今回も、スウェーデンの伝統音楽のギター奏者Roger Tallroth(ローゲル・タルロート)のインタビュー動画の内容紹介(要約・訳)をしていきますね。
今回の内容は、「クリエイティビティを取り戻すためには何をする?」「音楽人生を振り返って(8歳の自分が今もいる)」です。
インタビュー動画
昨日は~17:10までだったので、その続きからです。
クリエイティビティを取り戻すためには何をする?
David:インスピレーションが枯渇していると感じる時、クリエイティビティを取り戻すためにどんなことをしている?
Roger:たとえば今(※2020年のコロナ禍)は、コンサートが全く行われていなくて活動自体がとても少なくなってしまっているけど、そういう時の私の戦略としては、「何かやる」と決めてしまうこと。私の場合で言えば、楽器を弾いて、作曲やアレンジをする、と決めてしまうことだね。
そういう方法によって、自分のフローを稼働させることができると思う。
David:自分の仕事として行う、何かやる、ということだね。
Roger:その通り。日常的に、何かやることを見つけるんだ。私は今までに、これからリリースする予定のCDの準備(演奏以外の作業)を家でしたりしてきたから、そういうのは家でやることができる仕事だけど、(コロナ禍の今)現在進行形でそういうプロジェクトを持っている人もあまり多くないだろうね。周りの人を見ていてもあまりいないようだし。
David:そうだね。
Roger:そういう場合は、自分で、もしくは他の人と一緒に、音楽をやることを計画して、テクニックを保持して(磨いて)いくことができると思う。
David:「インスピレーションが来るのをただ待つ」という人もいるけど――
Roger:(首を振りながら)いるね。でも、ね。
David:――そう、一方で「常に何かできることがあるはずだ」と戦略的に考えている人もいる。楽器と時間さえあれば何かを生み出すことができる、と。なんなら楽器が無くてもアレンジや作曲ができるかもしれない。
さっきたまたま、1年前のFacebookの自分の投稿を見つけて思い出したんだけど、ジムで走っていたら、急にジャズやブルースの、対位法とか対の旋律みたいなアレンジが思い浮かんできたことがあったんだ。走りながら、「これはどうやってやったら良いかな」と考えていたんだね。
自分で自分に課せば、インスピレーションを得ることはできる。「ギグ(演奏)が無いから練習するモチベーションが湧かないなあ」と言う人がいるけれど、いやいや。モチベーションは自主的に、「自分で自分をそこまで持っていく」ことだ。
Roger:その通り。そういうことだよね。座って始めてしまえば、始まるんだ。
同時に、行動し始めることで「ああ、自分はこれ(行動すること)を求めていたんだ」と気づく。行動していなかった期間に、求めていたものはこれ(行動すること)だったんだ、と。「ああ、そうか、こんなに簡単なことだったんだ」と。
David:私もそう思う。
Roger:また、これは私自身の性格なんだけど、「さて、今から曲を作るぞ」と決めてしまうわけ。で、それはたとえば「ショッティスを作ろう」とか「ポルスカを作ろう」という時もあるんだけど、一方で「そういう構成を考えずに作ろう(構成に当てはまらない曲を作ろう)」という時もある。
それでできた曲の1つが「Tania」(タニア※最後に音源を載せています)で、あの時は「それぞれの響きが良いな」とか、そういう音を集めていって曲にしたんだけど、今でも曲が何拍子なのかもわかっていない。そういうのってあるよね?あとで少し整えたりはしたけど。
David:ランダムなインスピレーションが必要な時もあるからね。「あ、あのコードが良いな」「じゃあそれを繋げるためにあと1つか2つ別のコードを取り入れようかな」みたいに。
今のお話の通り、(インスピレーションが枯渇した時の方法として)あなたは長年の経験から1つの方法を持っているんだね。こういう経験(スランプ、クリエイティビティの喪失)は誰でも経験があることだから、ぜひ聞いてみたいと思ったんだ。しかも今は(コロナで)皆さん活動の休止を余儀なくされている状態だから。カレンダー上では、ある意味プレッシャーからは解放されていると言えるかもしれないけど。
Roger:もちろん(コロナ禍を)ポジティブに受け止めることも良いことだけどね。たとえば…(周りを見渡して)自宅を整える、とか(笑)緑の植物を育てる、とか、猫や犬を飼い始める、とかね。
でも私は家に機材もある、楽器もある、じゃあなぜやらない?と思うんだ。(何か音楽的な活動をすることが)自分にとってもセラピーのようになるとも思うしね。
