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ミキシングの話。「スウェーデン人演奏家の好むミキシング」と、「日本人に受け入れられやすいミキシング」ってあるのかな?聞き比べてみよう~

/ ニッケルハルパ奏者

今、CDを作っていて自分なりにミキシングをしているのですが、そこで思ったことをちょっと書いてみたいと思います。

ミキシングとは?

私も説明できるほどわかってはいませんが、ミキシングというのは、マイクで録音した音を色々調整することです。

複数の楽器や歌が入る場合はそれぞれのバランスも含めて調整すると思いますが、私の場合はソロなので、自分の音の調整をしています。

録音を始めるまでは、私は「え、別にスマホで録った時の音の感じで充分だから、ミキシングとかってそんなに要らないよね」と思っていましたが、スマホで録音した時って、おそらく色々なものが勝手に調整された状態で録音されるんですね。

なので、ちゃんとマイクで録音すると、スマホで録音した時とは違う音が聞こえてきます。

これは、自分が実際に弾いている時に聞こえてくる音とも違っていて、私が思うのは、ニッケルハルパの場合は「ぼやっとしてはっきりしない音」になるというか、共鳴弦の音がほわーんと響きすぎて、メロディの音の輪郭がはっきりせず、距離も近すぎる感じで少し聞きにくい感じになります。(かといって、距離を離して録ると本当に共鳴弦の音しか入らなくなるので、マイクには近づいて録った方が良いと思っていますが)

で、そういうのをミキシングで色々調整すると、輪郭がはっきりしたり、奥行きが少し出たりします。

「スマホの時の感じで充分だな~」と思っていたとしても、スマホの録音の感じに近づけるためには、やはりミキシングが必要なんですね。

…なんて語れるほど、私もよくわかっていませんが…。

ミキシングは、やり方によって印象が大きく変わります。同じ演奏なのに、ミキシングのちょっとしたことで大きな違いが出る、と私は感じていて、やりすぎると「やりすぎだな~」となるし、やらなさすぎても「もうちょっとやった方が良いかもな~」と思います。

最終的に自分がどういう音で聞いてもらいたいか、届けたいか、というのが大事になってくるのですが、私の場合は、ミキシングと録音を繰り返しているので、ミキシングした時に「もっとこういう音になったら良いのに」と思ったイメージを録音の際にも持つようにして、録音の時に弾きながら実際に聞こえてきた音を、ミキシングで再現できたら良いな…と思ってやっています。

あとは、好きなミュージシャンのCDを聞いて参考にしたり、聞き比べたりして、自分がどういう風にしたいのかを色々考えたりしていますが、選択肢はとてもたくさんあって、正解もたくさんあるので、毎日揺れ動いています。

揺れ動くのもちょっとおもしろいですけどね。

「おもしろい」とか言っている余裕は本当は無いはずなんですけど、でもおもしろいです。

無印良品のBGMを、演奏家自身のアルバムバージョンと聞き比べてみる

さて、そんな中、先日ご紹介した無印良品の「BGM8(STOCKHOLM)」の演奏を、それぞれの演奏家自身のアルバムに収録されている同タイトルの曲と聞き比べてみる、というのもやってみました。

同タイトルの曲と言っても、録音日時や録音環境等が違うので、全然、正確なミキシングの聞き比べにはならないと思いますが…。

(無印バージョンは、それぞれの演奏家の録音の寄集めではなく、「無印用」にまとめて録音し直されたもののみたいです。録音日時は2005年9月12日~14日。サウンドエンジニアは、この前ニッケルハルパ製作動画で紹介した、演奏家のMats Wester)

弾いている音やアレンジも各アルバムとは違ったりするのですが、そこはあまり考えずに、特にミキシングや音質面での違いを軸に聞き直してみました。

目的ースウェーデン人が好むミキシング、日本人が好むミキシング、違いはあるのか?

これは、何を知りたくてやったかというと、「スウェーデン人が意図するミキシングと、日本人にとって聞きやすい(受け入れられやすい)感じのミキシングって、何か微妙に違いがあるのかな?あったらおもしろいかも?」と思ったからです。

(演奏家のアルバムの方はスウェーデン人がミキシングをしているのに対し、無印バージョンの方は、CDのクレジットを見る限り、日本の人が(日本のお客さんのために)ミキシングをしているみたいだからです)

これは私の勝手なイメージですが…

スウェーデンの音楽家が意図するミキシングって「素朴な感じ」を意図してやっているものが多いような気がするんですね。距離が近い、楽器の生音に近い感じ。

一方で、日本人や、スウェーデンの伝統音楽にそこまで精通していない人が聞きやすいような音楽って、もうちょっと奥行きがあって、空気感が伝わってくるような、全体のバランスが整っているような印象があるんですね。聞きやすい感じ。

私自身は、もちろんスウェーデンスタイルが大好きなのですが、私の演奏活動の軸には「日本で、この楽器とこの音楽を楽しんでもらいたい、広めたい」という思いがあるので…

もしもミキシングの方向性として上記の違いがあるならば、私は「日本の人にとって聞きやすい」ものを選択しようかな、と思っているんです。

そしてそのヒントというか、参考になれば良いな、と…。なかば遊びで、聞き比べ。

実際、聞いていただくのが早いと思うので、音源をいくつか載せてみますね。

・Per Jonas Lång伝承のポルスカ

これもミキシングだけではなく色々違ってしまっている部分はあると思いますが、演奏家やアレンジの方向性が同じでも、印象が結構違いますよね。リバーブ(残響)の感じとかも。

個人での好みは色々あると思いますが、日本で流れていそうな雰囲気ってどっちかな~とか考えるとおもしろいです。

・ラーシュとマース

これも、さっきの曲と同じような方向性の違いがあるものを持ってきてしまいましたが。演奏のテンポの違いだけではなくて、全体の雰囲気としての違いを聞くとおもしろいかなと思うんです。

ここでちょっと時間がなくなってしまったので、続きは明日書きますね。


さきほども書いたのですが、私は「(この音楽をまだ知らない・知っているけどもっと知りたいと思っているような)日本の人に向けて演奏活動をしていこう」と思っているのですが、以前はその軸が曖昧で。

「スウェーデン人に批判されたくない」とか「日本の、スウェーデン至上主義・原理主義な人たちに批判されたくない」という思いが強かったんですね。批判されるのが怖かったです。

だから、「スウェーデン人に向けた内容を、ただ日本語で発信していただけ」みたいになっていた時があったのですが、それでは届けたい人たちには届かないということに気づきました。

だから、もっと「日本にいる人に伝える」ということを強く意識していきたいな~と思っていて、CDもその一環なので(商品ですし)、ミキシングに関しても、聞いてくれる人を意識してやっていきたいなと思っているんです。

こういうのを書くと、「我こそはスウェーデン音楽に精通しているぞ」みたいな人が、たぶん言うんです。

「やっぱり無印のバージョンの方は、わかってない人がやっているミキシングだよね」みたいな。人の気持ちに水を差すようなことを…。

私は、別に無印バージョンにも一切関わっていないし、人の好みはそれぞれなので好き嫌いを言うのは自由ですが、ただ批判して「通」ぶりたい人がいるのも感じているので、そういう言葉は受け取らないのです。すみません。

誰かが一生懸命作ったもの、好きなものをあえて批判する必要は無いし、私たち(スウェーデンの音楽に関わる人たち)自身が常にそれを「言われる側」であることも自覚していたいと思います。

ということで、明日ももうちょっと音源の比較を載せたいと思います!