無印良品さんの店内BGMですが、このBGMは各国の民族音楽が収録されているシリーズになっていて、それぞれ国別に数字で管理され、CDとしても販売されています。
数年前に音楽配信もスタートしました。
スウェーデン編は「BGM8 STOCKHOLM」として収録されています。
(ストックホルムはスウェーデンの首都。基本的にどの国も首都名がつけられているみたいです)
BGM8については、私もブログで何度か紹介しているのですが、先日の記事で「Lasse i Lyby」(ラッセ・イ・リービー)という演奏家の紹介や、「Andreas Dahlgren」(アンドレアス・ダールグレン)という演奏家の紹介がきっかけで、BGM8に収録されている曲を久しぶりに聞きました。
あらためて良いアルバムだなと思ったので、私の視点での曲の解説などをしてみたいと思います。
(ちなみに、私はこういうことを気にしてしまうので最初に書いておくのですが、販売されているCDの付属の解説などは、最近はなるべく引用しないようにしています。1枚でも売上に悪影響が出るといけないので…。CD本体についている解説は、買ってからのお楽しみということで、今回はそれ以外の部分で、私が「勝手に」解説を加えていきます)
実はもう1つCDがある(「快適日常音楽2 STOCKHOLM」)
BGM8の解説の前に、1つトリビア的な話なのですが。
実は無印良品のBGM8とは別に、「ほとんど同じ内容だけど少し違う」CDもう1つが販売されています。
「快適日常音楽2 ストックホルム」というものです。
こちらは、「BGM8未収録曲含む再編集盤」だそうで、全17曲入り、曲順もBGM8の方とは違います。(BGM8の方は全15曲)
私は両方ともCDを持っているのですが、「快適~」の方は曲の解説をかなりしっかり入れてくれていると思いました。曲の日本語名や、歌の歌詞の内容なども(全部の歌ではありませんが)入っているので、曲についてしっかり知りたい方にはおすすめだと思います。
(「快適~」の方は、ネットで調べると「販売終了」と書いてあるのですが、確かレソノサウンドさん(ニッケルハルパ教室をやっている巣鴨のスタジオ)で販売しているのを見た気がします)
また、BGM8の方はスウェーデンの街並みや森・海の様子が優しい色合いの写真でたくさん入っていて、雰囲気的に癒されます。
BGM8の演奏について
さて、BGM8なのですが、スウェーデンの名だたる現代の演奏家たちが演奏しているオムニバスのCDになっています。
演奏曲はスウェーデンの伝統曲や伝統歌ですが、店内BGMに合うようなアレンジになっており、それぞれの演奏家たちご自身のCDアルバムとは、また違う雰囲気の曲なども収録されていたりしますので、ちょっとレアな感じもあります。
色々な楽器や歌が入っています。ニッケルハルパの演奏ももちろんあり、世界で大人気のOlov Johansson(オーロヴ・ヨワンソン)の演奏が入っています。私も大好きな憧れの演奏家です。日本にも演奏で何度もいらしています。
解説
1.Polska efter Gällsbo-Jonas(イェルスボー・ヨーナス伝承のポルスカ)
演奏はOlov Johansson(ニッケルハルパ)、Anders Bromander(ピアノ)。
以前、無印さんのご厚意で、店内などでニッケルハルパの演奏をさせていただいたことが何度かあったのですが、その時にこの曲を弾くと、店員さんが認知してくださっている割合が高かったのが印象的でした。
Olovの演奏と自分の演奏を比べられると自信をなくしてしまう私でしたが(Olovの演奏は本当にいつでもカッコ良くて雲の上の存在なので)、やっぱりこの曲、良いですよね。
Anders Bromander(アンダーシュ・ブロマンデル)はジャズの「Trio Con X」というバンドのメンバーだそうですが(YouTubeだと「Trio X」の名前で音源が出てきます)、
彼のピアノアレンジが、Olovの奏でる強めのメロディと独特に混ざり合ってとても良い感じです。不思議な感じがちょっとありつつ、奥行きもありつつ、そこまで深堀しない、みたいな。5分弱あるのですが、あっという間に感じます。
(この2人ですが、Trio Con XのアルバムにOlov Johanssonが参加しているものがあり(『Myskolyrisk Vals』1995)、また、2人のデュオでも、アルバム(『Sommarlåt』2018)を出しています。デュオのCDの方はYouTubeなどで聞けますが、こちらにはBGM8収録の2人の演奏と同じ曲目がいくつか収録されており、どれも微妙にテイクが違うので、その違いを聞くのもおもしろいです)
で、この曲自体は、Olovの出身地でありニッケルハルパの故郷のウップランド地方の曲…ではなく、ウップランドよりも少し北部のヘルシングランド地方(Hälsingland)の曲になります。
