「Leipzigs krigsmarsch」(ライプツィヒの戦いの行進曲、読み方はライプツィヒス・クリーグス・マルシュ)という曲があります。
これは歌詞がついている歌でもあるのですが、歌の場合は「Skänk en slant åt spelman」という呼び方で呼ばれます。歌の方は歌詞の冒頭部分がそのまま曲名になっています。意味は「奏者に小銭をめぐんでください(=演奏料のチップをください)」、読み方は「フェンク(シェンク)・エン・スラント・オート・シュペールマン」です。
曲名はどちらで呼んでもいいのですが、楽器で演奏する時は前者で、歌の時は後者で呼ぶことが多いかなと思います。厳密な区別はありません。
ウップランド地方で非常によく知られている曲(歌)の一つです。
ちなみに私はこの曲が好きで、個人的によく弾きます。
こちらの音源ですと歌と曲が両方聴けます。
歌詞はこのような感じです↓(「l: :l」はリピート記号の意味)
l: Skänk en slant åt spelman nådigaste herre
Gumman hon(min) är sjuk å(och) åtta barn jag har :l
l: Så varför skulle jag som står på nödens brant
skämmas för att tigga utav er en slant :l
紳士淑女の皆様、どうか奏者にお恵みを。
妻は病気で、私は8人の子どもをかかえております。
この貧困の極みにいる私が、
どうして皆様からお恵みを授かることを恥じることがあるでしょうか。(いや、恥じる必要はない)
(訳:峰村)
スウェーデンの歌は、こんな風に大げさに、ブラックジョーク的な歌詞を明るい曲調で歌うものがとても多いです。陽気に笑い飛ばすのが目的なので、あまり真に受けないでください。
曲の解説
この曲、留学先で習った時には、歴史に関する私の知識不足もあり、あまり先生の解説をよく理解できていませんでした。(スウェーデン語の理解力不足のため)
ですが、Gubbskivan(グッブフィーヴァン/グッブシ―ヴァン)というCD(レコード)の中に解説があったので、そちらを今回訳して引用します。
“Leipzigs krigsmarsch efter Dragonen Roos, 1813
カール14世ヨハンの治世時代、ウップランド連隊はライプツィヒの戦いに参加した。竜騎兵Roosがこの曲を演奏したようで、彼は、当時のクラリネットでこの曲を演奏していたと思われる”
【語彙の説明】(Wikipediaより)
・カール14世ヨハン(1763-1844):スウェーデン=ノルウェー連合王国の国王として1818年から1844年まで在位。ノルウェー国王としての名はカール3世ヨハン。
・ライプツィヒの戦い:1813年10月16日-10月19日:ナポレオン戦争における最大規模の戦闘。ドイツ東部のライプツィヒ(当時のザクセン王国領)で、ナポレオン1世麾下のフランス軍19万と、プロイセン・ロシア帝国・オーストリア帝国・スウェーデンの連合軍36万の間で戦いが行われた。3日間の激戦の末、圧倒的な兵力差の前にフランス軍は敗北した。
・竜騎兵(dragonen):近世ヨーロッパにおける兵科の一つ。一般には火器で武装した騎兵を指すが、その詳しい定義は国や時代により様々である。英語のドラグーン(dragoon)は、ブランダーバスの発射炎が火を噴くドラゴンのように見え、騎兵向けの短銃型に竜の彫刻が施されており「ドラゴン(dragon)」との通称があったため、後にはこれを用いる騎兵がドラグーンと呼ばれるようになった。
とのことです。
戦いの年号(1813)と、解説で書かれているカール14世ヨハンの在位期間(1818-1844)が少し違いますが、あまり気にしない方がいいかもしれません。よくあることです。
また、解説を見ていて思うのですが、おそらく曲が先にあり、後からさきほどの歌詞がついたのだろうなということが、想像されます。(違っていたらすみません)
Gubbskivanの音源はこちらです。音源自体はCDまるごと聴けるようになっていますが、こちらのリンクではこの曲から再生されるようになっています(44:03~)。
解説のスウェーデン語はこちらの動画↑にも載っています。解説にはこの曲はC-dur(Cメジャー)と書いてありますが、G-dur(Gメジャー)です。
曲の由来や背景に関しては、実際どうだったのか(本当にそのいわれ通りの曲なのかなど)がよくわからないことも多いのですが、「なんとなくこのくらいの年代の曲で、こういうことが伝えられているんだな」と知るだけでも、おもしろく感じられることが多いように思います。
Leipzigs krigsmarschの他の音源もありますので、ぜひ聴き比べてみてください。歌のメロディと、弾いている時のメロディが違っていたりもしますし、歌のメロディの合間を縫うような旋律は、皆さん自由に(アドリブ的に)入れているように思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
参照:Gubbskivan(CD)の解説、
Wikipediaカール14世ヨハン(日本語)、
https://ja.wikipedia.org/wiki/カール14世ヨハン_(スウェーデン王)
Wikipediaライプツィヒの戦い(日本語)
https://ja.wikipedia.org/wiki/ライプツィヒの戦い
Wikipedia竜騎兵(日本語)