スウェーデンの伝統音楽って、結構クラリネットを吹いている方もいらっしゃるんですよね。
今回は、クラリネットで聞くスウェーデンの伝統音楽や、クラリネット奏者が伝えた曲などをご紹介したいと思います。
クラリネットで聞くスウェーデンの伝統曲
クラリネットの演奏家をご紹介します。
①Curt Tallroth(クルト・タルロート、1920-2001)
Curtは、ウップランド地方の演奏家です。クラリネット・フィドル・ニッケルハルパなど、たくさんの楽器を演奏されていました。
ニッケルハルパ奏者のOlov Johansson(オーロヴ・ヨワンソン)の先生であり演奏仲間でもあったCurt。
Olovとのlive演奏を音源化したCD「Örsprång」(ウールシュプロング/エールシュプロング)にたくさんの曲が収録されていて、クラリネットの演奏もあります。
「Franken(フランケン(=フランク)伝承の結婚式のポルスカ」↓
August Frank(アウグスト・フランク)は、Hjälsta(イェールスタ)という所のクラリネット奏者。この曲は、Abel Eriksson(アーベル・エリクソン)とHenrik Eriksson(ヘンリック・エリクソン)(※2人は名字が同じなのでおそらく兄弟か何かだと思います)という2人のクラリネットが、August Frankから教わったものだそうです。
Curtがクラリネットを始めたのは
そもそも、Curtがクラリネットを吹き始めたのも、このAbelとHenrikらの影響だそうです。AbelとHenrikはCurtの兄弟のIvar Tallroth(イーヴァル・タルロート)ともよく一緒に演奏していたそうですが、ある時Tallroth家の家に皆で集まって弾いていた際、Curtがクラリネットについてとても興味を示していました。
それを見たAbelが、「今度楽器を新しくしようと思うから、古いのあげようか?」と提案し、後日彼のクラリネットがCurtのもとへ届けられたそうです。(CDの解説文より)
そんなAbel Erikssonから教わったというポルスカ↓
私の想像「このクラリネットってB♭管かも?」
ここから、「ちょっとクラリネットを(文字通り)かじっていたことのある私の想像」の話ですが…
Curtの演奏を聞いていて、以前から思っていたことがあるのですが、それは「このクラリネットってきっとB♭管ですよね?」ということです。
クラリネットは、B♭管(ベー管)とC管(ツェー管)があるのですが、B♭管というのは「ド」の運指で音を出すと「B♭(シ♭)」の音が出るもので、C管は「ド」の運指だと「C(ド)」の音が出るものです。
日本の吹奏楽部などでは、B♭管を使っている場合が多いかと思います。私が持っているものもB♭管です(中学・高校で吹奏楽部だったので)。
(なので、クラリネットを吹いている時、私の頭の中は「指はレだけど音はドー」って感じのことをよく思っていました)
一方で、最近の(特に若めの)スウェーデンの伝統音楽系の人は「C管」で演奏している人が多い印象なんですね。他の楽器と同じ楽譜で演奏する場合は、Cの方が吹きやすいと思います。
でも、このCDでCurtの演奏している曲はどれも比較的B♭のキーでの演奏が多く、B♭はフィドルやニッケルハルパの曲としてはあまり多くない音階なので(全く無いわけではありませんが)、「これはもしかしてB♭管を使って演奏しているのでは?」と思いました。
(B♭管で普通に吹くと、ドレミ~の音階がB♭のキーになるので)
そして、曲を教えてくれたのであろう、AbelやHenrikもおそらくB♭管を使っていたのではないか?と思います。
なんとなくC管を吹いている人が多いイメージだったので、「昔の人はB♭管を吹いていたのかも」と思うとちょっと親近感が湧くなあ、と思いました。
実際のところどうなのかわかりませんが、そんな想像をしている私です。
さて、こちらは無印良品のBGMの紹介でも載せた「Skokloster(スコークロステル←お城のある所)に伝わる結婚行進曲」↓無印バージョンとはかなり違う雰囲気です。
こちらのCDは、全曲YouTubeなどで聞くことができるので、ぜひ聞いてみてください。短い曲がとてもたくさん入っていて、拍手や人の声も入っていておもしろいですよ。
(クラリネットの演奏は、こちらの3曲とあと1曲くらいだと思いますが、フィドルやニッケルハルパの演奏を中心に、歌なども入っています)
②Pontus Estling(ポントゥス・エストリング)
この方は現代のクラリネット奏者です。クラリネット類だけでなく、バグパイプ、ハーモニカ、角笛、ヘリエダールスピーパ(笛)など色々演奏されています。
私の友達(スウェーデン人)がクラリネットで伝統音楽の演奏家をしているのですが、その人の先生ということで、音源などを以前おすすめしてもらって知りました。
↑Triller(トリッレル)というバンドの演奏。こちらの曲はゴットランド地方の銀行員でありフィドル奏者であったJacob Henrik Olaus Ihre(1878-1959)の伝えた曲だそうです。ゴットランド地方らしい16分音符の多い曲でクラリネットの音色によく合っています。
ソロでの演奏はこちら↓この動画は半年前(2025年春頃)にアップロードされているので、かなり最近の動画ですね。
曲は「Polska till Wik」(ヴィークへのポルスカ)、ウップランド地方のフィドル奏者Viksta-Lasse(ヴィークスタ・ラッセ)作曲です。
YouTubeもご自身で色々投稿されていて、ショート動画もあります↓クラリネットはショート動画の縦型サイズに楽器が合っていて良いですね。ニッケルハルパは縦だと楽器が切れてしまいますが。
この曲はVästergötland(ヴェステルヨートランド地方)の曲だそうですが、確かこのPontus自身もこちらの地方出身か、この地方のレパートリーをたくさん持っている、と聞いた気がします。
そしてこちらも、つい先日のナショナルデー(2025年6月)の演奏だと思いますが、スウェーデン軍の音楽隊と一緒に、クラリネット奏者たち7名がVilhelm Gelotte(ヴィルヘルム・ファロット)のポルスカを演奏しているところだそうです。すごく楽しそうですね↓
観客席の国王たちが雨に濡れながら急いでレインコートをかぶっている姿が、さすがスウェーデンというか、ちょっとおもしろいですね。
※曲を伝えたVilhelm Gelotteについては以前のこちらの記事もどうぞ→Wilhelm Gelotte(ヴィルヘルム・ファロット)について【ウップランド地方のフィドル奏者】
ということで、もうちょっと紹介したい方がいらっしゃるので、続きは明日にしたいと思います。
クラリネットの演奏も、探してみると意外とたくさんあるんです。
あと、「今ではクラリネットで演奏されていないけど、もともとはクラリネット奏者が伝えた曲」などもありますね。
私がスウェーデンにいた時も、何かの集まりの時にはクラリネットの方もよくいらっしゃいました。他の木管楽器(サックスやフルートやオーボエなど)よりも見かける割合は高かったです。
私自身もそうなのですが、「スウェーデンの伝統音楽で多いのはフィドル」とよく言ってしまいますし実際そうなのですが、もちろんフィドル以外の楽器を演奏する方もたくさんいらっしゃるので、そういう面もご紹介していきたいなと思っています。