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Eric Sahlströmの動画(解説・訳)①

/ ニッケルハルパ奏者

今日から何回かに分けて、ニッケルハルパ奏者Eric Sahlströmが出演している動画の、解説記事(訳のようなもの)を書いていきたいと思います!

動画について

まず動画について少し説明ですが…

「nyckelharpan」というタイトルの、昔の特番がありました。

これは、文字通りニッケルハルパを特集した(おそらく1回限りの)番組なのですが、特に「奏者」に焦点を当てていて、「ウップランド地方北部の奏者に、Jan Ling(ヤン・リング1934-2013)というニッケルハルパ研究者(ニッケルハルパ界ではとても有名だった人)がインタビューをしに行く」という内容です。

番組は全部で36分くらい。全編YouTubeにあげてくれている方がいらっしゃるので誰でも見られます。

(それが権利的にOKなのかどうかは私にはわかりませんが)

番組自体はとても興味深くておもしろくて、いつかブログで紹介したいとは思いつつ、でも、前半の奏者たちのなまりや発音を聞き取るのが難しくて、全体を訳すのは今の私にはまだ難しい…

そこで、ふと「一番最後のEricの出演部分だけなら訳せるかな?」と思い、やってみることにしました!

ちょうど、動画の投稿主の方がEricの出演部分だけを切り取った動画も投稿してくれているので、そちらを見ながらやっていきたいと思います。

(※動画の権利等については私はわからないので、もしかしたらいつか削除されてしまうかもしれませんし、私が勝手に「訳す」ことについても権利的にグレーゾーンなので、あくまでも「動画内容の解説・私の要約」という形の記事として書いていきたいと思います)

Eric Sahlström(1912-1986)について

動画の前に、Ericについてもご紹介します。

Eric Sahlströmはニッケルハルパ奏者です。

読み方は、「エリック・サールストルム」と私は書いてしまいますが、「エリック・サールストレム」でも、その他少し違っていても大丈夫だと思います。スウェーデン語名をカタカナで書くと曖昧で難しいですね。

さて、そんなEricですが、彼は「ニッケルハルパをやっている人なら皆さん知っているのではないか?」というくらい、非常に有名な人です。

また、たとえニッケルハルパをやっていない人でも、少なくとも1970年代~1980年代を生きたスウェーデン人なら、かなりの人が知っているのではないかと(私は)思っています。

Ericの功績はたくさんあるのですが、一言で言えばこんな感じです↓

  • 一度は廃れかけたニッケルハルパの伝統を復活させた
  • ニッケルハルパを(現代の形に近い物へ)さらに変化させた
  • 現代的なアプローチの曲をたくさん作ってたくさん弾いた
  • 多くの人にニッケルハルパの魅力を伝えた
  • 素晴らしい演奏家であり製作家でもあった

全然一言でおさまりませんでしたが、今ニッケルハルパがスウェーデンをはじめ世界で弾かれているのは、Ericのおかげと言っても良いのかもしれません。

先日動画でご紹介したEsbjörn Hogmark(ニッケルハルパ製作家)もEricの名前を出していましたが、それくらい色々な面で影響を与えた人です。

Ericは「新しい挑戦」を色々やったので(そしてのちにそれは「伝統」の一部になった)、当時は「昔のやり方しか認めたくない人たち」に叩かれたりもしたそうですが、ご本人はおそらく楽器を弾いたり作ったりするのが、ただ楽しくてやっていたのでは?と思わせるような、穏やかな感じの人です。

(「新しいことを色々やった人」と書くと、野心家みたいな感じなのかと思われるかもしれませんが、そういったガツガツした空気感はあまり感じさせない人です。ただ、楽器の腕前は本当に一流)

★Ericについては以前の記事もどうぞ→Eric Sahlströmについて

では、動画を見ていきたいと思います!

