したいと思います。
「地方」というのは、スウェーデン語で「landskap(ランドスカープ)」と言います。
スウェーデンには全部で25の地方があり、これらは古い時代の行政区分として機能していました。
それぞれの地方にマーク(魚やライオンなどが描かれたもの)があり、特定の植物が象徴として指定されています。
地方名には「ウップランド(Uppland)」のように「○○land」という呼び名のところが多い印象ですが、
「ダーラナ(Dalarna)」や「スコーネ(Skåne)」のように「land」がついていないものもあります。
(landというスウェーデン語には、「土地」や「国」という意味があります)
この「地方」とは別に「県」=「län(レーン)」があります。
「県(län)」は「landskap」をもとに造られた現在の行政区分ですが、
「地方」と全く同じ区分にはなっていません。
例えばウップランド地方は、ウプサラ県全体とストックホルム県の一部を含んでいます。
「地方(landskap)」は現在、行政区分としては機能していませんが、
出身地や天気予報、文化・歴史的な事柄を説明する際には「県」ではなく「地方(landskap)」単位で話す場合がほとんどです。
(landskapについてもう少し知りたい方はWikipedia「スウェーデンの地方」もご覧ください)
スウェーデンの伝統音楽とダンスも、「地方」毎に特色が大きく異なっています。
その中でもニッケルハルパが伝承されてきたのが、ウップランド地方でした。
(ウップランド地方に伝わる曲の中には当時のニッケルハルパだからこそ弾きやすい(より特徴が出る)曲というのもたくさんあります)
実際、スウェーデンのウップランド地方に行くとニッケルハルパを弾く地元の方々に会えますし、反対に他の地方に行くとあまり見かけないように思います。
しかし、なぜウップランド地方でのみニッケルハルパが伝承されてきたのかはわかっていません。
ニッケルハルパの起源については様々な説があり、例えば
「ヨーロッパの別の国で生まれた楽器が渡ってきた」という説もあれば、
「兵役として別の国に行っていたウップランドの人が、現地の別の楽器にヒントを得てオリジナルで作り上げた楽器だ」という説もあります。
また、ウップランド地方の教会の壁画には、ニッケルハルパらしき楽器の絵がたくさん描かれていますが(他の地方にはあまりありません)、
それらも実際に楽器が存在していた証拠にはなりません。
なぜなら、教会の壁画には、「天使」のような、実際には存在していないモチーフも多く描かれているし、
壁画自体が別の国の職人によってデザインされ描かれたものかもしれないから、です。
いずれにせよ、
現在ではニッケルハルパを弾く人は世界に広がり、音楽も様々なジャンルが弾かれるようになりました。
特にヨーロッパの他の地域では、スウェーデンの音楽よりもむしろ、ニッケルハルパで自国の音楽(クラシックなど)を弾く人もよく見かけます。
その場合、楽器自体の作りや楽器の持ち方・弾き方がスウェーデン式と違っていたり、音色作りも変えています。
私自身は、それでもやはりスウェーデンの奏者の弾くニッケルハルパの音色と演奏に強く惹きつけられますが、それぞれに好きな音楽を楽しんでいけたら良いのかなと思います。
ニッケルハルパとスウェーデンという国について、イメージが湧いてきましたでしょうか?
次の記事では、ニッケルハルパの弾き方をご紹介します。