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2.楽器の奏法

楽器の奏法

さあ、ニッケルハルパの弾き方を見ていきましょう。

まずは音の出し方です。

ニッケルハルパの弾き方

ニッケルハルパは基本的にこのように構えて弾きます。

片方の手(大抵は利き手に関わらず右手)でヴァイオリンのように弓を持ち上下に動かし、弦を弾く

→音を出す

もう片方の手(大抵は、利き手に関わらず左手)でピアノの鍵盤のようなキーを押す

→音を変える

右手と左手で役割分担しています。

 

右手で音を出し、左手で音を変える…

ヴァイオリンやチェロのように、弓で弦を擦って音を出す弦楽器を「擦弦楽器(さつげんがっき)」と言いますが、

私はニッケルハルパ以外の擦弦楽器を経験したことがないので、楽器を始めた頃は左右が混乱してよくごちゃごちゃになりました。

右手は上下の動き、左手は左右の動きが中心になります。

 

右手に持っている弓について、少し解説します。

私が今持っているのはこの2種類ですが、もっと様々なタイプのものがあります。

木の部分のカーブがもっと大きいものや、カーブが全く無くてまっすぐなタイプのものなど。

この2つはちょうどその中間くらいです。

 

毛の長さは2つとも38cmですが、これも奏者によって違います。

短すぎると弾きにくいし、長すぎると肩のストラップに当たってしまいます。

弓の長さは、身長や腕の長さと比例する傾向にあります。

弓のタイプ(形状)や長さは個人の好みで変わってきます。

 

キー

右手の弓で弦を弾いて音を出し、左手でキー(鍵盤)を押さえて音を変えます。

↓キーを押さえる様子はこんな感じです↓

キーについては、詳しくは「4.キー」のページで紹介しています。

 

次に楽器を構える際のポイントをご紹介します。

ポイント① ストラップ

立って演奏する場合には、写真のように首からストラップをかけて演奏します。

ストラップを首から、左手は自由

正確には、首に負担がかからないように首の後ろ(下の方)にストラップをひっかけています

また、左手で楽器を支えているように見えるかもしれませんが、左手は自由に動くようになっています。(でも楽器には常に触れています)

右側の肋骨のあたりに楽器が少し乗っているような感じです。

 

座っている時も同じようにストラップをかけるか、ストラップを使わずに足の上に置いて演奏する方もいます。

その場合、楽器の位置が低くなりすぎないよう、小さな手作りのクッションを足と楽器の間に挟んで、楽器の高さを調節したり、ストラップも、特別なものを使用している人もいます。

私自身は、立って弾く時も座って弾く時も同様に通常のストラップを首からかけて演奏しています。

 

ポイント② 楽器の角度

楽器はまっすぐに構えるよりも、角度をつけてちょっと斜めにしています

ポイントは3つ。

〈傾き〉楽器全体を傾けていて、楽器のボディ底面が身体にぴったりとくっつかないようになっています。

〈低い〉楽器のペグ部分(写真向かって右側)が少し下がっています。

〈遠い〉楽器のペグ側(写真向かって右側)が身体から遠くなるような角度になっています。奏者本人からすると、右手側は近く左手側が遠いという感じです。

 

身体に楽器をぴたりとくっつけてしまうと音の響きを止めてしまうので、楽器のボディ(底面)と自分の身体が密着しないようにします。

また、右手は主に肘の曲げ伸ばしで弓を動かすため、楽器が床と並行であるよりも、ある程度の角度がついていた方が右手が動かしやすい傾向にあります。

 

写真の構え方例は私がDitteという人から習った基本形です。

本人の身体的特徴や状況によって個人差があるので、構え方や角度は人によって違います。

一番大切なのは本人の身体が楽に、自由に、出したい音を出せる状況であることだと私は考えています。

(その結果、私自身は基本形に落ち着いています)

 

弦について

 