動画

(番組のここまでのあらすじ)

インタビュアーのJan Lingが奏者を何人か訪ね歩いていて、「次はEricの番だ」という所からスタートします。

ナレーション:そしてここ、ニッケルハルパの故郷でも、新しい時代がすでに始まりつつある。

Riksspelman(=国から認められた演奏家の称号)のEric Sahlströmが、勤め先のTobo(トーボー※地名)にあるTV工場から家まで車を運転している。

大きな国道わきの、曲がりくねったこの森の道を、朝と晩、行き来する。

彼は以前は父(祖先)から受け継いだ農場で生計を立てていたが、最近はTVチューナーを作る方が稼ぎが良いのだ。

演奏家としても、製作家としても、Ericは道を作り(奏法・製作法を築きあげ)、若い世代の憧れの存在(お手本)となりつつある。

家に到着。

Jan Ling:Eric、あなたは演奏家として成功し、人々はあなたのことをニッケルハルパで世界一の存在(世界チャンピオン)だと呼んでいますね。

どうしたら、そんなにニッケルハルパが上手に弾けるようになるのでしょうか?

Eric:私はとてもたくさん弾いてきた(練習してきた)からでしょう。

何かを成すには、練習が必要ですから。

Jan Ling:弾き始めたのはいつ頃からですか?

Eric:かなり小さい頃から。ニッケルハルパを弾き始めたのは7歳頃です。最初は祖父(父方の祖父)の古いニッケルハルパを弾いていました。

古いタイプの楽器だったので、こちら(1:28)と似ているタイプのものです。

Jan Ling:そして、今あなたは実に様々な場所で弾いていますね。

Eric:家で開かれるパーティー(お祝い)で弾くことが多いですね。それから、Spelmansstämma(シュペールマンス・ステンマ=演奏やダンスのお祭りイベント)など。

Jan Ling:スカンセン(Skansen=昔の農村部を再現した野外博物館)で弾くこともあるでしょう。

(※スカンセンの記事→Skansen(スカンセン、野外博物館)について

Eric:スカンセンでもたくさん弾いてきました。

Jan Ling:それから外国でも?

Eric:ええ、ロシアや、イタリアでも。

Jan Ling:イタリアでは何を弾いたのですか?

Eric:現代的な曲を弾きました。Bo Nilsson(ボー・ニルソン※スウェーデン人作曲家・作詞家)の曲などです。

上手くいったと思いますよ。(※ここがもしかしたら違うかもですが→)ただし、ニッケルハルパに合わせた弾き方にはなってしまいますけど(直訳:ニッケルハルパの駒の後ろになくてはいけませんが)、ああいう曲も、上手く弾けたと思います。

Jan Ling:(聴いた感じで)良い感じだったのでしょう?

Eric:良い感じでしたよ。ある意味で(だいたいは)ね。


まだ最初の方ですが、今回はここまでにしたいと思います。

補足・参考

最後に出てきたBo Nilsson(1937-2018)という作曲家・作詞家は、私の楽器を作った製作家さんとたまたま同名ですが全く関係ない別人でして(「Bo Nilsson」は同姓同名さんがたくさんいる名前の1つ)、

おそらく伝統音楽とはあまり関わりの無い音楽を作っていた方なのではないかな?と思います。こういう曲を作っていた人だそうです↓

雰囲気が違いますがこちらも↓

この2曲でもだいぶ毛色が違う気がしますが…

Ericがどの曲を弾いたのかはわかりませんが、これをニッケルハルパで弾こうと思うのがすごいですね。

その他、参考にしたページはこちらです↓

Jan Ling(Wikipedia)→https://sv.wikipedia.org/wiki/Jan_Ling

Bo Nilsson(Wikipedia)→https://sv.wikipedia.org/wiki/Bo_Nilsson_(tons%C3%A4ttare)


Ericの動画解説①でした。

インタビューの中で、Ericが「たくさん練習した」「練習は必要だ」と言っていたのが、個人的には少し意外でした。

というのもEricの話になると、皆さん(Ericと接したことのあるスウェーデン人たち)、「Ericは才能があって、練習しなくてもすぐに弾けたんだよ~!」みたいな話をしたがるんですね。

実際そうだったのかもしれませんが、本人は「たくさん練習している」「練習が必要」という認識でいたのかな?と思うと、少し見え方が変わってくるような気がします。

(とはいえ、実際、色々な曲をすぐに弾けてしまう方だったのだろうと思いますが)

では、また明日もお楽しみに!