先日、ニッケルハルパ&北欧の笛楽会(というイベント)で「Trall」という歌唱法の話が出たので、今回はTrallについてご紹介したいと思います。
Trall(トラッル)
Trall(トラッル)というのは、歌詞無しで歌を歌う歌唱法のようなものです。
スウェーデン以外の北欧の国にあるのかどうかはちょっとわからないのですが、少なくともスウェーデンでは確立されている歌唱法というか、ジャンルみたいなものです。
私たちも、歌詞がわからない時によく「ラララ…♪」みたいな感じで歌うと思うのですが、そんな感じで、歌詞や言葉無しで歌を歌うことをTrallと言います。
Trallの語源自体が、「トゥララ…(tralala…)」と歌うことから、とも言われているみたいですね。
フォークミュージック(伝統音楽)の世界ではこれが一つのジャンルのような感じになっていて、特に昔はTrallを歌う人をTrallare(トラッラレ)と呼んでいました。
(Trallareという言葉自体は今でも使われていると思いますが、現代では、フォークミュージックのシンガーがTrallも歌う、というような感じで、Trall専門の人というのはあまりいない気がします。昔は、楽器を演奏しない人が、楽器がわりにTrallで歌うという例が多かったのでは、と私は思っています)
参考:Ceylon Wallinについて(お父さんがTrallareだったそうです)
さて、Trallで歌う時に使う発音ですが、特に決まりはありませんが、多いのは「タ」「ティ」「ダ」「ディ」、ラ行、ヤ行、母音、そしてたまに「サ」、ハ行、とかですかね。
これらを組み合わせて「ディルリラ~」「ティーヤンラリラ~」って感じで歌います。
たとえばこんな感じです↓
これはおそらく2曲を組み合わせていると思うのですが、途中から混ぜていてかっこいいですね。「Irmelin」という3人のフォーク・アカペラグループによる歌です。現在はメンバーが少し入れ替わっています。
Trallは、基本的には自由な発音で即興的に歌うことができます。
ただ、私がワークショップで教わった時の先生(プロのシンガー)によれば、プロのシンガーたちは「どの発音で歌うか」も曲の中で研究して、あらかじめ決めて歌うみたいです。
曲のポテンシャルを引き出すために色々研究しているらしくて、かなり奥深いみたいですね。「この子音と母音だとこういう印象になるから…」とか、そういうのを考えるんだそうです。
あと、グループとかで歌う場合は、皆で発音を合わせないといけないですもんね。
他にも、たとえばこちら↓
先日、日本に遊びに来ていたUlrika Gunnarssonの歌(ソロ)です。
ソロで聞くと、よりTrallのおもしろみが伝わってくるかもしれません。
歌詞が無い分、「勢い」とか「強弱」とかも前に出てくるというか、重要な役割を果たしているので、その辺のおもしろみや奥深さがあるな~と思います。
また、こちらも↓
Kongeroというフォーク・アカペラグループです。私もブログで何度か紹介している人たちですね。
勢いがありますね。誰がどのパートを歌っているのかな~とか、つい見てしまいます。
Trallは歌詞が無い分、スウェーデンの歌とか外国の歌でも、逆にすんなり聞けるかもしれません。言葉の壁が無いので。
また、さきほども書いたように歌の「勢い」とか「緩急」とかがすごくおもしろいので、聞いていて飽きない感じがします!心地よいです。
という感じで、Trallはだいたいこういうものです。ざっくりな説明ですが(笑)
(ちなみにTrallの表記ですが、今回はなんとなく最初の文字を大文字にして書きましたが、特に大文字で書く決まりはありませんので。スウェーデン語の文章内だったら他の単語と同じように小文字で書くと思います)
普通にTrallを歌う分には、もう発音とか決めずに自分の思うままに(鼻歌みたいな感じで)歌って良いと思うので、歌詞の無い曲、なんにでも応用できる歌い方になります。
セッションとかで楽器を持っていなかったら、こういう感じでTrallで歌ってセッションに参加するのもありじゃないかな、と思います。
自分が歌っている側にまわっても、楽しいんですよね。メロディに勢いがつきやすくなって、歌がうまく転がっていく感じがするんです。リズムに乗りやすい感じがします!
以上、Trallについてでした。