弦は全部で16本

写真の青枠で囲っている部分を拡大すると…

弦は全部で16本

このようになります。

ニッケルハルパの弦は全部で16本あります。

と説明すると、「え、16本全部を弾き分けるの?」と聞かれたりしますが、そんなことはありません。

弾くのは4本

実際に弓で弾く弦は4本だけです。

この4本のうち、キーのついていない1本(写真で一番上)の弦を「ドローン弦」

キーがついている3本の弦を「メロディ弦」と呼びます。

↑ドローン弦とメロディ弦の位置関係はこのようになっています↑

写真の一番上の弦がドローン弦、下3本がメロディ弦です。

 

ドローン弦

メロディ弦はその名の通りメロディを奏でることができる弦です。そのまんまです。

でも、「ドローン弦」というのは聞き慣れない言葉です。

 

ドローン弦の「ドローン」というのは、何かメロディを弾いている時に「単音で弾かれる長い音」を指します。

 

このドローン弦というのは、少し古いタイプのニッケルハルパでよく演奏されていました。

メロディを弾いている間も、ドローン弦の音(同じ低音)をずっと鳴らしているのです。

↓参考にこちらをご覧ください↓Daniel Petterson(ダニエル・ペッテション)の演奏です。

演奏の間、ずっとA(ラ)の音が聞こえています。

ドローン弦が弾かれることで独特の響きになって聴こえてきます。

 

動画の楽器は古いタイプのもので、ドローン弦を常に使う演奏が特徴的でした。

現代のニッケルハルパはより広い範囲での音域が出るようになり、キーの付いたメロディ弦同士で和音を作ることが多くなりました。

(ドローンを弾きたい場合も、メロディ弦の開放弦(キーを押さないで弾くこと)を使ってドローン弦的に弾くこともできます)

そのため、ドローン弦自体を曲中ずっとドローンとして使うことはあまりありません。

メロディ弦を使って和音を作り、そこにドローン弦の低音を適宜入れる、というような奏法が多いかなと思います。

 

※メロディ弦に比べて弾く機会は少ないドローン弦ですが、その低音の響きは存在感があり、大切にされています。

※動画で紹介したような少し古いタイプのニッケルハルパは、現在でも弾かれています。

※ドローン弦の部分にもキーを付けた、4列のキーのニッケルハルパも存在します。

 

4本の弦のチューニング

弦楽器をやっている人なら「当たり前」と思うことかもしれませんが、

弦楽器の弦は、1本で1つの音にチューニングされています(「この弦はドの音」「この弦はラの音」…と言う感じです)

↑私は弦楽器をあまりやったことが無かったので、知りませんでした。

 

メロディ弦とドローン弦も、それぞれの弦がそれぞれの音程でチューニングされています。

↓チューニングの音はこのようになっています↓

メロディ弦のチューニング

写真で上の方に位置している弦は低音になっています。

写真で下の方に位置している弦は高音になっています。

低音の弦は太く高音の弦は細いのが見えますでしょうか。

 

一番低い音にチューニングされているのはドローン弦で、C(ド)の音になっています。

次は一番低い音のメロディ弦G(ソ)の音に

その次のメロディ弦はC(ド)の音に。これはドローン弦のC(ド)の音よりも、1オクターブ上の音に当たります。

最後に一番高い音のメロディ弦は、A(ラ)の音にチューニングされています。

実際に弾いてみるとこのような感じです↓※音が出ます

これら4本の弦を使い分けながら、ニッケルハルパは演奏されています。

 

こちらに書いたチューニングは最も一般的なものですが、奏者によってそれぞれの弦のチューニングの音を変えている人もいます。例えば、通常はCでチューニングする弦をDでチューニングするとか。

(また、チューニングは通常440Hzで行います。楽器全体の響きが良くなるよう、音ごとにセント単位でチューニングを変えています。例えばAは-2、Cは+4とか)

 

さて、では残りの12本の弦は何のためにあるのでしょうか?

これは「共鳴弦」と呼ばれる弦になっていて、こちらについては次のページ「3.共鳴弦」で説明しています。