ニッケルハルパは指でキーを操作して音を変えていますが、指を「キーのそばに置いておく」という意識がとても大切だと思っています。
今回はこのことについて書きます。
ご自身に合う範囲で、参考にしていただけたら嬉しいです。
思っている以上に、指がキーから離れがち(楽器の構造上)
「指をキーのそばに置いておく」というのは、そのままの意味ですが、実は弾いている本人が思っている以上に、指ってキーから離れがちなんですね。
ニッケルハルパの場合は、「上から指を乗せる」ような楽器ではなくて、「楽器の下側から指を添わせる」楽器なので、特にそうです。
この写真は、写真のためだけにとった体勢で自撮りで撮ったものなので、実際に弾いている場面ではありませんが、実際に弾いているところを見ると、この写真よりもかなり指が離れてしまうことが多いのではと思います。
指が離れること自体よりも、それによって演奏に無駄な動きが多くなったり、手に力が入ることが問題ですね。
どれくらい意識した方が良いのかは人によって違う
さて、指の話を続ける前に、今回の内容をどれくらい意識した方が良いのかを、楽器の経験段階(習熟度)に分けてお話ししたいと思います。
楽器を始めたての人・楽器に慣れていない人
まず、楽器を始めたての方は、意識しなくて大丈夫です!
楽器を始めたての頃は、他にも考えることがたくさんあると思うので(音を探す、弓の持ち方を探るなど)、指とキーの間隔まで意識しようとするとかなり混乱してしまいます。
なので、この段階では「指をキーのそばに」という考えは、ひとまずわきに置いておいてください。
それよりも、楽器にさわる機会を増やしたり、楽器を楽しく弾くことを大切にしていただけたらと思います。レッスンに申し込むのも、素晴らしいです。偉いです。
楽器に慣れてきた人
次に、ある程度楽器に慣れてきた方ですが、「少しずつ」意識すると良いかと思います。
こちらも、あまり意識しすぎると楽器が嫌になってしまうかもしれないので、あくまでも「少し」で大丈夫です!
自分の余裕がある時に「少し」意識する、思い出した時に「少し」意識する、など。
また、何か悩みを感じた時、たとえば「指の移動で上手くいかない」とか、「音がきれいに出ない」、「左手(キーを操作する手)に力が入ってしまう」などと感じた時などに、「そういえばキーのそばに指を置いておいた方が良いって聞いたな」という風に、解決方法の1つとして使っていただくと良いかなと思います。
あとは、慣れている曲で余裕がある時に少し試してみるとか。
練習方法の1つとして、気が向いた時に取り入れてみる、くらいの気持ちでぜひやってみてください。
「もっと上手くなりたい」と強く思っている人
そして、すでに楽器を弾き込んでいて、「もっと上手くなりたい」と「強く」思っている方。
そういう方は、常に意識してください。
例外はありません。常に、です。
急に段階が飛んで厳しくなりましたが、ある程度弾きこんでいる方はどこかの時点で伸び悩むことがあるんですね。そういう時、少し踏ん張ってあえて自分に厳しくした方が、より成長できて楽しいのではないかと思います。
そもそも、「もっと上手くなりたい」と「強く」思っているような人は、「少し厳しい」くらいがたぶん楽しいと感じると思うのですが、いかがでしょうか?
これは言語学習者の話ですが、「理想の先生はどんな先生か?」を学習者に訊ねたところ、初級コースの学習者は「優しくてモチベーションを上げてくれる先生」と答えたのに対し、上級コースの学習者は「自分の間違いを指摘してくれて、少し難しめの課題を与えてくれる先生」と答えることが多かったそうです。
ご自身の段階に応じて、意識する割合を変えてみてくださいね。
具体的な方法
ここからは具体的な話に入ります。
基本姿勢は、「手をキーに添わせて待機」
これまでずっと「指」と「キー」の間隔の話をしてきましたが、そもそも指の話をするなら「手」への意識が欠かせません。
「指とキーを近い位置に保つ」ということは、「『手』をキーから(できるだけ)離さない」ということです。
つまり、「キーを上げてしまわない範囲で、手をキーに添わせておく」んです。
(これは意識の問題なので、実際には手とキーはそこまで密着していないかもしれませんが)
この時、親指の位置も重要ですね。
手はその状態で「待機」。演奏中ずっと。
これが基本姿勢です。
ここで、手をキーに添わせて待機させるのが「辛い」方、手をキーに添わせると「腕や肩が不自然なポジションになる」と感じる方は、そもそもの楽器のポジション(ストラップの長さ、楽器の傾け具合など)が合っていなかったり、自分の身体(姿勢)が無理な体勢になっているかもしれません。
その場合は、「手をキーに添わせておいても辛くない楽器のポジションや体勢」を探してみてください。
時間がかかることもあるかもしれませんが、探せば必ず見つかります。
指先を使ってキーを上げる、力は入れない、省エネ
