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「Ingen som jag」(演奏家From-Olleの劇)解説⑤

/ ニッケルハルパ奏者

19世紀の演奏家From-Olle(フロム・オッレ)の人生を描いた劇「Ingen som jag」の解説⑤です。

今までの解説はこちら↓

「Ingen som jag」(演奏家From-Olleの劇)解説①

「Ingen som jag」(演奏家From-Olleの劇)解説②

「Ingen som jag」(演奏家From-Olleの劇)解説③

「Ingen som jag」(演奏家From-Olleの劇)解説④

前回までの内容

前回までは、From-Olleの誕生~青年までの成長、彼のフィドルの演奏が素晴らしいこと、ネッケンに教わったという噂について、そしてFrom-Olleが演奏家として呼ばれた結婚式の様子が描かれていました。

結婚式の前後では色々ハプニングもありますが、From-Olleは素晴らしい演奏を披露します。また、From-Olleが女性と恋に落ちる場面もあります。

夜には、結婚式に呼ばれた若者たちが眠りにつきますが、急激な寒波によるトラブルがあり、ベッドを抜け出して、対処していました。

今回は、そんな結婚式の夜の続き(結婚式の一日目の夜の終わり)の場面からです。

解説

※続き(15:33)から再生するようになっています。

トラブルの解決後、現代の演奏家の語り

演奏家:「Olleの演奏では弓が肝心でした。それはボーイングの速さかもしれないし、生み出す響きそれ自体に秘訣があったのかもしれません。こういうことは、人々が思考を巡らせる価値のあるものでした。

『その夜、Olleはパンを救った』(※前回の内容のトラブルを解決したことを指す)と言われています。

若者たちはまた寝床へ戻り、ペアで眠りにつきました。慣習の通り、服は着たままです。そして結婚式はまるまる一週間続きました」

(※「パンを救った」の部分は、前回の内容のことを指していると思います。今回記事を書いていて思ったのですが、前回のトラブルは「ライ麦(råg)」の管理についてのトラブルかもしれません)

結婚式が続く。その後、時間の経過を表す場面(16:04~)

・歌う人たち、最後に乾杯

(※ここで歌っているのは、お酒を飲む時の歌です。「グラスを空けろ」「さあ飲んで」と歌いながらグラスを手に持つ動作をし、最後に「Skål(スコール=乾杯)!」と言っています)

・登場人物たちと、語り手の演奏家との間での、ちょっとしたやりとり

若者たちが、語り手の現代の演奏家に対して、「次は何を話すの?」「あれを話してよ」と言い、演奏家が「それはこういう場で話すことじゃないよ」と言う。

すると、若者が「じゃあ森に行く途中で起きた出来事について話して」と言った途端、いきなり熊が登場。

そして皆で踊る場面。

(※ここはちょっと演劇的な展開というか、From-Olleの話の本筋とは関わらない範囲で、物語の時間軸を進める場面だと思います。語り手であるはずの現代の演奏家と、作品内の登場人物たちが話をしているのも、メタ的な展開です)

場面は変わり、From-Olleの結婚(18:40~)

・From-Olleの演奏を望む村の人々と、彼の結婚の噂

村の女性:「来て!たくさんの演奏家たちがあっちで演奏している!」

村の人々:「でもFrom-Olleの演奏じゃないでしょ」

村の男性:「From-Olleといえば、結婚するらしいよ」

サーミの女性:「誰と?」

村の男性:「もちろんKarin(カーリン)と。彼女は妊娠しているよ」

村の女性:「Karinが妊娠しているの?」

女性(おそらくサーミの女性):「あら、一日中フィドルばかり弾いているあのFrom-Olleと結婚?どうなることやら」

・From-OlleとKarin、結婚を嬉しそうに語る

From-Olle:「そう、Karinは妊娠している」

Karin:「Olleと私は婚約した。ここの家(畑仕事など)を継ぐつもり」

From-Olle:「父と祖父が苦しんだ戦争ももう終わった。苦しみの時代は終わったんだ。これからは新しい時代が始まる」

→KarinとFrom-Olleは抱き合おうとするが、「演奏してくれ!」という村の人々の声に邪魔され、Olleは演奏する(19:40~)。Karinはその場を去る。

・From-Olleの演奏に踊る人々。それを見つめる現代の演奏家

(※「Olleは演奏をし、Karinはその場を去る」というのが、そのまま今後の展開を示唆しています)

KarinとFrom-Olleのすれ違い(21:05~)

・From-Olleがフィドルケースを閉じると、場面が変わり、時が経過している。暗い部屋。

Karin:「また今夜も演奏?ライ麦も、じゃがいも(の種芋)も、もうとっくに植えていなくてはいけないのに」

畑仕事がまだ残っているというのに演奏に行くというFrom-Olleに対し、嘆くKarin。

「後でやるよ」「わかっている」「でもフィドルは今弾かなくちゃいけないから」と答えるFrom-Olle。

突然、From-OlleはKarinがフィドルを移動させたことに気づき、腹を立てる。

Olle:「あそこに置いたはずなのに、なんでこんなところにあるんだ」

Karin:「そこのフックを使う必要があったから、ちょっと移動させたの」

Olle:「フィドルはそこの壁にかけてないといけないんだ」

Karin:「いつもフィドルばかり」

Olle:「そうだよ。フィドル無しでどうやって生きていくことができるだろうか…」

Karin:「…ただ移動させただけじゃない…」

Olle:「フィドルは私の手だ。これがなければどうなってしまうことか。それは誰もわからないだろう」

Karin:「私にはわかる」(※この続きが何を言っているのか把握できなかったのですが、「静けさ」や「孤独」について話しています)

