今年の振り返り①ではソロの演奏を通じて思ったことを書きましたが、②ではデュオの演奏(デュオデュオデュオvol.1・vol.2・トリタニさんとのデュオ、をはじめとする様々な機会)を通じて思ったことを書きます。
デュオを通じて学んだことー全体像、相手の良さをとらえる
デュオを通じて学んだことはたくさんありますが、なかでも大事だと思ったのが、「全体像を遠くから見ること」と、「一緒に弾く相手の魅力(二人の魅力)をいかに自分が認識できているか」ということです。
自分がどう演奏するか・自分が相手にどう絡んでいくかを考えたり想像する時に、「自分がどう動くか」を出発点として考えるのではなくて、二人の演奏の全体像をとらえるところから始めて、その中で自分が今どういう音を出すのがよさそうか、を考える、ということです。
全体像をとらえる時は、細かいこと(音程やタイミングのずれなど)に目を向けるのではなく、もっと遠くから、全体を通して二人が出している雰囲気と、全体を通して見えてくる二人の良いところを見つけるようにします。
デュオのリハ録音を聴いても、自分の音にばかり意識がいったり、自分の演奏のダメなところがよく目につくものですが、それよりももっと遠くから全体を見るように心がけると、「あ、いいかも」と思う瞬間が必ずいくつかあります。
そこで得られる感情や雰囲気をスタート地点にして、ふくらませていくような感じです。
(具体的には、イヤホンをして真剣に録音を聴くのではなく、くつろいだり何か作業をしながらスマホで録音を流しっぱなしにして、自然と耳に残る瞬間や空気をとらえていくような感じです)
特に、相手の演奏の良いところに目を向けて、それをふくらませる方向で想像してくと、自分の出したい音がより明確になるように私は感じています。
自分のこだわりを手放せるかどうか
上に書いたような方法は、ある意味では相手ありきの演奏で、自分軸が無いともいえるかもしれませんが、正直な気持ちを言うと、誰かと一緒に演奏する時は自分のこだわりを手放す勇気が試されている、と私は感じています。
こだわりを持つのは自然なことだし、悪いことだとは全く思っていませんが、自分のこだわりが相手の良さを見えなくしている、と感じることが私には何度もありました。
ここはこういう風に演奏すべきだとか、私はこういう風に音を出すべきなんだ、とか思ってしまうことによって、相手の音を聴けなくしてしまっている。
(もしくは、自分がうまく弾けないから、どうすべきか?という改善策ばかり考えすぎて、相手を聴けなくしていたり)
自分のこだわりを手放すのは、勇気がいることだと思います。その曲やその音楽をそういう風に弾くのが自分のアイデンティティになっているなら、それを手放すのは自分が空っぽになったような気がするからです。自分が学んできたものや積み上げてきたものを、違うように弾いていいのか?という葛藤もあります。
でもそれを手放しても自分は空っぽにはならないし、何も知らなかった頃には戻らないし、むしろ新しいもの(そしてもっといいもの)が生み出される。
ということを、頭ではわかっていてもなかなか実行できないものですが、
できた時にはすがすがしい気持ちになったし、弾く時に安心して弾けるのだとわかりました。
良くも悪くも、影響を与え合っていいのだと思う(それに、たぶん悪くはならない)
誰かと一緒に演奏する時、「自分は自分、相手は相手」という考えはもちろん基本としてはありますが、各々が別々で演奏しているようなわりきった感じで弾くのは、私には少し違和感がありました。
(その方が演奏しやすいのかも?と思ってリハで試してみたことが何度かありますが、相手が誰であっても、そういう風にやると弾きにくかったです。意地をはっている気持ちになりました)
自分ひとりで弾いている時でさえ、その時々で曲のもっていきかたは変わるので、ましてや誰かと一緒に弾いている時は相手と自分で影響は受けあうものだと感じました。
影響を受けることで、もしかしたら自分は「普段と全然違うこと」をすることになるかもしれません。
普段と違うことをするのにはたいてい不安が伴います。これで結果が悪くなってしまったらどうするのだ?という。
でも、それでいいのだと思いました。全然違う感じになってもいいし、悪い結果にはならない(たぶん)、と。
もし、普段は自分一人だけで弾いている曲を他の人と弾く場合も、ソロの時とはもはや別の曲として、新しい気持ちでその曲を演奏した方が、私にとっては弾きやすいし、心地が良いのだと知りました。
デュオを通じて、特に強く感じたことを書きました。
ここに書いたことは、デュオの時だけではなくて、普段他の人の音楽を聴いたり、コンサートに行ったり、誰かと話したりする時にも、大切なことなのかもしれないと思っています。
少し見方を変えて、今よりも少し遠いところから全体を見たり、目の前の音楽や人の良いところを認識できるように、勇気を持つ、ということです。
俯瞰的な見方や、肯定的な見方をするのは、その反対の見方をするよりもずっと難しい時があります。
少しずつできるようになったらいいなと思うし、そのためにももっとたくさんの人や音楽にふれていきたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました!