峰村茜のホームページへようこそ!どうぞごゆっくりご覧ください。

練習方法について

/ ニッケルハルパ奏者

昨日、「楽器演奏が脳にもたらす効果」という動画をご紹介しました。

昨日のブログ→楽器演奏が脳を活性化させる

今回は「練習」について、もう1つ動画をご紹介したいと思います。

そしてその後で、私の普段の練習方法について書いていきます。

動画「あらゆる物事の上達を早める練習の仕方」

動画はこちらです。「あらゆる物事の上達を早める練習の仕方―アニー・ボスラー&ドン・グリーン」

昨日の動画と同じTED-Edのチャンネルの動画です。

こちらも英語音声の動画に、(私の設定だと)日本語字幕がついています。

字幕は自動的に選択されているみたいですが、設定で変えられるので、日本語字幕がついていな場合は自分で選択すれば大丈夫です。

動画の内容

動画の内容はざっくり言うと、「普段の練習が脳内(→神経→身体の活動)にどのように影響するのかについて」と「上達を早める練習の仕方について」です。

以下、動画を見たうえで私なりに要約してみます。

身体を動かすには、脳から電気信号が発信され、それが神経線維などを伝わって筋肉に伝わる必要がありますが、伝わる過程で通常は「エネルギーが損失(放出)されていってしまう」らしいんです。

それを防ぐのが「ミエリン」という、絶縁体のような役割をするさやのような覆いです。

「練習」によって一定の動作を繰り返せば繰り返すほど、このミエリンが分厚くなり、電気信号のエネルギー損失を防いでくれるそうです。

それにより、情報伝達の「スーパーハイウェイ(高速道路)」のような経路ができあがり、電気信号が「より高速で効率よく」伝わるようになり、より高度なパフォーマンスができるようになるそうです。

これが「練習」が脳内→神経→身体活動に与える効果です。

また、動画の中ではさらに「効果的な練習方法」についても言及しています。それらについてはここには書きませんが、実際に動画をぜひご覧ください。

動画を見て思ったこと

動画を見て思ったことを書きます。

わかりやすい

ミエリンのあたりの説明は、本当はおそらく難しいであろう内容を、とてもわかりやすく説明してくれていて、なるほど!と思いました。

「高速道路」(動画内では「スーパーハイウェイ」)という例えも、すごくわかりやすいと思いました。

適当な動作で練習すると、適当な動作を身につけてしまう

「正確な動作で練習すること」は、必要なことだと思いながらもなかなかできなかったりするものですが(ついつい、適当な動きでごまかしてしまいがちです)、動画を見ると「適当な動きで繰り返し練習してしまうと、その適当な動作が知らず知らずのうちに身についてしまうんだろうな」というのが容易に想像がつきました。

「1つ1つの動作を意識して練習しよう」と思うようになりました。

ゆっくり練習することの必要性

「ゆっくり練習すること」の必要性についても、あらためて認識することができました。

ゆっくり練習することが「大切」で「必要」なのは今までも頭ではよくわかっていましたが、それが具体的に、どういう風に脳や神経や身体に影響を与えるのか、全く知らずにいたんです。

でもこの動画を見て、(動画自体はきっと「簡略化した説明」ではあると思うのですが)「身体はそういう仕組みになっているのか!」と思ってとても納得しました。

視覚的にわかりやすく説明してくれるのがありがたいです。

普段、特に、練習時間があまりない時や本番前は「ゆっくり練習している場合じゃない」と思ってしまいがちでしたが、そんな時にこそ、「正確な動作でゆっくり練習しよう」と思うようになりました。(もちろん状況にもよりますが)

私の練習の仕方

この動画を見たのが一カ月ほど前なのですが、その頃から私が練習中特に意識していたのがこちらです↓

《「ゆっくりと」「丁寧に」「集中して」練習すること》

これを1曲ずつ行っていきます。

もう少し詳しく書いていきますね。

ゆっくりと曲を弾く

私は(というかスウェーデンの伝統音楽系の奏者はおそらく)、「曲」を通して音の響きや指の練習などを行うので、何か教本でのフレーズや基礎練習をするというよりは、曲の中に実際にでてくるフレーズを使って響きや音色の練習をしたり、指の練習をしています。

なので基本がもういきなり「曲の練習」なのですが、曲の練習だと、「なんとなく弾ければそれでOK~」みたいな感じになりやすいです。

周りの空気的にも、弾いている本人的にも。

それをなんとなくで済まさずに、あえて「ゆっくり」弾きます。1曲1曲をゆっくり、何度も。

ゆっくり弾くと色々なことが見えてくるし、色々なことを考える時間ができます。

すると、なんとなく弾けているつもりだった曲の中でも、「気になる部分」がいくつも出てきたり、思わぬフレーズとフレーズのつなぎ目に出会ったり(今まではつなぎ目だと意識していなかったけど、つなぎ目だと思うことで曲の雰囲気が変わる、とか)。

