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Roger Tallrothのインタビュー動画紹介(要約)⑤

/ ニッケルハルパ奏者

今回も、スウェーデンの伝統音楽のギター奏者Roger Tallroth(ローゲル・タルロート)のインタビュー動画の内容紹介(要約・訳)をしていきます。

昨日までの記事(①~④)のリンク→

今回の内容は、「直感的に演奏する」「中心にあるのは音楽とsamspel」です。

インタビュー動画

前回は~26:20あたりまでだったので、その辺からやっていきます。

直感的に演奏する

David:私が素晴らしいと思うのは、あなたがたくさんの音楽教育を受けても(たくさんの知識を身につけても)なお、そこ(8歳の好奇心たっぷりの自分)に立ち戻れるということなんだ。たとえば知識を持っていたら、(実験することなく)「ここは無難にこのコードにしよう」とか、知識を前提に当てはめてしまうことがある。

もちろんあなたも、「このコードはきっと上手くいかないだろう」というのを経験から予感して、無意識に避けたりとか、そういうことはしているだろうとは思うけど。

Roger:その辺は直感的な方法になるね。私は時ともに色々と実験していく中で、自分のギターを特殊なチューニング方法にすることになり、そのチューニングにとらわれている…いや、とらわれているというのは違うな。それを「良いと思っている」んだ。

そのチューニングでたくさんのことをやってきたから、もう自動的に、筋肉の記憶として「直感的なひらめき」があるんだ。(弾く時は)考えていない。

もちろん、後から響きをとらえ直したり、必要に応じて理想的な形にしたりというのはあるけれど、演奏するのは「歌う」のとおそらく同じで、その最中に「筋肉をどう動かすか」というのはあまり考えないよね。音程を合わせるとかはあるけど、歌っている最中に筋肉の動きそれ自体を認識することは無い。

私にとってはそれがギターで起きていて、学生たちにもそういう風に教えている。「自由な流れ(フロー)にさえ乗れれば、メロディを初めて聞いた時点でも、それまでの経験や知識、様々なジャンルのアーキタイプ(パターン)を使って演奏することができるよ、と。

そして、それをたとえば10回、毎回全然違う風にただ弾いてみるんだ。(※ここ音声が途切れていてよく聞こえないのですが)

これが私にとって楽しいことであり…「そうだ」と思うんだ。「そうだ、こういう理想的な対話こそが自分をあつくさせるんだ」と。

David:あなたは自分を常に楽しませる方法をよく知っているんだね。

Roger:そう。たとえば私が歌い手と一緒に演奏する場合なんかも、まさにそう(=どう弾くかを考えずに流れに乗る)で、私は自分のギター演奏だけに集中したりはしない。

そうすることで、リアルタイムのその瞬間を感じる余裕ができるし、他の人もそれに気づくと思う。音楽が上手くいっている時、歌を歌っている人もまた「歌いやすい、気分がとても良いな」と思うし、聞いている人もそれに気づくだろう。

中心にあるのは音楽とsamspel(一緒に弾くこと)

David:「あの人のギターが素晴らしい」というよりも「なんて素敵な音楽だ」と思う、ということだよね。いや、もちろん前者の感想(あの人のギターが素晴らしい)もあるだろうけど、前面に出てきて欲しいのは「音楽」がどうであるか、ということで。

Roger:私はギターのテクニックを魅せつけようというタイプの人ではなく、ただただ「音楽」だけが中心にあるんだ。

私たち(=ヴェーセン)のファンの多くが、よく訊ねてくるんだ。「どうしてそんな、質の悪いシガーボックスギターのようなギター(※)を10年も弾いているのか?」と。

(※この部分、自信が無いのですが「trashy cigar guitar」と言っているのかなと思ってこう書きました。また、訳には入れませんでしたが、スラングも言っているので、「クソみたいな(楽器)」というニュアンスもあるかもしれません。「Rogerほどのミュージシャンなのに、なぜ高級な楽器を使わないのか?」という意味の質問なのかな?と解釈しています。実際のRogerの楽器について、私は全く存じ上げていませんが、高級品ではなく普及品のギターということなのかなと推測しています)

でも、私にとって重要なのはそこではないんだ。私にとっては、これ(=自分のやり方)は彼らがギターを壊したり闘ったり(争ったり)するのを、やめさせるための戦略なんだ。

だから、私はイーベイ(eBay。アメリカの通販サイト)で150ドルで(ギターを)買って、それらを○○に並べておくんだ。それらが簡単に壊れないように。(※)

