昨日書いたHultkläppen(フルトクレッペン、演奏家)についての補足や音源などをいくつか紹介していきたいと思います。
映画
Hultkläppenを扱った映画が1977年に作られたそうです。
Hultkläppen役はThore Härdelin(トーレ・ヘルデリーン)というフィドル奏者が演じています。
その映画の中の1シーンです。リバイバル運動・禁酒運動の会合の際にHultkläppenがフィドルを演奏して抗議するシーンでしょうか。
演奏しているのはBrännvinspolska(ブレンヴィーンスポルスカ)、brännvinはお酒です。
(お酒や食べ物・食事の名前がついている曲は、それが振舞われた際に演奏された曲(配膳や準備の間にもお客さんを楽しませるために、演奏された曲)などであることが多いです)
ドキュメンタリー(インタビュー)映像
また、昨日の記事で私が「参考にした」と書いていた動画がこちらですね。
「På jakt efter Hultkläppen」(フルトクレッペンを追い求めて)です。
ドキュメンタリー(インタビュー)映像です。映画と同じく1977年に放送されたものだそうで、番組の最後に映画の宣伝(明日TVで放送します、というもの)もされています。
この番組は主に、Hultkläppenと実際に会ったことのある2人(Snår-Maria Norberg、Per Larsson)がインタビューに応えています。Per Larssonは演奏もしています。
Snår-Mariaはこの映像当時100歳、Per Larssonも94歳だそうです。二人とも元気ですね。
Per Larssonが「Hultkläppenのフィドルの音色は他のフィドルと違っていて、それが素晴らしく、フィドルの音というよりはニッケルハルパの音に近かった」と言っていて、ニッケルハルパを弾く私としてはなんとなく嬉しいです(言っていることが本当かどうかはさておき)。
その他、Hultkläppenを研究している人や、映画でHultkläppen役を演じたThore Härdelinなども出てきます。
Thore Härdelin(トーレ・ヘルデリーン)
話が少しそれますが、このThore Härdelinはヘルシングランド地方の有名な演奏家ですが、以前紹介したBingsjöstämma(ビングショーステンマ)の映像にも出てきていました。
帽子をかぶっているのがいつも特徴的な人です。
(7:56~の再生にしています。ここで弾いている、帽子のおじさんです)
※ステンマについて→伝統音楽のイベント「stämma(ステンマ)」
1977年の映画当時もThoreはすでに有名な演奏家だったのだろうと思いますが、当時の映像では「今の若い人の演奏は昔の演奏家に劣る」みたいなことを、インタビューされたSnår-Maria(100歳のおばあちゃん)に言われていました。
今となってはそのThore Härdelinが、年齢を重ねてレジェンドになっているというのがおもしろいです。
曲
曲の音源ですが、さきほどの映画のサウンドトラックがこちらです。
フィドル(ソロ)の演奏がたくさん入っていて、歌も入っています。ここに入っている曲だけでもかなり曲数があるので、聞きごたえがあるかなと思います。
(これはCDやデジタルになっていないそうで、多くの人に聞いてもらいたいということで、レコードをマスタリングし直してアップロードしてくれています。動画の概要欄に曲名と演奏家名、頭出しの時間が書いてあるので、曲名の一覧が知りたい方はそちらへどうぞ)
Hultkläppenの伝えた曲(動画内でよく言われる「古い曲」)は、「演奏するのが難しい(複雑、細かい音が多い)」という特徴があるそうです。
16分音符のポルスカが多いですね。→それぞれの地方の伝統音楽の特徴(4)(ヘルシングランド地方)
また、「勢い」みたいなものも感じるので、それも良いなと思います。
さきほどの音源をアップロードしているのがThomas von Wachenfeldtという演奏家なのですが、Hultkläppenについて色々研究しているそうで、彼自身による曲の演奏動画もあります。
これはHultkläppenが使っていたフィドルで弾いているそうです。
スチール弦なので独特な音色がするのと、音程を合わせるのが難しい(調弦しきれない楽器)、のだそうです。
(この曲以外にも、彼の演奏動画はたくさんあるので、フィドルのボーイングなども見たい方はYouTubeで見てみてください)
また、同じくHultkläppenのフィドルで、別の人が演奏している動画↓
こんな風に、昔の演奏家の楽器や衣装が保存されていることって結構あって、弾けるように大事に保存されているんですよね。
ということで、Hultkläppenについての補足や音源をいくつかご紹介しました。
今回ご紹介したのはほんの一部ですが、同じ曲でも人によって弾き方も違いますし、おもしろいですよね。
ヘルシングランド地方の曲の雰囲気、みたいなものも感じます。
Hultkläppenの曲は他にもたくさんあるそうなので、もしよければぜひ調べて聞いてみてください。
私もニッケルハルパで弾けたら良いなと思います。