今日は「新しい曲を覚える際の基本の手順」について、書きます。
普段私が書いていることは、今日の「基本」をふまえたうえでのプラスα部分(手順の4番以降)にあたります。
まずはこれら基本の手順を踏んで、ゆっくり(自分のペースで)、丁寧に曲を覚えていくとよいと思います。
基本の手順
基本の手順はこちらです。
1.曲を聴き、メロディに親しむ
2.音を一つ一つひろって弾いていく
3.ボーイングをみていく
4.曲の特徴、リズムや音の出し方など、細かい部分をみていく
それぞれについて、解説していきます。
1.曲を聴き、メロディに親しむ
まずは、曲を聴き、メロディに親しみます。
もしも、今から覚えようとしている曲が普段からよく聴いている曲の場合、このステップはもうクリアしています。
一方、レッスンやワークショップで教わる曲のほとんどは、初見の曲が多く、曲を聴く時間も限られています。
曲を聴く際は、最終的には「メロディを口ずさめる」くらい曲に馴染めるとよいと思いますが、長い曲や複雑な曲の場合は、いきなりだと難しいです。
その場合、まずは、
①Aパート/Bパートの切れ目、「繰り返しがどこからどこまでか」などに注目する
②音の上がり下がり/曲の盛り上がり/曲の雰囲気を追ってみたり、なんとなく予想しながら聴いてみる
などをやってみるといいと思います。
特に①は、細かい音をいきなり把握するのは難しくても、なんとなく
- 「Aパート(曲の最初のパート)はここからここまでくらいかな」
- 「今のこれはAパートの繰り返しだな」
- 「新しいパート(Bパート、Cパート)に入ったな」
というように聴くことができるだけで、パートの長さの把握が感覚的にできていることになります。
②音の上がり下がり/曲の盛り上がり/曲の雰囲気に関しても、たとえば音一つ一つがよくわからなくても、
- 「ここで音が上がっているな」「ここで音が下がっているな」
- 「ここはパターンで動いているな」
とわかるだけで、音を一つ一つ弾いていく際に覚える手がかりになりますし、他にも
- 「ここは盛り上がっているな」
- 「ここは落ち着いているな」
- 「全体を通して優しい雰囲気の曲だな」
とわかると、曲を覚えるだけでなく、覚えたあとに実際に曲を弾く際の参考になります。
2.音を一つ一つひろって弾いていく
メロディや、パートの切れ目などがなんとなくわかってきたら、今度は音を一つ一つひろって弾いていきます。
ここでは、ボーイングのことはあとまわしで構いません。
音優先で、みていきます。
(※「音→ボーイング」という優先順位になりますが、楽器に慣れている人は、ここでボーイングもセットにして覚えることもできます)
まずは、パートを細かく区切りながら、自分が一つ一つの音を覚えられる範囲で、短い区切りごとに音を弾いていきます。
同じ範囲を繰り返し練習します。
その範囲のフレーズが身体に馴染んだら、次のフレーズにいき、ある程度のところで、一旦ストップ。
それまでに弾いた複数のフレーズを繋げて、復習しながら大きいまとまり(より長いまとまり)で弾きます。
ある程度、大きいまとまりで弾けるようになってきたら、次のフレーズにいき、同じことを繰り返します。
最終的には、AパートやBパートなど、パートごとに繰り返して弾けるくらい、音を練習します。
3.ボーイングをみていく
音(指)がある程度スムーズになってきたら、今度はボーイング(弓の動かし方)をみていきます。
その音を弾く際、弓を「上に動かすのか/下に動かすのか」や、「複数の音を一回のボーイングで弾いているのか/音ごとに切っているのか」などを意識して、音とセットにしてボーイングを練習していきます。
これも、音の時と同じように範囲を短く区切ってみていき、徐々に弾く範囲を広げます。
最終的にはパートごとに繰り返せるようになるといいと思います。
ボーイングについて、もう少し解説します。
基本は「そのまま真似する」
