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「汚い」と「きれい」は紙一重。汚い音が持つ可能性

/ ニッケルハルパ奏者

「汚い音」と「きれいな音」というのは、一見真逆なものに思えるかもしれません。

しかし、実際にはとても近くて、その違いは紙一重です。

自分が「汚い」と思うような音も、実は「きれいな音」に必要な要素を含んでいることが多く、きれいな音・魅力的な音まであともう一歩のところまできています。

今回はこのことについて書きます。

きれいな音・魅力的な音とは

まず、私がきれいだなと思う音・魅力的な音について考えてみました。

たとえばこのような要素があるかなと思います。

  • ハリがある
  • 鋭さがある
  • スピード感がある
  • やわらかさがある
  • 軽やかである
  • 力強さがある
  • 優しさがある
  • ちょっとずつ雑味がある
  • 安定感がある
  • あやうさがある

一般的に「きれいな音」というと、「雑味が無くてなめらか」という意味の美しさを求める場合があるかもしれません。

しかし、実際にはどの楽器でも、「雑味」や「あやうさ」のバランスがその楽器の音色の「味」になっていると思います。

もちろん、ただ雑なだけでは「汚い音」で終わりです。

雑味ときれいさのバランスや、あやうさと安定感のバランスなど、

一見矛盾しているような要素がうまく同居しあって、バランスがとれることで、魅力的な音になるのだと思います。

伝統音楽の場合

さらに、伝統音楽の場合、

「楽器の音色の雑味、微妙なゆらぎ、明暗、空気の音のようなもの、かすれ」

がある方が、音楽自体がより自然で美しく聴こえる場合が多いと私は感じています。

特に伝統音楽の持つ「自然なリズムの波」や、「有機的な音楽のうつろい」などは、

ゆらぎのある音色、かすれなどをともなう自然な音色の方が、より人間味をもって表現できるのではないかと考えています。

「汚い音」の持つ可能性

このように、一見「汚い音」と分類されるような音の中にも、実は魅力的な音につながる要素がたくさん含まれています。

「汚い音」(と自分が思っている音)にも、可能性が満ちているのです。

(そもそも、自分が「汚い」と思っているだけで、客観的に聴いたら違う印象を持つかもしれません)

また、たとえば「こじんまりとした音」のようなものよりも、「汚い音」の方が、よりきれいな音や魅力的な音に近いのではないかと私は思っています。

「こじんまりとした音」というのは、色々な要素間のバランスはとれているものの、全体的なボリュームが小さかったり、突出した要素があまり無い音です。

一方で「汚い音」というのは、バランスは上手くとれていないけれど、何かの要素が突出している音であることが多いです。

その突出している要素を削って全体的にこじんまりとまとめてしまうのではなく、突出した要素に合わせて「他の要素のバランスを上げる」方が、より「きれいな音・魅力的な音」に近づきやすくなるのではないかと思います。

バランスのとり方は自分次第

「全体的にまんべんなく、均等にバランスをとった音」もそれはそれで素敵ですが、

「自分らしくバランスをとった音」というのが、その人の音色の持ち味になります。

音のバランスのとり方は、人によって全然違います。

素晴らしい演奏をする人の音色も、十人十色です。

どれが1番とは言えません。

ただ、どれも魅力的で存在感のある演奏です。

他の人の音色や演奏を参考にしつつ、「自分には自分のバランスのとり方があるのだ」と信じたうえで、

汚い音を出すことを恐れず、むしろ汚い音にどんどん立ち向かっていきます。

そうすると、壁をつきぬけた向こう側に、自分にとってしっくりくる音色が待っていると思います。

汚い音(と自分が思える音)は、きれいな音まであと一歩です。

今自分が出している音の「良いところ」を殺さずに、より生かすように意識して、ぜひ練習してみてください。


以上、「汚いときれいは紙一重。汚い音が持つ可能性」について書きました。

参考にしていただけたら嬉しいです。

お読みいただき、ありがとうございました。