「できているつもり」の曲や、「この先どうしたら良くなるのかわからない」というような曲であっても、ゆっくり弾くことで、自分がやるべき「単純で小さな課題」が結構たくさん残されていることに気がつきます。

そういうものに自分が意識的になればなるほど、自分の演奏は変わっていきますので、最初にまず「気づくこと」、次にそれら「1つ1つにじっくりと取り組む」こと。

自分の弾き方に徹底的に(自分のできる範囲で)向き合います。

丁寧に弾く

ゆっくりと弾いている間、意識するのが「なるべく丁寧に1つ1つの音を出す」こと、そして「なるべく丁寧に1つ1つの動作を行う」ことです。

たとえば「速い動き」の部分で、急に「けいれん」したような手の動かし方をするのではなく、動作のつながりを意識してなるべくゆっくり、「弾いている動作自体」をなめらかに行うようにします。

また、「弾き方」に関しても、あまり変な癖をつけながら練習するよりかは、まずは少しニュートラルな感じで丁寧に弾く方が良いと思っています。

これは、よくあることなのですが、本人は「現地のミュージシャンっぽくリズムをつけて弾いている」つもりが、客観的には「ただ単にその人の変な癖がついているだけ」という場合があるからです。

「ニュートラル」の意味自体が曖昧ですが、ロボットのように無機質に弾くのとは違って、「あまり癖をつけすぎずに、自然に、丁寧にその音を出す」という感じで弾くと良いかなと思います。

(ただし、あえて出したい個性的なリズムがある場合は、そのリズムを持たせた状態で、ゆっくりと練習します)

集中する

「集中する」というのは、言うは易し行うは難しですが、私的には「頭を空っぽにする」ことです。

「ゆっくり」弾くと色々なことを考える時間ができるのですが、そこで「今日の夕ご飯は何にするか」とか「職場の人間関係」とかそういうことを考えるのではなく、頭を空っぽにして、「自分の出す音」を聴き、「自分の身体の感じ」を観察し、「自分の身体の声」を聴きます。

反対に、集中しないで、色々なことをうだうだと考えながら、だらだら漫然と弾いてしまうと、練習時間のロスになりますし、「なんとなく弾く」というのが身についてしまうと思います。

自分が今出している音はどんな音なのか?その音に対して私はどう思うのか?

自分の手や指の感じはどうか?身体全体はどうか?

弓と弦の接する箇所を、より細かく感じられているか?それとも「大雑把」にしか感じていないのか?

そんなことを、今の自分の状態を聴きながら見ながら感じながら弾いていると、自分の状態がよく見えてきます。

そこで出てきた小さな課題1つ1つを、自分にできる範囲で1つ1つクリアしていきます。

課題を細分化する(小さな練習が大切)

「課題を細分化する」というのは、よく自己啓発書などででてくる言葉だと思いますが、まさにそれを楽器の練習にも当てはめます。

どんなに素晴らしい奏者でも、普段からやっている練習というのは奇抜なことではなく、おそらく誰もが思いつくような地道なこと(練習方法)だと思うんです。

ただしそれを、より細かい単位で、より繊細に、より色々なことに気づきながらやっているので、結果的にそれがより合わさった時、素晴らしい音楽になるんです。

今の自分がすでに知っていたり、すでに取り組んでいるような小さな課題(簡単な課題・シンプルな課題)をないがしろにせず、それらを1つ1つの曲に当てはめて誠実に取り組むことで、演奏は大幅に変わっていきます。

そして、そういうやり方を身につけて習慣づけていくほど、自分自身が良い方向に成長していけると私は感じています。

丁寧に、集中して取り組むと、なんか「自分の道に集中できる」感じがしてきて、心がすっきりするんです。確実な感じがするし、自分に対して誠実でいられる感じがして、落ち着きます。楽しいですし。

私はこのような感じで、練習しております。


以上、動画の紹介と、私の練習方法について、でした。

練習法は人それぞれだと思いますが、ぜひご自分に合う練習方法を通じて、楽器の演奏をより楽しんでいただけたらと思っています。

私も、「ミエリンを分厚くしよう、高速道路を増やそう」と思いながら練習しています。「本番で楽しく軽やかに走るために、今は安全な道路を着実に建設しよう」という感じで。

お読みいただき、ありがとうございました。