ニッケルハルパで留学していた時の話です。
普段から部屋で練習していた私
私はよく、寮の自分の部屋で楽器の練習をしていました。
自室の鍵で学校にも出入り自由だったので、学校で練習することもできたのですが、放課後の誰もいない学校ってちょっと怖いんですよね…。
実は以前、留学先のブレーキンゲの学校で、誰もいないのに激しいノック音がはっきりと聞こえたことがありまして。
それ以来、誰もいない学校が怖くてですね(笑)
ニッケルハルパの留学先(ESI)も、学校になる前は精神病院だった時代があったらしくて(その前はお屋敷とか邸宅みたいなものだったと思います。他の人は「お城」って呼んでいました)、
病院時代のルールを書いた紙とかがジョークで廊下に貼ってありました(笑)
あと、昔のニッケルハルパ奏者のおじさんたちの、白黒の大きいイラストが階段の壁の上に貼ってあって、風でゆらゆら揺れているんですよね。怖いんですよ。行ったことのある人ならわかると思うのですが。
Eric Sahlströmの像もあるし。これと同じ像が廊下にありました↓
そういうわけで、学校で一人で練習するのが怖いなと思っていたので部屋で練習していたんです。
一応、常識的な時間内で練習していたし、私よりも激しく(ダンダン足踏みしながら)練習している人もいたので、まあ良いかなと思っていたんですよね。
キッチンにて。目が合った瞬間に気づいた
人って、自分の話をされている時は、なぜかわかってしまうんですよね…(笑)
ある日、私はフランス人のクラスメイトと一緒に曲を練習する用事があって、その練習の10分前くらいにキッチンに行ったんです。
スウェーデンの寮って、だいたい「個室+共用キッチン」という感じで、シェアハウスのような造りになっていることが多いんです。なので、キッチンだけ自分の部屋に無くて、キッチンが「人と会う場所」みたいになっています。
そのフランス人の友達とも、練習場所をどちらの部屋にするか決めていなくて。
彼女から「キッチンにいるよー」というメッセージが(Messengerで)来たので、練習場所の相談をするためにも、とりあえず行ってみたんです。
それで、キッチンに入った瞬間に、私は気づいてしまいました…
目の前にいるクラスメイト達3人が、私の話(良くない話)をしていたことに…(笑)
おばけとは違う意味で、ゾッとしました…(笑)
(ちなみに、登場人物はアメリカ人、オランダ人、フランス人の3人です。名前を出せないので便宜上、国籍で書きますが、深い意味はありません)
その時は、別に3人の会話が聞こえたわけでは無かったのですが、目線と空気で気づきました。
特に、私の部屋の隣に住むアメリカ人の友達と目が合った瞬間に、何を話していたかも一瞬で私は悟ってしまったんですよね。
「あ、私の練習の音が、うるさいっていう話だ」と。
そのアメリカ人のクラスメイトは、よく自室で昼寝をするらしくて。
昼間(放課後とか)練習する私の音が、おそらくうるさかったんだと思うんですよね。
年齢的にも、私の母くらいの年代の人だったので。部屋でゆっくり休みたかったのだと思います。
さらにそこで、キッチンの凍った空気に追い打ちをかけるように、フランス人の友達(10分後に私が一緒に練習するはずの友達)が私に向かってにこやかに言ったんです。
「アカネ、『私の部屋で』(←強調)練習しようねっ(ニコッ)」って。
この状況をいじってきた…(笑)
っていうか、「キッチンにいるよ」のメッセージを私に送った時点で、こうなることがわかっていただろ…と思いながら(笑)
(3人で私のことを話していたというよりは、アメリカ人の友達の話を、他の2人がただ聞いていただけだと思いますが)
で、このフランス人の友達の言葉でもう、何を話していたかの疑惑が確信へと変わったんですが、そもそもこの状況をこうして茶化せるこの友達のメンタル強すぎる、と思って(笑)
それは素直に感心しました。
逆に、いじられてちょっと救われた気もします。この友達にとってはそこまで気まずくないんだ、と思いました。
学校で練習するようになった
そういうことがあったので、私はそれ以来、学校で練習するようになりました。
悲しみが恐怖を上回りました。
いえ、悲しみというか、申し訳なさと、もっと早く気づいて遠慮するべきだったかな、という恥ずかしさですね。
怖さももちろんありましたが、「この学校のおばけなら、上手く弾ければ踊ってくれるだろうから、踊ってもらえるように頑張ろう」と思って練習していました。ホーンテッドマンションです(笑)
学校で練習するようになった分、以前よりも遅い時間まで練習できるようにはなったし(怖いのは怖いけど)、人に気を遣わなくて良くなりました。
また、アメリカ人の友達も別の部屋に移って(生徒が少なくて部屋が空いていたので)、彼女の両隣の部屋には誰もいない状態になったので、それからはよく昼寝ができるようになったみたいです。
逆に、学校で練習するようになったことで、今度はその彼女から
「あまりアカネの部屋から音が聞こえないのも罪悪感を感じて嫌な気分だから、部屋で練習して欲しい」って言われて。
えー…気持ちはわかるけど、それはさすがに勝手では?って思って、その場は適当に切り抜けました。
キッチンで事件は起きる。バトルも起きる。
留学ってこういう「事件」(と呼んで良いのかわかりませんが)がよく起きると私は思うのですが、事件はたいてい、キッチンで起きるんですよ。
会議室じゃないんです。キッチンです(笑)
人が集まる場所であるだけでなく、食器を洗わない人がいるとか、掃除当番さぼる人がいるとか、パーティーばかり開催されて眠れないとか…そういう理由で勃発するんです。事件やバトルが(笑)
やっぱりどこに行っても人間関係は学ぶことが多いですね。
おもしろいなと思います。
人間関係は、面倒くさいけど、おもしろくもあり、私は、人が怖いけど人が好きでもあります(おばけは怖いです)。
また、音の問題(自分が練習している音が、他の人にとってはうるさいという問題)は中学・高校の吹奏楽部の頃から直面してきましたが、
(進学校だったので、講習の邪魔にならないように、練習時間や場所が制限される時がよくありました)
それは音を出すこちらが気をつけるしかないし、何か解決策があるはずだ、と動くしかないですよね。
今回の私の場合は学校で練習すれば良かっただけですが、練習時間を調整するとか、練習場所を探すとか。
音楽をやる上で、こういうトラブルもストレスになると思うのですが、ぜひそのストレスを乗り越えて、楽しく弾いていたいなと思います。
ということで、キッチンの話でした。