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スウェーデンの伝統音楽でよく出てくる曲の種類5つ

/ ニッケルハルパ奏者

今日は、「スウェーデンの伝統音楽でよく出てくる曲の種類」を、5つピックアップして書いていきます。

「スウェーデンの伝統音楽について、基本的なことをご紹介したいな」と思って、2日前くらいにこの記事を書き始めたのですが、書いてみたら難しくて、わかりやすく書くのは大変だなと思いました。

さて、スウェーデンの伝統音楽を弾いていて、よく出てくると思う曲の種類を、私の目線で5つ選びました。

それぞれについて、今の私にできる範囲で解説を加えています。

主に、「一般的にその曲について言われていること・知られていること」「私が留学先で誰かに教わったこと(教えてくれた先生の名前つきの記述)」そしてときどき「私自身が思っていること」を書いています。

情報が多すぎるとわかりにくくなるので、留学先で教わったこと、中でも特に強調されていた(と私が記憶している)ことを中心に載せました。

よく出てくる曲の種類5つ

曲の種類はたくさんありますが、私が選ぶのは

  1. ポルスカ
  2. ワルツ
  3. ショッティス
  4. マルシュ、ゴングロート、フェンクロート系
  5. ポルケット

の5つです。

1.ポルスカ

ポルスカ(polska)は3拍子(3/4)です。

演奏する時は、「1拍目」と「3拍目」で足踏みをするのが大きな特徴です。

曲によっては、1・2・3拍目すべてで足踏みする場合もあります。

スウェーデンの伝統音楽の中で最も多いタイプの曲です。

ポルスカの種類

①ダンスと紐づいた分類(→たくさんある)

ポルスカは、主に伝承されてきた地方や地域によって、リズム/演奏方法等の特徴が異なっています。

それらの特徴はダンスのリズムと紐づいているため、ダンス名や地域名などとともに、細かく分類されています。例:ウップランド地方のBondpolska、ダーラナ地方OrsaのOrsapolskaなど

一般的に、レッスンや、曲の紹介などで耳にするポルスカの種類はこちらの分類によっていて、種類もたくさんあります。

②1拍を構成するリズムによる分類(→3種類のみ)

また、ダンスと紐づいた分類とは別に、1拍を構成するリズムによる分類の仕方もあります。

  • 1拍を構成するリズムが16分音符をベースにしているもの=16分音符ポルスカ(Sextondelspolska)
  • 1拍を構成するリズムが3連符をベースにしているもの=8分音符ポルスカ(Åttondelspolska)か3連符ポルスカ(Triolpolska)。←この二つは3連符が少ないか多いかでどちらか判断する

(↑Ditte Andersson、Olov Johanssonの授業からの引用)

こちらは、曲を理解したり分析する時に使うような分類です。

コンサートの曲紹介などで耳にすることはあまりないかもしれませんが、演奏している側は常に意識していて、この3種類の種類名も、普段何気なく会話に出てきます。


このように、同じポルスカでも種類や曲によって様々な特徴があるので、ポルスカの場合は「ポルスカとはこう」と思うよりも、曲を1曲覚えるたびに「このタイプのポルスカはこうなんだな~」と知っていく、ということが私は多いです。

2.ワルツ

ワルツ(vals=ヴァルス)は3拍子(3/4)です。

ワルツの特徴は「1拍目が重く、2・3拍目が軽いこと」です。

「1拍目で足踏みをする」のが基本ですが、リズム感を保つために、3拍目もあえて軽く足を踏みなおす人も多いです。

ここからは私がDitte Anderssonから教わったことを書きます。

ワルツのキーワードは”aldrig dö(=never die、永遠に一生を終えない)”だそうです。(これはDitteが考えたオリジナルのキーワードだと思います)

意味は「永遠に音を終えない」

どういうことかというと、「ワルツは、弓をパッと急に止めたり、1音を終わらせる(1音を終わらせてから次の音を弾く)ということをしない。音が続いたまま、次の音、次の音へと続いていく」。

また、さきほど「ワルツは1拍目が重く2・3拍目が軽い」と書きましたが、Ditteからもワルツの際には”1拍目”を”ゆっくりと””駒の近く”で弾いて、とにかく”強調”するように」と言われ続けていました。

↑これらのアドバイス、留学当時は言葉の意味は理解していたものの、感覚としては全くわかっていませんでした。最近やっと「そういうことだったんだ~」と思い始めています。

3.ショッティス

ショッティス(schottis)は2拍子(2/2もしくは2/4)です。

1拍目・2拍目で足踏みします。

ショッティスのリズム感に関しては、ポルスカと同じく曲によって雰囲気が違ったりするので、「ショッティスとはこう弾くものだ」と教わったことはありませんでした。曲ごとに教わる感じでした。

