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無印良品BGM8に収録されている曲を解説③

/ ニッケルハルパ奏者

昨日・一昨日に続き、無印良品「BGM8 STOCKHOLM」(=スウェーデン編)のCDに収録されている曲を勝手に解説していきます。

無印良品BGM8に収録されている曲を解説①

無印良品BGM8に収録されている曲を解説②

今日は4曲目・5曲目です。

解説

4.Visa från Kulla(クッラに伝わる歌)

 

演奏家

演奏は1曲目と同じ、Olov Johansson(ニッケルハルパ(オクターブハルパ))と、Anders Bromander(ピアノ)です。ちょっと暗めの落ち着いた雰囲気の曲です。

「オクターブハルパ」1オクターブ低い、低音のニッケルハルパ

Olovが使っている楽器ですが、1曲目とは違うものを使っています。「オクターブハルパ」という楽器です。

これはその名の通り、「1オクターブ低い音が出るニッケルハルパ」です。サイズが結構大きくて、確か弓も少し毛が多く、弾いている時も摩擦力(抵抗力)が大きかった気がします。

こちら、留学中の写真ですが、左が普通のニッケルハルパ、右がオクターブハルパです↓

大きいですよね。私の留学先の学校にオクターブハルパがあり、弾く機会が何度かありましたが、当時音を出すのが難しいな~と思ったのを覚えています。

さきほども書いた通り、低音な分、弦も太いし摩擦力が大きいので、弓を持つ時に力が入っていると、すぐに手が疲れてしまうんですね。また、キーの間隔も広いので、普段のニッケルハルパとは手の広げ方も変わります。

Olovは、オクターブハルパをよく演奏されていますが、「やっぱり上手い人が弾くとこんなにすんなり音が鳴るもんなんだな、すごいな」と私はいつも思っています。

低い音域ならではの独特の、深みのある音色です。この曲のこの演奏にとても合っていますね。

曲についてーGustaf Bergströmというフィドル奏者が弾いていた曲

曲についてですが、検索しても情報が出てこなかったので、独自の方法で調べたところ、「ピアノのAnders Bromanderが、ウップランド地方の曲集(『Upländska folkmusik』)の中で見つけたメロディ」だそうです。

この曲集、ネットで公開されていたので、このメロディを探してみました。楽譜も公開されているものなのでリンクを貼っても大丈夫だと思いますが、こちら↓のリンク先の98ページの「24番」みたいです。

・Stefan LindenのHP「Stefans musik」より、『Upländska folkmusik』61~116ページのPDFリンク

曲集の記述だと、「Kulla地区のGustaf Bergström(グスタフ・ベリィストルム)が演奏していた曲」だそうですが、さらに調べてみると、この演奏家は「KullaのNyby(ニービー)という所に住んでいたフィドル奏者」だそうです(『Uppländske spelmän』Lars Erik Larsson)

Kullaというのはだいたいこの辺だそうです↓小さくて見にくいですが、下の方の赤い四角のところです。

ウップランド地方は、北部の演奏家の話を聞くことが圧倒的に多いので、南部の演奏家や曲の話が出てくるのはおもしろいなと思いました。

また、オクターブハルパではなく、高い音の方で、テンポを上げて弾いたら、また違う雰囲気の曲になりそうだなと思います。

曲は「visa」(ヴィーサ)=「歌」ということで紹介されていますが(歌詞は特に記述無し)、3拍子なので、もしかしたらポルスカ(スウェーデンの伝統曲に多い3拍子の曲)っぽくリズムをつけて弾くこともできるのかな?と思っています。

楽譜だけに残っている小さな曲というのは、弾き方が色々と工夫できそうでおもしろく、また、そういう「忘れられている」曲を誰かがとりあげて演奏しているのは良いですね。

5.N’Lars och N’Mas(ラーシュとマース)

演奏・歌

こちらは2曲目と同じTriakel(トリアーケル)の3人の演奏と歌です。楽しい曲ですね。

『Sånger från 63°N』(北緯63度からの歌)というTriakelのアルバムにも収録されていますが、同じ音源を使いまわしているのではなく、テイクが違うみたいです。大きな構成の違いはありませんが、雰囲気が微妙に違います。

どちらも良い感じです。

曲について

この曲は、Lars(ラーシュ)とMas(マース)という2人の男性について起きた出来事についての歌です。

同じモチーフの歌が各地に伝わっていて、それぞれ歌詞の内容や歌のメロディは違うのですが、「LarsとMasの2人が出てくること」というのが一致しています。私もたくさんの歌を知っているわけではなく、この歌とは別のものを1曲知っているだけなのですが、私が知っているバージョンも非常に明るい感じのメロディです。

歌詞の内容も、2人に起きる出来事の内容は違うのですが、だいたい

LarsとMasがどこかへ行く、その途中で何かが起きたり何かに出会う、で、LarsかMasが「こうしよう」と提案して、相手が「それは良いね(=Det var bra)」と言う

といった内容が共通しているかなと思います。

(短い歌詞が何番も続いているのですが、必ず最後の方に「それは良いね=Det var bra(デ・ヴァ・ブラー)」という歌詞が歌われています)

このTriakelのバージョンは、おそらくイェムトランド地方(かヘルシングランド地方)の「方言」で歌われているのかなと思うので、聞き取るのが私には難しいのですが、鳥に出会って撃ち殺して皮をはいで、「まあなんとかなったね」「これは良いね」と言って終わる、という感じですかね。

(Triakelの歌詞自体はネットに載っています)

私が知っている方の歌も、2人が町に行ってお酒を飲んで、飲みすぎて妄想にとりつかれて、最後は地獄にたどり着くけど「あれ、ここ家だっけ?」「そうそう」「これは良いや」と言って終わる、というシュールな終わり方なのですが、あくまでもメロディの方はとびきり明るい歌で、そのギャップがなんとも言えず好きです。

スウェーデンの歌はブラックジョークものが多いので、ママが浮気しているとか、貧乏でお金が無くて生きていけないとか、自分の恋人の顔が醜いとか、うちのサウナが倒れ掛かっているけど隣の家よりはマシだとか、お酒を飲みすぎる歌とか、そういう歌が多く、真面目に歌うと社会派ソングになってしまいますが、あくまでも冗談として明るく歌われています。


という感じで、今回は4曲目と5曲目を解説してみました。

このCD、全部で15曲あるので、いつになったら終わるんだろうという感じもしますが(笑)、気長にやっていきたいと思います。聞き慣れているようで、意外とこの曲のこと知らないぞ、という曲が結構あるかもしれないと思いました。