前回の続きです。
もともと限界を感じてはいたんです。
サークルの風潮もあってか、下級生に厳しめに当たる(ように当時は感じていた、実際は違ったかもしれない)指導。先輩たちや同級生は皆良い人たちだしお世話になっているから言えなかったけど、やっぱりすごい嫌でした。あと集団行動も本当は苦手でした。合宿に参加しなくちゃいけない雰囲気とか、行事に参加しなくちゃいけない空気感とか。それを苦手だと思うこと自体に罪悪感もありました。楽しんでなくちゃいけないかな、という。
でも一番の原因は、自分が自分にずっとダメ出しし続けていたことでした。こんな音じゃダメだ。こんな吹き方じゃダメだ。受験時代はそうやって乗り切ってきたけど、自分のお尻を叩いて頑張るのには限界がありました。
ある日サークルのバンド練習の帰り道、サークルの一学年上のトランペットの先輩にばったり会いました。先輩は何気なく私に聞きました。「あ、バンド練だったんだ?楽しかった?」
その問いかけに返す言葉が、出てきませんでした。「はい、楽しかったです」の一言がどうしても言えなかったんです。たった一言言えばその場で会話は終わるのに、どうしても言えなかった。全然楽しくない、辛い。
黙ってしまった私を見て先輩が心配して明るく声をかけてくれて、その場ではおさまりましたが、私はその時にサークルを辞めよう、と思いました。今までこんなに頑張ってきたのに辞めるなんてカッコ悪い、と思いました。でももう耐えられない。私はこれ以上音楽を嫌いになったらいけない。
私はその頃既に、今までこんなに好きだった音楽が嫌いになりかけていました。
それは2009年の3月頃でした。大学1年生の終わりに、私はサークルを辞めました。
それでも私は相変わらず良い人でいたくて、辞めてからもサークルの同級生たちのライブを見に行ったりしました。ライブは楽しいけど自分はどうしてあそこにいないんだろう、といつも涙が出てきました。今思えば、強くなれよ、別に気を使ってライブ見に行かなくて良いんだぞ、と声をかけてあげたくなりますが。
サークルで行われている、ある大きなライブを見に行った時のこと。お世話になった優しいクラリネットの女性の先輩(私が1年の時4年だった人で、その時はもう社会人になっていた)が「そういえばあのクラ(クラリネット)の子、この前行ったら辞めてたんですよー!びっくりですよね!」といかにもゴシップを話すような声で笑いながら私のことを話しているのが聞こえました。お腹のあたりがヒヤッとしました。その先輩は私が来ていることを知らなかったんです。でも周りの人はたぶん私のことが見えていて、その話題はそこで終わったみたいですが、私はそれをじっと聞きながら、お世話になっていたのに辞めた申し訳なさと、そんなに簡単に人のことを笑ってしまえる不用心さと残酷さを噛みしめていました。その先輩の発言を聞いて、私は同級生たちのライブに行くのは辞めにしました。サークルと関わるのはもうやめにしよう、とやっと思えました。良い人でいることはできない。
これだけ書くと暗い話みたいに思えますが(実際暗いかも。すみません)、私は先輩に感謝しています。言われる立場の人、弱い立場の人、黙って言われるがままの人がどんな気持ちで他人の心ない言葉を聞いているのかがよくわかったんです。今までもそういうことはあったし、もともとわかっていたつもりでしたが、その時は本当によくわかった。言う方は冗談のつもりかもしれない。でも言われる方は本気で生きている。そこで絶対にへこたれない。その時感じた悔しい気持ちも全部、自分がこれから頑張って生きていくパワーにしてみせる。
まあ、本当に悔しかったです。単純に。
私もそうやって知らず知らずのうちに傷つけてきた人がいるんだろうな、とも思いましたし。