さて、その「手の基本姿勢」ができたら、あとはその状態のまま、「指先」を「優しく」使ってキーを上げます。
手にも指にも、力は入れません。無駄な動きはせず、できるだけ省エネ運転です。
指に「勢い」もつけません。
また、ポジション移動の際にも、手の形や親指の感じは大きくは変えず、ただ位置を少し移動させるだけで、かなり広範囲のキーを拾うことができます。実際、キーの移動ってそこまで遠い距離の移動ではないので。
この一連の流れができるようになると、「楽な感覚」というのがわかってくると思います。その感覚が大切です。
急いで移動、早めの移動、移動準備…→「しない」
さらに、音が飛ぶような曲ですが、これも「急いで移動(突発的な動き)」や「早めに移動開始」、「前もって移動の準備」はしません。
(ただし、開放弦を弾いている時や、楽器にまだあまり慣れていない人は、前もっての移動や準備をして全然OKです)
さっきまで上げていたキーにできるだけ長い間指を置いて、あとは移動のことは考えずに、「今この瞬間に弾くキー(音)」のことだけ考えれば、必要な分だけ、自然と手が動くと思います。
(物理的な限界はありますが)
音の移動で上手くいかない場合、この「前もって移動しよう」という意識が強すぎることで、かえって失敗してしまうケースが多いです。
これは意識と身体のチキンレースなので、「やばい、移動しなきゃ」と意識が思った瞬間に負けが確定します。
なので、「やばい」「どうしよう」と思うのではなく、「今この瞬間に出す音1つ1つ」のことを考えてみてください。それで充分です。
(「でも次のフレーズや音のことを考えないと間違えちゃう」という場合は、まずは考えながら練習するところからで全然大丈夫です)
意識するのを忘れがちな状況
最後に、「意識するのを忘れがちな状況」を整理したいと思います。
(特にこういう状況の時に、手や指のことを意識すると良いです)
私が思いつくのは、たとえばこんな時です。
- 「新しい曲を覚えた時」
- 「慣れていない曲を弾く時」
- 「高音部やポジション移動の多い曲を弾く時」
こういった状況の時は、「正しい音を弾くこと」や、「キーの移動」「ボーイング」などに意識が優先されるので、「指をキーのそばに置く」というのは、優先順位が低くなる(=意識するのを忘れがち)かなと思います。
上手くなりたい・常に意識したいという人は、こういう時ほど強く意識してみてください。
(反対に、楽器に慣れていない人は、「こういう状況の時は手がバタバタしてもしょうがない」「これが普通」「今はいいんだ」と大目に見て、開き直ってみてください)
また、私が厄介だと思うのは、実はこれですね。
- 「自分では弾き慣れていると思っている曲」
これは、楽器をある程度弾き込んでいる人の場合ですが。
「今から新しく覚える曲」は、今から意識すれば、意識した通りの弾き方(=指をキーのそばに置いたまま弾く)で覚えていくことができるし、「慣れていない曲」も、弾き慣れていない分、あとから矯正がしやすいです。
一方、「自分では弾き慣れていると思っている曲」ほど、「過去の自分の弾き方が癖になっている」ことが多いんですね。
それが「良い癖」であれば良いのですが、過去の癖って、だいたい未熟なものや悪い癖が多いと思います。今回で言えば、「キーから指を離してバタバタ弾く」などです。
こういう曲は、「弾き方の更新」をしないといけないのですが、これは新しい曲を覚えるよりもずっと面倒で時間がかかるので、努力と忍耐が必要です。
なので、「そこまでしなくていいや」という場合はやらなくて全然大丈夫ですし、「いや、そこまでしたい」という場合だけ、弾き方の更新を頑張ることをおすすめします。
(こういうことを書くと、「じゃあ、やっぱり初心者の段階から指をキーのそばに置いて練習した方が良いじゃないか、さっき『意識しなくて良い』って書いてたのに」と思うかもしれませんが、楽器との付き合い方にもやはり段階があるので、最初は、「とにかく楽しむこと」を優先していただきたいと思っています)
最終的に、「自分が何をどれくらいやりたいのか」、「どういう風に楽器を楽しみたいのか」によって必要なことはすべて変わります。
自分の楽しみ方に応じて、合うやり方を取り入れてみてください。
以上、「指をキーのそばに置く」ことについて書いてみました。
偉そうに書いていますが、私もまだまだです。今回書いていることも全部自分の経験談(現在進行形)です。
ただ、これが意識できるようになると弾き方がかなり変わると思うんですよね。
このブログを読んでくださっている方にも、色々な方がいらっしゃると思うのですが、ご自身の段階に合わせて読んでいただけたら嬉しいです。
そして、レッスンにいらしていただけたら、お手伝いできることが必ずあると思いますので、初めての方はもちろんのこと、楽器にかなり慣れている方も、どなたでもお気軽にお越しください。