音楽人生を振り返って(8歳の自分が今もいる)
David:あなたの音楽人生を振り返った時に、それぞれの期間に何か明確な区切りは見つけられたりする?たとえば「この10年間はこれに集中していたな」とか。
Roger:分野とかジャンルとか、あまり明確な区切りをそういう風に意識してきたことは無くて、常に自分との対話だった。
もちろん、今までに聞いてきた音楽からインスピレーションは受けてきたけど、私はそれらの集合体では無いから。(=それらの音楽を足せば自分になる、というわけではない)
David:私たち皆そうだね。
Roger:たとえばビートルズとか、他にもちょっと(自分の音楽遍歴を)たどってみようか、クイーンも一時期とてもよく聞いたし、彼らのハーモニーの移り変わりとかボイシング(※音楽用語)とか、そういうものにとても魅了されてきた。
だからそういう影響は確かにあるんだけど、もしも何か「特別な期間の区切り」があったかどうかを答えるなら、私は自分との対話として、「何かのメロディを聞いた時に自分の中に生まれるもの」について考えることを、覚えている範囲で最初の頃からやってきた。
私はいまだに、自分の中にいくつかの層(異なる時代の自分)を持っていて、8歳の頃の遊び心たっぷりの自分を呼び出すんだ。今の自分が持っている楽器を使って。
David:それができるのが素晴らしいよね。もしかしたら誰にでもできることなのかもしれないけど、(小さい頃から今の自分までの間に)色々なことが起きてしまうこともあって、たとえば音楽教育を受けたりすることで、小さい頃の「好奇心たっぷりの自分」を見失ってしまうこともあるから。
Roger:何か(新しいことや違うこと、違う方法を)探している時や、自作のメロディをいじっている時は、いつもそんな風(小さい頃の自分を呼び出す)にするんだ。異なるボイシングをしたり、カポ(※ギターの道具)を違う位置に取り付けてみたりして、「このメロディが一番喜ぶ(落ち着く、心地よくなる)のはどこだろう?」と。どれがベストな方法で、私は何を強調したいんだろう?と。
それをすることが、自分自身の発見の旅でもあるんだ。まるでそれが他の誰かみたいに(=他の誰かを知るかのように、自分を新たに知る)。すべての可能性がそこにある。私はそれを今もまだずっと感じていて、良い音楽ができるたびに毎回同じように嬉しくなるんだ。また、私はもう35年間、40年間か、(ミュージシャンを)やっているけど、ずっとそういう年齢層の自分(異なる時代の自分、小さい頃の自分)を持っていて、「なぜ音楽を始めたのか」を思い出すんだ。
David:素晴らしい。
Roger:また、それのおかげで(音楽を)続けてこれたと思う。もちろん(音楽を続けてこれた要素として)他の要素も色々あるけどね、たとえば新しい場所へ行けるとか…
David:カッコいい人たち、自分が影響を受けた人たちに会えるとかね。
Roger:今まで影響を受けてきて、それまでに出会ったことのないような人たちにね。素晴らしい出会いだ。そういうものにも非常に感謝している。
そして、音楽っていうのを最初はあまりこう、思っていなかったというか…(※ここは言い淀んでいるのをそのまま載せています)
私の家族には音楽を演奏する人はいなくて(※親戚にはいるけど親や兄弟はやらない)、隣人が楽器をたくさん持っていて、農場(納屋など)にそれらを置いていたから、子どもの頃(若い頃)はそれで実験することができたんだ。それ(その時の経験や感情)が今の自分の核になっている。
David:「これは実験だ」という気持ちのことだね。
Roger:そう。
David:私が素晴らしいと思うのは、あなたがたくさんの音楽教育を受けてもなおそこに立ち戻れるということなんだ。
(~26:20辺り)
Davidの発言の途中ですが、今回はここまでにしたいと思います。
今回の内容もとてもおもしろかったですね。何かクリエイティブな活動(仕事でも趣味でも)をされている方には特に、ささる内容なのではないかと思います。
途中に出てきた「Tania」(タニア)はこちらの曲です。演奏はヴェーセンの3人で、こちらはCDの音源↓
演奏動画がこちらですね↓
ヴェーセンのすごい所は、実際の演奏動画(スマホ等で撮影された動画)の演奏クオリティが、CDの音源と並べて聞いても「良い意味で全く変わらない」ことだと思います。
私は週末になるとブログの進みが早くなり、月曜日になるとブログが短くなるというわかりやすい傾向があるのですが、この要約(訳)も今回は結構進んで嬉しいです。進められる時に進めていきたいと思います。
ではまた明日。