伝統曲のテンポ感やリズムって、聞いている時は良いのですが、いざ自分が演奏する時にはなかなかとらえるのが難しいものだなと思います。
今回はこのことについて書いてみたいと思います。
曲のテンポをつかむのって難しい―走ってしまう
CDを作るために自分の録音を聞き返していて、ずっと1曲1曲を個別で何度も聞いていたのですが、この前やっと全曲通して聞いてみたんですね。
全部通して聞くと時間がかかってしまうので、今まであまりやってこなかったのですが…
通して聞いてみたら「うわー、全体的に走ってる~」と思ってびっくりしました。
音楽で「走る」と言うと、「想定していたテンポよりも実際の演奏が先走っている・焦って演奏している・ちょっとずつ早くなっている」ことを指します。
ただ単にテンポが速いだけなら良いのですが、「走っている」と感じる時って、小節の終わりが微妙に毎回ちょっとずつ短かったりして、来て欲しいタイミングよりも音が出るのが微妙に早いことが多いかなと思います。
(逆に、遅くなっていると感じる時は、来て欲しいタイミングよりも音が遅れてしまいます)
それぞれの曲を、1曲ずつ単体で聞いていた時はあまり違和感が無かったのですが…そういう曲を何曲も続けて聞くと、さすがに違和感を感じて気づきました。
(私はもともと、わりと「ゆっくりと弾くタイプ」だと自分で思っていたのですが、そう思いすぎて「速く弾かなきゃ」と焦ってしまったのかもしれません。半年前の録音と聞き比べると、テンポがかなり速まっているので、自分では変わっていないつもりが、「速く弾きたがる人」になってしまっていたかも)
走ること自体がすごく悪いわけではない(と思う)
とはいえ、私は走ってしまうこと自体がすごく悪いわけではないと思っています。
できれば常に安定したテンポで弾けると良いのですが、人間なのでなかなか「常に正確」というわけにもいかないと思うんですね。
演奏中は、テンポ以外にも気を配ることがあるので(音質など)。
なので、速い曲とか、勢いのある曲とか、曲によって多少走ってしまうのは仕方ないし、むしろ走ってしまうくらいの方が勢いがあったり、音質がスピードに乗って良く鳴っていたりすると思うんです。
何曲も続くと疲れてしまう→落ち着ける曲で落ち着くこと
私が今回問題だと思ったのは、「走る曲が何曲も続くこと」でした。
たまにそういう曲がチラホラ差し込まれているだけだと大丈夫なのですが、「息をつけないまま、ずっと何曲もそういう曲が続く」と、ちょっと聞いている方としては疲れるな、と思ったわけです。
なので、「落ち着ける曲でしっかり落ち着こう」と思いました。
上手い人なら、きっと走ってしまうような速い曲の最中も常に落ち着きをもって演奏していたりとか、曲の中で落ち着けるポイントみたいなものを適宜持っていたりすると思うのですが、それってかなり高度なテクニックだと思うので、「やろうとしたらあと3年かかっちゃうよ」みたいなことになりかねません。
それが難しいなら、せめて、「落ち着ける曲」でしっかり落ち着くようにしよう、と。
走る曲はいくつかはあっても良いから、落ち着ける曲だけ落ち着こう、と思いました。
テンポを気にしすぎると、勢いがなくなってしまうこともある
また、「走るのをやめよう」と思いすぎると、今度は逆に曲や音の勢いがなくなってしまって、もったりした演奏になってしまうことも多いんですね。
走るのも、もったりするのも、どちらも一長一短なわけですが、私は、速めの曲や勢いのある曲は、もったりしてしまうくらいなら多少走っても良いし、反対にゆったりした曲は、多少もったりしていても良いのではないかな、と思っています。
テンポそのものよりも、大事なこと(優先順位が高いこと)は、自分の中での「その曲らしさ」(勢いのある曲なのか、落ち着いた曲なのか、はきはきした曲なのか、揺れる曲なのか、正確にリズムを刻む曲なのか、など)なのかな、と。
走るのをやめようとか、テンポを気にしすぎるのもあまり良くないので、その曲の方針だけ意識して、あとは自然に弾くことも大事だなと思うんですね。
「感じているテンポは合っているけど、リズムがつかめていない」ということはしょっちゅう
伝統曲だと特にそうだと思うのですが、「テンポは合っているけど、リズムがつかめていない」ということがしょっちゅう起きます。
これは、誰にでも起きることというか、特に外国の伝統音楽をやっている人なら誰もがぶつかる壁なのではないかと私は思っています。
しかも、この壁って一度乗り越えればOKというものではなく、曲ごとに乗り越えなくちゃいけなかったりして。
なので、リズムのことで悩んでいる方がもしいらっしゃれば、それはその人に問題があるというよりは、「もともと誰でも悩むことだ」と気楽に考えてもらいたいですし、反対に、「真剣にやりたい、この壁を乗り越えたい」と言う方は、それぞれの曲のリズムの捉え方を色々な観点から試行錯誤してみると、演奏がとても良くなったりします。
リズムの捉え方というのは、おそらく楽器の「音の出し方」とも関連してくるので、それぞれの楽器で言えることが変わってきてしまうのですが。
曲ごとのリズムの捉え方が自分の中でつかめてくると、テンポもつかめてくると思いますので、そうすると変に走ったり、もたついたりすることが減ってくるのではないかと感じます。
演奏している私たちは人間なので、ロボットのように正確な演奏はできませんし、完璧なテンポやリズムの演奏を目指す必要は無いので。
「なんとなく気持ちの良い範囲」の中で安定して弾ける、というのをぜひ目指せると良いなと思っています。
今回は曲のテンポ感やリズムについて書いてみました。
正確なものよりも、「許容範囲の中で、自分がどういう選択をとるのか」ということを意識していきたいです。
参考にしていただけましたら嬉しいです。