David:なるほど。

Roger:だからそういう話題(楽器の良し悪しの話題?)になるたびに、くだらないという気持ちになる。だって私はそういうことに対して全然詳しくないからね。

(※この辺、ギターの背景知識が無さすぎて話の想像がつかず、聞き取れない部分やわからない部分があってすみません。ここは今後の課題にします)

David:あなたはあなたに合う方法を知っている、ということだよね。それが大事だと思う。教える立場になると、自分の視点を説明できるようにならなければいけなくなるけど、でも皆さんは「あなたの方法」が知りたいのだから、あなたのやり方を説明すれば良い。

Roger:うん、ただし、「教える」という状況だと、私の使う言葉もまた変わってくるんだ。教える時には、相手に合わせて、音楽用語を使う時もある。そして、そういう用語や言語を使って説明しようとする時、そこにはリアルタイムのフロー(流れ)は無くて、後から分析した説明になるから…。

David:そうだね。「説明」であって、「創作」ではない。その2つは全然別物だ。

Roger:そう、全然別物。そういうことも、たくさん教える機会があったからこそ学んだことだ。今は私はそんなに教えてはいないんだけど、(コロナ禍でコンサートが無いので)もしかしたら今やるべきなのかもしれないね。

まあとにかく、それ以外で言えば私が主に行うのはアンサンブルでの演奏や、誰かと一緒に弾くこと(samspel)であり、それらが自分にとってはとても有意義なことだと感じているよ。私の演奏の焦点はそこにあるから。

David:ただ弾くだけでじゃなくて、「(相手と)一緒に弾く」(samspel)ということだよね。これ(=誰かと一緒に弾く時の感覚)もまた、もしかしたら教えるが難しい項目かもしれないね。

Roger:そうだね。ただ、私は「バンドのお医者さん」のようなことをやることがあって、これはバンドが演奏しているところへ行って、「何が起きているか」を分析して状況を伝えるんだ。ちょっとセラピストに近い感じなんだけど。

これはやるのに躊躇するバンドも結構多くて、何か負けた感じ(失う感じ)がするから嫌なんだと思うけど、本人達が「客観的な視点から(自分のバンドを)見られて良い」ということに気づくので、すごく感謝されるよ。

私は彼らのクリエイティブなプロセスにはあまり口出しはしなくて、「その素材を活かすためにもっとテクニック的にこうした方が良い」とか「どういう風に協力し合ったり一緒に弾く(samspel)か」とか「何を考えるのが大事か」といった話をするから。

David:…さて、ここまでで結構(インタビューが)長くなってしまった(※もしくは「思ったよりも話題が広がった」)。まあどれくらいを長いと感じるかは聞いている人によるとは思うのだけど…

Roger:今の「Samspel」(一緒に弾くこと)の話題で言えば、人に興味を持つことや、とてもたくさんの人と会うということもまたそう(samspelに類すること)だし、こういう対話(インタビュー)だけでも充分samspelの一種だと思う。

David:もちろんそうだね。こういうインタビューは質のことを考えないといけないし、視聴者にとっておもしろいものになるかを考えなくちゃいけないから、(同じ相手へのインタビューをシリーズで)10回やるとかは難しいかもしれないけれど、一方で、1つの事柄に掘り下げるというインタビューを後から行うこともできるからね。

(~33:52)


今回はここまでにします。最後の方(インタビューの話)はちょっと話題がそれているので、若干適当になってしまったかもしれませんが、こんな感じでしょうかね。

この辺は結構抽象的な話なので、自分1人で見ている時はあまり話題についていけていなかった気がします。こうして記事にしてみて少し頭が整理されたような感じがしておもしろいです。

(でも言いたいことをまだ完全には理解しきれていませんが)

「教える時と、実際にやっている時とで、起きていることは全然別のこと」というのは、私も自分が教わる立場である時に「本当にそうだな」と思ってきました。

先生たちが教えてくれることは、有意義なんだけど、実際にやっていることを後から分析しているに過ぎないので、「おそらく『本人にそれが起きている時』と、『本人が後から分析した内容(人に伝えるために分析した説明)』とで、順番や伝え方に誤差が生じているのだろうな」といつも思ってきたんです。

だから、教わったことを「全部は鵜呑みにしないようにしよう」と思っています。

「これは、先生たち(ミュージシャンたち)がやっていることを理解するためには役には立つけど、自分が弾く時にそれをそのままの順番で再現しようとしなくて良い、後から『自分もそうなっているかも』くらいの認識になれればそれで良い」と。

では、また明日。