ボーイングは、教えてくれる人や、動画の通りに真似してやってみるのがいいです。
動画や教えてくれる人がいなくて、録音だけしか持っていない場合、ボーイングは自分で考えて弾きますが、最初の頃はできれば見本のボーイングがあるような曲を覚えることをおすすめします。
なぜなら、「ボーイングを教わった通りに弾く」ということは、とても大切な練習になるからです。
たとえば、
- ボーイングと曲のタイプが紐づいていることが多いので、1曲のボーイングパターンを学ぶことで、同じタイプの別の曲にも応用できる
- ボーイングを真似することで、曲の雰囲気を出すことができるようになる
- 「ボーイングを真似する」こと自体が練習になる
スウェーデンの伝統曲や、伝統曲のリズムを持つような現代曲の場合、1曲にそのジャンルの曲が持つパターンが凝縮されていることが多いです。
1曲のボーイングパターンを学ぶことで、今後同じタイプの他の曲を弾く際にも、応用することができます。
(ボーイングがわからないような「録音」に対しても、同じタイプの別の曲のパターンを応用しながら「こう弾いているのかな?」と推測することができます)
また、ボーイングを真似することで、音だけを追って弾いている時には出せなかったリズム感や、曲の盛り上がり/雰囲気なども出しやすくなります。
さらに、もし仮に「あの人みたいに弾きたいと思わないし、ああいう雰囲気を出したいとも思わないから、真似しない」と思ったとしても、「真似する」こと自体が、
- 他人のボーイングの分析(「ここで動かしている」などと気づける)
- 「1」の内容を自分の頭で理解する(ボーイングの流れを理解する)
- 頭で把握したことを自分の身体で実行する(実際に自分でできる)
ということの練習になりますから、最終的にはそのボーイングを「やらない」としても、一度は真似してみるといいと思います。
ボーイングは、いきなりだと難しい曲もあるかもしれません。
できなくても、焦らずにゆっくり(弓の一振り一振りなどで)みていけば大丈夫です。
4.曲の特徴、リズムや音の出し方など、細かい部分をみていく
音がわかって、ボーイングともセットで弾けるようになってきたら、曲の特徴やリズム、音の出し方や響かせ方、雰囲気など、プラスαの部分をみていきます。
これは最後の段階ですが、この段階には終わりはありません。いくらでも広げていけます。
この段階は、「曲を覚える手順」の最後の段階として書きましたが、曲を覚える(学ぶ)ことと、自分で弾く(創造する)ことの両方の要素が入っています。
他の人の演奏や録音・動画を聴いたり見たり、自分で弾いていて感じたことや考えたことを実験したり、他の人の言っていることや書いていることを参考にして、曲のことを知るのと同時に、「自分が楽器/曲をどう弾きたいのか」をイメージしていきます。
他の人の言っていること(弓をどう扱うかとか、リズムをどうするとか、私が言っているようなこと)は、それ自体が重要なのではなく、一番重要なのは「自分がどう弾きたいか(楽器/曲をどう響かせたいか)」です。
自分がどうしたいかを出発点として考えて、他の人のアドバイスは自分のやりたいことを実行するための参考として使います。
また、この段階に入ると、1つの曲をずっとつきつめ続けるよりも、色々な曲に挑戦することが相乗効果になることがあります。
新しい曲を、また手順の1から順に(慣れている人はプロセスを飛ばしてもいいのですが)覚えていき、色々な曲を弾きながら過去の曲のブラッシュアップを行います。
こうして、上達するプロセス自体を楽しみながら、できなかったことや、やりたいことに少しずつ挑戦していくことができます。
以上、私自身が教わり、実際に自分もやっている「新しい曲を覚える際の基本の手順」について、書きました。
もしよければ、参考にしてみてください。
そして、色々な曲に挑戦してみてください。
お読みいただき、ありがとうございました。