From-Olle:「でも、じゃあ、『曲』は?(フィドルなしで)どうやって曲を理解すればいいんだ!」

(Olleはドアを閉めて出ていく)

(※From-Olleの結婚生活については、事実として情報があまり残っていないと思うので、脚色している部分も多いかもしれません。実際には畑仕事もし、家族思いの人だった可能性もあります)

現代の演奏家の語り

演奏家:「ええ、どうやって曲を理解すればいいのでしょうね。

演奏家というのは、いつも『曲が最優先される』ものなのでしょうか。他のすべてのことは後回し。

いや、本物のヘルシングランドの演奏家なら、じゃがいもを適した時期に植えつけるようにするでしょう。ライ麦も同様に。働き者であることを見せたでしょう。そしてそのうえで、演奏をしていました。素晴らしい演奏家ならば」

春の訪れを喜ぶ人々(23:05~)

・春の訪れを喜ぶ人々

サーミの女性:「クローバーや花が咲いているのを見た!」

Karin:「もう?」

(※以降は細かい部分は割愛しますが、春の訪れを喜んでいます)

・大鎌で草刈りをする人々の様子

(※フィドルを持っている若者やお酒を飲んでいる男性は、「大鎌を研ぐんだ!」などと言いながら、自分たちは働かないで見ています)

・From-Olle、春の景色を詩的な言葉で語る(「太陽が輝き、天と地の香りが漂い、命や緑が芽吹き、人生は続く」)。引き続き、働く人々。

(※途中に出てくる瓶はお酒の瓶だと思います。書いてある名前はFrom-Olleの本名。村の若者たちが彼のお酒を勝手に飲んでいるらしい(?)会話がされています)

上官との会話の回想、From-Olleの孤独(24:55~)

・From-Olleは、子どもの頃に父の上官と交わした会話を回想する。

(上官は天使の姿でモーツァルトを引き連れて登場)

→上官が「モーツァルト」という素晴らしい音楽家について話していたことを思い出すFrom-Olleだが、「自分のポルスカは1曲もそこには到底たどりつけていない」と考える。

From-Olle:「彼(モーツァルト)に会ってみたかった」

(突然、音楽が消える)

From-Olle:「人々は、私がどうやってこれらポルスカを演奏しているのか、と訊ねる。

なんて答えるべきなんだろう。

なぜ彼らはそんなことを聞くんだろう。まるで、それが『説明できること』みたいに。

もしも私が説明できるなら、きっと私は説明したくなくなるだろう。

そして、もしも私が説明したい時には…誰も理解しないのだ」

(青ざめるFrom-Olle、続く音楽)

視力を失った演奏家Lif-Ante(From-Olleの弟子/教え子)(26:18~)

・From-Olleの弟子/教え子として知られる盲目の演奏家(Lif-Ante)の語り

演奏家(Lif-Ante):「私の目がまた見えるようになればと、母は私をストックホルムまで連れて行った。行きの道のりだけでも2週間、そして帰ってくるのにも3週間かかったけれど、ずっとフィドルを弾くことだけを考えていた。

村に近づいて来た時、From-Olle、あなたのポルスカや結婚行進曲が聞こえて元気になった。母にも『あの行進曲を聞いて!』と言ったよ。母も耳を傾けていた。

これからさらに新しい曲が聞きたいし、新しい曲を教えて欲しい。

あなたが奏でる音楽のすべてを教わりたい。あなた以上にフィドルを教わるべき存在は他にいないということを、私は知っているから」

(※From-Olleの弟子についてはこちらの最後の方にも少し書いています→From-Olle(フロム・オッレ)について

都市部からの人の流入・新しい音楽が村に入ってくる。新しい時代の始まり、古い時代の終わり(27:18~)

・(※ここも詳しくは割愛しますが)都市部から新たに人々がやってきて、新しい音楽が入ってくる。「新しい時代の始まりだ!」

村の人々は「ここは私たちの土地だ」と抵抗するが、昔からのやり方は駆逐されていく。

・フィドル音楽もまた同様に廃れ、アコーディオンがそれにとって代わる。

・From-Olleを心配そうに見つめるKarin。演奏の機会すらも奪われたFrom-Olleは混乱し、絶望する。(~30:52)


今回はここまでです。

半ば無理やり2番目の動画の最後までいってしまいました。

今回の内容は、お芝居用に脚色されている部分も多いかと思いますので、実際にFrom-Olleの人生がこんな感じだったかどうかはわかりません。

盛りだくさんの内容だったので、詰め込んでしまって申し訳ないのですが、次回とその次の回くらいで、最後まで解説ができたら良いなと思います。