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クラスメイトの話その2(よくキレてた人)

/ スウェーデンの民族楽器「ニッケルハルパ」奏者

誰かの短所や嫌な面を見た時、「その人の良い面を見つけてみよう」とよく言われますが、私はそれが無理です。むしろその短所を見つめ続けた方が、最終的にその人を受け入れられる気がするんです。という話です。


先日、留学した時のクラスメイトの話を書きましたが、その中で書いた「よくキレる女性」について。

その女性は私よりもかなり年上で、私の親世代の人でした。仮に名前をBさんとします。

このBさんは普段は普通です。アウトドアが好きで一人の時間を大切にする、でも同時にとても社交的である、そんな人でした。年齢よりも若々しく、でも寛容で大人な面ももちろんある方でした。今も私の友達です。

そんな彼女は演奏の時、特に真剣になるとよくキレました。何かのスイッチが入った途端にキレます。「こんな演奏全然ダメ!ありえない!!」。自分ならまだしも、主に他人の演奏に対してものすごいダメ出しをしてくるのです。しばらくは嫌でした。

演奏以外でも、自分の常識と違うことを人がやりだすと、パニックになるようなかたちでキレていました。

私は彼女と寮の部屋が近く(最初は隣の部屋でしたが、私が昼間ずっと練習していてうるさかったので部屋を移りました。私はその時結構ショックで、幽霊が怖くて近寄れなかった放課後の学校で練習することを決めました。悲しみは幽霊への恐怖に打ち勝つのです。ていうか幽霊、むしろ出てきて私を慰めてくれ!出てきて私の音楽で踊ってくれ!と思っていました)、部屋の近さもあってか彼女と行動を共にすることも多かったです。

彼女は自分がよくキレることを自覚していて、でもどうしようもないみたいでした。

私に対しても普段は寛容なのに、キレる時はキレます(例えば、宿題のためにあえて変なコード(和音)を入れて弾いただけで「それは変だー!!」とキレた。あと皆で食べる予定のサラダを一緒に作っている時に「黒豆(スウェーデンの小粒の黒豆)を入れたい」と言ったらキレた。でもおいしさをプレゼンしたら機嫌が直った)。キレた後で謝られたりもしましたし、他の人に対してはもっとめちゃめちゃなキレ方をしていたので、「これでもまだ少ない方なんだろうなー」と思っていました。

キレられる度、最初は「えっ…なんでこんなキレるの?(泣)」と思っていたのですが、だんだん慣れてきたんです。キレられるのって慣れるんだな、と思いました。あと、次第にBさんがキレていても私も動揺することが減っていきました。最終的には、「なんかキレてるけど、これがこの人のデフォルトだしな」と思いながら冷静に自分の意見を伝えられることができるようになっていきました。

それは周りの皆も同じだったらしく、最初はキレたBさんに対して感情的に反論したり、「は?!」って態度をとっていた他のクラスメイト達も、だんだんと「静かに、穏やかに、事実を伝える。それだけだ」方式の対応に変わっていきました。Bさんは勘違いをすることも多く、勘違いしたまま「この前決めたことと違うじゃないかーっ!」とキレることも多かったのですが、そんな時に、クラスの最年少かつ食器の後片づけをしないランキング栄えある第一位(私調べ)の女の子が

「B、私達は皆でそれを決めたよ。あなたもそこにいた。あなたが私達のことを信じるか信じないかはあなたの自由だから、信じないならそれでも良いけど」

と冷静に言ってのけたのには私も感動しました。この前までだったら絶対に感情的に反論してたのに…!人って成長するんだなとしみじみ思いました。

Bさんはフィドル弾きで、もともとクラシック音楽(ヴァイオリン)の高等教育をかなりのレベルまで受けていました。音大のオケで主席、みたいな。ただ、途中でどうしようもない挫折を味わい、音楽をしばらくやめていて、そのことをずっと後悔していました。(これは私が自分の課題として行ったインタビューの中で知ったことです)

彼女の耳にはきっと色々なものが聴こえていたのでしょう。それが彼女をキレさせたのだと思います。不安も後悔もその他色々な感情が、あったのでしょう。ちゃんとしなければダメだという思いが、あったのでしょう。

キレるのはしょうがないです。感情なので。キレられるのも最初は嫌だったしムカついたけど、この打たれ弱い私でさえ、まあ慣れたし。私もよく怒るし、人のことなかなか信用しないし。

誰かの短所を見た時、「代わりにその人の良い所を見る」という方法もありますが、それよりもむしろ「その人の短所と向き合う」方が、私にとってはその人を受け入れるきっかけになるんだな、と思った出来事でした。良い所を見ようとしても、無理なんです。嫌な面ばっかり見えます。だから、「こいつ、ムカつく!」と思って、「ムカつくムカつくムカつく!」と思って、「こんなことでキレるなんて変だ!」と思って思って思い続けた方が、かえってその短所を受け入れられる瞬間が訪れやすい気がするのです。

その時やっと、私はその人と向き合える。

結局自分が嫌いなのは、「こいつムカつく!という気持ちを抱いている自分自身」だったりするんです。そんな自分を見るのが辛いから、ムカつかせる相手が嫌で仕方ない。でもムカついて良いんです。キレて良いんです。ムカつく!って思い続けるとある日突然ふっと力が抜けるのは、そういうことじゃないかと思います。

Bさんは今も大切な友達の一人です。

122曲目は「Polska efter Björn Ståbi」です!

今日もお読みいただきありがとうございました!