ただ、一つ印象的なのが、Olov Johanssonに教わった「ショッティス・メーター(schottis mätare)」という考え方です。

ポルスカの説明の中で

「1拍が16分音符のリズムによって構成されているか、それとも3連符のリズムによって構成されているかによって、分類できる(Ditte、Olovの授業より)」

と書きましたが、

ショッティスの場合は、16分音符ベースのリズムと3連符ベースのリズムが曲の中で混在しているものが多いそうです。

曲によっては、1曲通してどちらか一方に偏っているものもありますが、両方が混在していたり、どちらとも言い切れないくらい微妙な長さの音(リズム)によって構成されている曲もあります。

「ショッティス・メーター」というメーターがもしもこの世にあったとしたら、その目盛板には「片側(たとえば右端)に16分音符のリズム」、「もう片側(左端)に3連符のリズム」という目盛りが描かれ、メーターの針(今弾いている音のリズム)はそれらの間を指し示しながら、いったりきたりする、そうです。

「今、このメーターはどこを指しているのか(今弾いている音のリズムはどうなのか)?」を意識しながら曲を弾くように、とのことでした。

4.マルシュ、ゴングロート、フェンクロート系

marsch(マルシュ)、gånglåt(ゴングロート)、skänklåt(フェンクロート)等の曲ですが、これらは2拍子(2/2、2/4)です。

1拍目・2拍目で足踏みをします。

色々な呼び名がありますが、曲としてのおおまかな分類(ポルスカ/ワルツ…などの分類)としてはひとまとまりで、Ditteに教わりました。

どれも歩きながら弾く曲や、歩いている時の曲、歩くリズムの曲です。


ここからは、私が思うことですが、

これらの曲は、「その曲が演奏されてきた状況」によって、呼び名が異なっているのかなと思います。

たとえば、

  • お祭りで列になって歩く時によく弾かれていたような曲は「gånglåt(=ウォーキング・チューン)」
  • 式典や、式典での行進の際に演奏されたことのあるような曲は「marsch(=行進曲)」
  • 奏者が演奏のチップをもらうためお客さんの間を歩いてまわる時に弾かれていたような曲は「skänklåt(=give/donateの曲)」

などです。

そして他にも、食べ物や飲み物の名前がついた曲(=お祝いの食事の席で、それらが準備される間に弾かれていた曲)など、様々な呼び名があります。

また、私自身は、これらの呼び名↑とそれぞれの曲の音楽的な内容に、特に大きな関連性はないのかなと感じています。

つまり、「gånglåtだからmarschとは違ってこう弾く」とか、「marschはskänklåtとはこういう違いがある」といったことは、耳にしたことがなく、私自身特にそういう風に考えてもいません。

同じ曲が、一方ではmarsch、一方ではskänklåtと呼ばれていたりもします。こちらの曲など→Leipzigs krigsmarschについて

曲ごとに、演奏方法やテンポ感などに違いはあるかもしれませんが、それはその曲が伝わってきた(弾かれてきた)状況の違いと、あとは伝えた人の弾き方の違いが、曲の弾き方の違いに表れているのではないかな、と考えています。

5.ポルケット

ポルケット(polkett)は2拍子(2/2、2/4)です。

1拍目・2拍目で足踏みをします。

ポルケットの特徴もDitteに教わったのですが、ワルツとは反対に”plötslig död(=sudden death、突然の終わり)”だそうです。

これは、音が「急に終わる」、つまり「弓をパッと動かしてパッと止める、を繰り返して演奏する」、だそうです。ただし、「音は止めても弓は弦に乗せたままで」とも言われました。

同じ2拍子でも、ショッティスやgånglåt系とはまた全然違う雰囲気になります。

テンポも少し早めで、Ditteからは「心臓マッサージのリズムと同じ(100 bpm)」と教わりました。

↑心臓マッサージ(心肺蘇生)のリズムに合う曲というのは他にもあるみたいで、曲を思い浮かべながらやることで本当に命が助かることもあるみたいです。

余談:2拍子の曲は4拍子ではないことに気を付ける

ちなみに、ポルケットに関わらず、2拍子の曲はどれも4拍子のように思えてしまうかもしれませんが、4拍子のリズムで弾くよりも、2拍子感を感じながら弾くことで、曲のノリが出ます。

具体的には、ただ「1・2、1・2…」とカウントしながら弾くだけですが、特に「1拍目で毎回切り替わる」ことを自分の中で強調するようにすると、ノリがつかみやすいのではないかな、と私は感じています。

(ショッティスやgånglåt系はポルケットよりもテンポがゆっくりなので、倍速でカウントしないようにだけ気をつけます)

2拍分でメロディの雰囲気が切り替わるような曲はわかりやすいのですが、4拍分で一つのフレーズのように思える曲は、特に注意なので、あえて「1・2、1・2…」と2拍ごとで意識すると、曲の雰囲気が出しやすくなると思います。


以上、私が思う「よく出てくる曲の種類5つ」について、書きました。

書いていて色々迷ったので、もっと色々自分の中で整理して、それぞれの曲について、よりわかりやすく書けたらいいなと思いました。このテーマはまた挑戦したいです。

もしよければ、参考にしてみてください。

お読みいただき、ありがとうございました。