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「Lapp Nils 150-årsminne」コンサート紹介・解説②

/ ニッケルハルパ奏者

昨日に続いて、「Lapp Nils 150-årsminne」(ラップ・ニルス150周忌コンサート)の紹介と解説をします。今回で終わりです。

昨日の記事→「Lapp Nils 150-årsminne」コンサート紹介・解説①

「Lapp Nils 150-årsminne」動画後半

このコンサートは、イェムトランド地方Offerdalに住んでいたフィドルの演奏家、Lapp-Nils(ラップ・ニルス1804-1870)が亡くなってから150年ということで、2021年(コロナで1年延期)にOfferdalの教会で開催されたコンサートです。

昨日はOfferdals Spelmanslagの方たちの演奏まで見ました。その後(18:13あたり)から動画が再生するようにしてあります。

内容紹介・解説

18:13~、Kjell-Erik Erikssonの話・演奏「Förlossningen är vunnen」(讃美歌)

Kjell-Erik:

讃美歌の「Förlossningen är vunnen」。

Lapp-Nilsは、晩年になってから信仰を持つようになったと言われています。

そして当時は、音楽が「人間の心に罪を植え付けるもの」だとも考えられていました。皆さんは、そんなことはないとご存知だと思いますが。

そしてこれは謎に包まれた話でもありますが、Lapp-Nilsはフィドルを演奏するのをやめた、と言われています。聞いたことがある方もいらっしゃるでしょうね。

彼はフィドルを地面に埋めた、と言われています。

しかしまた、こういう話も伝わっているのです。

彼はフィドルを埋めた後、Offerdalの家まで帰ろうとしました。すると男の子がやってきて、Lapp-Nilsの演奏を聞きたがりました。

Lapp-Nilsは男の子に言いました。

「私はもうフィドルは弾かないんだ。これは罪を植え付けるものだから」

すると男の子は言いました。

「でも、『Förlossningen är vunnen(讃美歌)』なら良いでしょ?」

Lapp-Nilsは少し考えて、「それなら良いか」と言いました。

そこで埋めたフィドルを掘り返し――おそらくケースごと埋めたのだと思いますが――、そこで「Förlossningen är vunnen」と、Brudlåt(結婚式の曲)を弾き、それが彼の最後の演奏になりました。

演奏:「Förlossningen är vunnen」(讃美歌)

(※エピソードの参考:Jämtland/Härjedalens spelmansförbundetがアップロードしてくれているPDF

21:29~、Katarina & Ingvar Åhlénの演奏「Lappkungens polska från Vallbo」「Lapp-Nils polska i moll från Västbacken och dur från Föllinge」

・1曲目:「Vallbo(ヴァルボー)に伝わるLappkungen(ラップ・クンゲン)伝承のポルスカ」

Lappkungen(kungen(クンゲン)の意味は王様)というのは、Vallboの演奏家Jon Jonsson(ヨン・ヨンソン、1839-1909)のことだそうです。

(※参考:Folkwikiの楽譜「Lappkungens polska」

・2曲目:「Lapp-Nils伝承のポルスカ。Västbacken(ヴェストバッケン)に伝わる短調のものと、Föllinge(フェッリンゲ)に伝わる長調のもの」

こちらは同じポルスカの短調バージョンと長調バージョンです。

(※参考:Folkwikiの楽譜「Polska efter Lapp-Nils, Föllinge」(長調の方)

→1曲目・2曲目を合わせて一緒に演奏しています。まず1曲目を弾いた後に、2曲目の長調バージョン(ピアノのみ)、その後短調バージョン(チェロとピアノ)、そしてまた長調に戻り(ピアノ)、最後に1曲目を再び弾いて終わり、としているかなと思います。

26:10~、Bo Lyckligs Gammeldansorkesterの紹介、演奏「Jularbosnoa」「Go’ pols」「Brödernas polska」

(話の部分は割愛しますが、Lapp-Nilsがダンスの演奏家であったこと、これから演奏するメンバーの紹介、「ぜひ皆さん座りながらダンスを踊ってみてください」、といったことを言っています)

・1曲目:「Jularbosnoa」

「Jularbo」というのは20世紀に大活躍したCalle Jularbo(カッレ・ユーラボー(ユーラルボー)、1893-1966)のこと、「snoa」(スノア)はダンスの種類です。

Calle Jularboは当時のスウェーデン(だけでなく海外でも)で大人気で、今でも曲がよく演奏されているアコーディオン奏者です。伝統音楽というよりは、ポピュラー音楽や大衆音楽の演奏家というイメージがあります。

以前書いたニッケルハルパ奏者のEric Sahlströmも、Calle Jularboに憧れた人の一人です→Eric Sahlströmについて

(※参考:Wikipedia「Calle Jularbo」(スウェーデン語)YouTubeのCalle Jularboに関する5分くらいの動画

・2曲目「Go’ pols」

「Go’ pols」(他にもGo-polsenなど)は、ノルウェーの演奏家Hilmar Alexandersen(1902-1993)の伝えた曲のようです。

・3曲目「Brödernas polska」(兄弟のポルスカ)

イェムトランド地方の人Åke Lindqvistが作った曲だそうです。

(※参考:Folkwikiの楽譜「Brödernas polska」

32:20~、代表の女性の挨拶、Kjell-Erikの曲紹介、最後の皆での演奏(Allspel)「Jämtlands brudmarsch」

(代表の女性(Beret)の挨拶。簡単にまとめます)

Kjell-Erikがおそらく言っていたと思いますが、Lapp-Nilsはダンスの演奏家でした。

私は、彼は「1800年代のAvicii(アヴィーチー※現代の有名な音楽プロデューサー/DJ)」だと思っています。1年以上前に予約しないと枠が埋まってしまうような。Aviciiはもっと先まで予定が埋まっていたかもしれませんが。素晴らしく有名な演奏家でした。

素晴らしい演奏を聞くと踊らずにはいられません。

さて、ポルスカと、2つのバリエーションのバークメス(Bakmes※ダンスの種類)を踊りました。Offerdalでは「バーク・メイス」と言いますが。

(※ここでダンスの相手の紹介ですが、割愛します)

最後に、Lapp-Nilsはこんな素敵な言葉(※横に飾ってある刺繍の言葉)をもらっています。

「Lapp-Nilsの曲は、調和を生み出す。サーミとイェムトランドの人の両方が生きるこのOfferdalの地に」。私も、すべての人がそれぞれのアイデンティティを持って生きられることを願います。

曲紹介:「Jämtlands brudmarsch」(イェムトランド地方の結婚行進曲)

Kjell-Erikによる曲紹介:「演奏家として働いているとダンスでの演奏が多くなりますが、一方でLapp-Nilsと全く同じ仕事ができる瞬間があり、それが結婚式(やお葬式、洗礼)などでの演奏なんです。ここで、誰もがおそらく一度は弾いたことのある『Jämtlands brudmarsch』を皆で弾きたいと思います」

皆で演奏しながらLapp-Nilsの石碑まで歩いて行く。

(おわり)


以上です。

最後少し割愛しながらでしたが、Lapp-Nilsのコンサートの紹介と解説をしました。

色々書いてしまいましたが、コンサートなので、基本的にただぼーっと音楽を聞くだけで全然良いと思います。

もしも興味がある場合は、それぞれの参考のリンクなどから楽譜などチェックしてみてください。

私も知らない曲ばかりで、おもしろかったです。こういうもので一度聞いておくと、次にその曲を聞いた時に曲を覚えやすくなるんですよね。

では、良い一日をお過ごしください。