ヘルシングランド地方は有名なフィドル奏者がたくさんいて、伝統音楽がとても盛んな地方の1つです。
Olovと言えば、地元「ウップランド地方」もしくはその北隣の「イェストリークランド地方」の曲までをレパートリーとされている印象なので、ヘルシングランド地方の曲を弾いていること自体が少し特別な感じがします。
この曲を伝えたGällsbo-Jonasですが、”Gällsbo” Jonas Olsson(”イェルスボー”ヨーナス・オールソン、1891-1967)という人のことで、ヘルシングランド地方の中でもAlfta(アルフタ)出身のフィドル奏者です。彼はAlftaの曲や、Galven(ガルヴェン)という所の曲など、地元の古い曲をよく伝えた人物であるとともに、新しく作曲などもしていたそうです。息子もフィドル奏者で、Gällsbo Emil Olsson(イェルスボー・エーミール・オールソン)という人です。(参考:Wikipedia「Gällsbo Jonas Olsson」)
Alftaはこの辺だそうです。GalvenもAlftaのすぐ右上くらいです。
同じ曲が、ヘルシングランド地方の現代の演奏家のアルバムなどにも収録されています→Thuva Härdelinのアルバム「Tidernas väg, songs from Hälsingland」YouTube
2.Er framtid blive lyckelig(皆さんの未来が幸せでありますように)
(曲のタイトルはもっと違う風に訳せると思うのですが、直訳だとこんな感じです)
こちらは「Triakel」(トリアーケル)というトリオの演奏と歌です。
Triakelもすごく有名な方たちで、1995年から活動されていますが、2025年現在もツアーなどが結構入っているようです。というか、今調べて気づきましたが、今年が30周年なのかもしれないですね。
日本にもいらしているので、日本のファンの方々も多いのではないかと思います。BGM8の音楽家の方々は皆さんそうですね。日本でも知られている方が多いです。
Triakelは、Emma Härdelin(エンマ・ヘルデリーン、歌)、Kjell Erik Eriksson(シェル・エリック・エリクソン、フィドル)、Janne Strömstedt(ヤンネ・ストルムステット、足踏みオルガン)の3人によるトリオです。ヘルシングランド地方とイェムトランド地方の曲を中心に演奏・歌っています。
歌のEmma Härdelinは、ヘルシングランド地方の有名な演奏家Thore Härdelin(トーレ・ヘルデリーン、1946-2025)を父に持ち、伝統音楽が周りにあふれる環境で育ったそうです。さきほど、Gällsbo-Jonasの曲でヘルシングランド地方の演奏家Thuva Härdelinの音源のYouTubeリンクを貼りましたが、ThuvaもEmmaの姉妹(姉ですかね?)だと思います。
(父のThoreは、ヘルシングランド地方の現代を代表する演奏家の1人で、よく帽子をかぶって演奏している姿が印象的なのですが、つい先日亡くなったそうです)
フィドルのKejll-Erikは、イェムトランド地方の曲、なかでもOfferdal(オッフェルダール)という地域の曲をよく演奏されていて、イェムトランド地方の代表的な演奏家の1人です。私のブログにも何度か出てきています。
足踏みオルガンのJanneは、私はあまりよく存じていなかったのですが、Triakel自体がもともとKejll-ErikとJanneの2人によって始まり(1994年)、1995年にEmmaが加わって現在のかたちになったそうです。ヘルシングランド地方とイェムトランド地方が3人の出身地域ということなので、Janneもそのあたりの出身なのかなと思います。
Triakelの名前は後からつけられたそうで、イェムトランド地方の言い方で「甘くて黒いラクリス(=サルミアッキ。北欧独特の黒いグミのようなお菓子)」を指すそうです。(Wikipedia「Triakel」)
Triakelのこの曲は、彼らのアルバム『Vintervisor』(冬の歌)にも収録されているそうです。歌についてはあまりよくわからなかったのですが、「私たちはあなた方の幸せを願います。何も不安などが訪れませんように…」といった歌詞が続いています。
今回はここまでです。2曲しか終わらなかったですね。
いつも不思議なのですが、「スウェーデンの伝統音楽」という意味では、自分が普段聞いている曲と全然変わらないはずなのに、「無印良品のCDに入っている」というだけでなぜか「無印感」をすごく感じます。日本人特有の感覚だと思いますが。
無印良品は、スウェーデンでも「Muji」という名前で商業施設などにお店が入っており、私の周りでも人気でした。北欧っぽいシンプルなデザインが良い、とのことでした。
明日も続けて書いていきたいと思います。