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Vaggvisaースウェーデンの子守唄

/ ニッケルハルパ奏者

伝統音楽を聞いていると、たまに「Vaggvisa」(ヴァッグヴィーサ)という曲と出会うことがあるかもしれません。

Vaggvisa(ヴァッグヴィーサ)というは、スウェーデンの「子守唄」のことです。

今回はこのVaggvisaについて、簡単にですが、私が知っている歌をいくつか交えてご紹介したいと思います。

(最近の歌も存在していると思うのですが、今回は私の趣味もあり、古い歌(伝承歌)をご紹介していきます)

Vaggvisa(ヴァッグヴィーサ)

「vagga」(ヴァッガ)は「ゆりかご」や「ベビーベッド」の意味。

「visa」(ヴィーサ(※ヴィザではないので注意))は、「歌」の意味。

両方合わせて、「子守唄」です。

(※2つの単語が合わさる時に、最初の単語の語尾が省略されたり変化することがよくあります。今回の単語の場合はvagga+visa=vaggvisa(vaggaの最後のaが省略)となっています)

子守唄自体の説明は不要だと思いますが、子どもを寝かしつけたりあやしたりする歌ですね。

私は、留学先の学校やイベント会場などでたまに歌のワークショップを受けることがあったのですが、その時にこのVaggvisaを教わる機会がありました。

私が教わったものや、CDで聞いていたものは、たまたま歌詞の内容やメロディに共通している要素が多く、「Vaggvisaって、おもしろいな、良いな」と思ったのを覚えています。

さて、歌を聞いていただいた方が早いかと思うので、早速聞いてみましょう。

おそらく同じ歌ですが、伴奏があるバージョン↓

こちらの伴奏があるバージョンの歌は、Ulrika Bodén(ウルリカ(ウリカ)・ボデーン)という女性の歌です。UlrikaはRanarim(ラーナリム)という有名なバンドのメンバーでもありました。スウェーデンの伝統音楽界ではとてもよく知られる歌い手です。

この歌は、私はこちらのUlrikaに教わったのですが、こちらの伴奏よりもさらに素敵な歌のアレンジ(皆で一緒に歌えるような簡単なアレンジ)を教わり、「すごく雰囲気のある子守唄だな」と思いました。

(伴奏も素敵ですが、私は伴奏無しの雰囲気も結構好きなので、別のアカペラの方の音源を最初に載せています)

歌詞を引用させていただくと、このような感じ↓私が教わったのは1番だけだったので、1番だけ引用しました。

Tusse-li-lulle-i-lulle-bo
Lulle jag så gärna
Tappe jag bort min skälleko
Skällkon hette Stjärna
Linden bad mig springa och leta
Aspen bad mig sitta och leka
Men björken lovade mig (?) till kvällen

歌詞:Ulrika Bodén「Vaggvisor」

この歌は、私が教わった時は、「Värmland(ヴェルムランド地方)の歌」だと聞きましたが、同じモチーフ(同じような歌詞やメロディ)の歌はその他の場所にも伝わっているそうです。

印象的だったのは、「Linden」「Aspen」「Björken」など、「樹」の名前が出てくることです。

Linden(リンデン)はフユボダイジュ/シナノキ、Aspen(アスペン)はヤマナラシだそうで、Björken(ビョルケン)は白樺です。

(追記:次の一文の歌詞の日本語訳、解釈が間違っていたので後から訂正しました。すみません。9/17夜)

歌詞の中で、「私」は飼っている「牛」(名前はStjärna)を見失ってしまうのですが、そんな私にLindenは「走って(牛を)探せ」と言い、Aspenは「座って(自分と?)遊んで欲しい」とお願いしてくる、という歌詞になっています。

そして最後の白樺の「?」の部分は、「ブスパース」と歌っていて、確か、「方言」か「昔の言葉」だったと思います(一般的なスウェーデン語の言葉では無いので「?」になっています)。意味はおそらくワークショップの時に聞いたと思うのですが、忘れてしまいましたが…。「他の樹々は『探せ』とか『遊んでくれ』と言ってくるけど、白樺だけは、夜になったら『休んでい良いよ』と言ってくれている」(もしくは、夜になったら寝床を提供してくれるとか、火をおこすための薪をくれるとか)みたいな意味だったような気がします。違っていたらすみませんが。

また、おそらく同じモチーフがテーマになっているこちらの歌↓

Kongero(コンゲロ)という、スウェーデンの伝統音楽アカペラグループ(女性4人)の歌です。

(このCDには、この歌は「Vallvisa」(=家畜を呼ぶ歌、牧場の歌)と書いてあり、歌詞も確かにそんな感じなのですが、さきほどの歌とモチーフが同じだと思うので一緒に紹介してしまいます)

こちらは2曲を続けて歌っています。前半(~1:06くらいまでと、2:08~2:30)がフィンランドの歌、そして後半の歌(1:07~と、2:31~)が、さきほどのUlrikaの歌とおそらく同じモチーフの別の歌になっています。

こちらの歌でも、「Aspen」「Linden」「Björken」という歌詞が出てくるのがおわかりでしょうか。

Aspen bad mig leta leta, Linden bad mig vila…という感じで、「アスペンは私に(見失った牛を)探せと言い、リンデンは私を休ませてくれる~」といった歌詞になっています。白樺も出てきます。

(追記:Ulrikaの歌も、こちらの歌も、「Stjärna(星)という名前の自分の牛を山の中で見失ってしまい、樹々に『探せ』とか『休め』とか言われる」といった内容であることが共通しています。私の訳が雑で申し訳ありませんが、おもしろい内容ですよね。9/17夜)

この歌もヴェルムランド地方の歌だそうなので、同じモチーフが少し形を変えて、同じ地方内で伝わっているのかなと思いました。

この歌については、以前も紹介したこちらの方(Miranda Samuelsson、ミランダ・サミュエルソン)のYouTubeチャンネルで少し長めのバージョンと歌詞を載せてくれているので、興味のある方はこちらもどうぞご覧ください↓YouTubeのページの概要欄にいくと歌詞が見られます。


ということで、簡単にですが、今回は私が知っているVaggvisa(と同じモチーフの別の歌)についてご紹介しました。

ちょっと暗めの静かなメロディで、歌詞も少し特徴的で、雰囲気がとても素敵だなと思っています。

(私がそういう曲を中心に選んでいる、というのもありますが)

朝から聞いていると眠くなってしまいそうですが、こういう雰囲気の音楽が好きな方もいらっしゃると思うので、ぜひご紹介したいなと思いました。

参考にしていただけましたら嬉しいです。