数日前にも少し書いたのですが、最近、演奏関係でやりとりが上手くいかないことが1つあり、先週末から今週にかけて、それで疲れてしまい、ちょっと落ち込んでいました。
と言っても、今は少し落ち着いてきまして、せっかくなので、自分自身の反省もかねて、いくつかブログに書いておこうと思いました!
個人的な内容は書きませんが、一般的に「演奏家と、イベントやコンサート等の企画の担当さんとの間で、やりとりが上手くいかない原因」と「そういう時にどうしたら良いのか」について、私の経験した範囲内で書いていきます。
今、もしもやり取りが上手くいかなくて、落ち込んでいる方がいらっしゃいましたら、「自分だけじゃないんだ」と思っていただけたら嬉しいです!
依頼者と依頼される側とでは、見えているものが全然違う(情報共有の大切さ)
今回は、何かのイベント(コンサート・講座等→今回は全部一緒に「イベント」と書きます)に際し、「依頼する側」と、「依頼される側(=演奏家)」がいる、と仮定して書いていきます。
依頼する側というのは、私の普段で言えば、多いのは公共の施設(公民館や図書館など)の担当の方や、そういう仲介のお仕事をしている方、あとは企業の担当の方です。
他にも、イベントの担当の方とか、色々あると思います。
依頼者側ー全体像を理解している
さて、依頼者側というのは、そのイベントの「全体像」がわかっていることが多いと思います。
たとえば、「毎年やっているイベント」のうちの1つだぞ、とか。
「毎月やっている○○という講座」の一環だぞ、とか。
そういう場合、「今までのやり方」とか「毎年恒例のやり方」とか、そういうものがあると思うんです。
(また、そういうイベントって、お客さん側もわりとその文化を把握されていたりもしますね)
依頼される側ー何も知らない
一方で、依頼される側というのは、そのイベントや大枠については、最初は「何も知らない」状態からのスタートなんですね。
「毎年やっているものだ」ということも、「それが普段どんな風に行われているものか」ということも。説明されないと、何も知らないままです。
また、依頼される側の演奏家というのは、たいてい、イベントそのもの自体の枠組みよりも、無意識に「お客さんの方を見ている」場合が圧倒的に多いと思います。
お客さんに、どう楽しんでもらうか。お客さんに、どう満足してもらうか。
それを考えるのが、演奏家やパフォーマンスをする人の「思考の癖」というか、「無意識にそっちを向いてしまうもの」みたいな感じなので、イベント自体の方向性や決まりごとなどは、依頼者側から提示されないと、なかなか気が回らない、意識が向かないものだと思います。
両者間のすり合わせが重要
だからこそ、「依頼者側と依頼される側の、両者間の情報のすり合わせ」がとても大事だと感じています。
特に「最初の段階で」です。
私の場合、最初にご依頼の連絡をいただいた際に、そこに「企画の主旨」や「毎年の会場の様子」等があらかじめ明記されていたり、写真が添付されていたり。
もしくは、詳細を話し合うための機会を早い段階で設けていただくなど、最初の段階で「企画の主旨・お客さまの年齢層・席数や集客予想・すでに開催したイベント(他の楽器の演奏会など)での開催時の様子(写真・文)・お客さまの参加費」などをすり合わせる機会を、「先方から」作っていただくことがほとんどです。
もし無くても、私の方から、「ご挨拶したい」と、打ち合わせの機会を作れるようお願いします。
なぜなら、私自身にはそのイベントのことは全くわからないから、ですね。
わからない人というのは、「何がわかっていないか」をわかっていないので…まあ、「わからない」だらけなんです。
なので、それを見越して、先方があらかじめ「枠組み」を提示してくださることがほとんどなのです。
そして、最初に枠組みを提示していただければ、その範囲内で、私に求められている役割を把握して、色々と工夫することができるし、セオリー通りの方が良ければ、そのセオリーの範囲内で役割をまっとうすることができます。
上手くいかない時ーすり合わせ/情報共有ができていない(焦らされる等)
上手くいかない時(つまり今回)というのは、おそらくその「最初の段階でのすり合わせ(情報共有)」ができていないことに原因があるんですね。
また、今回の私で言えば、「すり合わせがないまま、とにかく『締切が迫っているから』と焦らされ、私もそれにのってしまい、出演だけ決定して、後からどんどんすれ違いが広がっている」という状態でした。
普段、なかなかこんな風に焦らされることって(私の場合は)無くて。
開催の半年前などに余裕を持ってお話をいただくことが多いので、今回、お話をいただいてから2日後までに、プロフィールを出さなきゃいけないと言われて、焦ってしまいました。
焦りは良くないですね。
たとえ先方の都合であったとしても、焦って決めるのは良くないので、しっかり立ち止まって考えた方が良いなと思っていますし(それがなかなか難しいのですが)、その過程で、先方がどれだけ忙しそうであっても、確認してから歩き始めないと、後からどんどん誤解とすれ違いが広がってしまうんだなと思いました。
情報共有していないとこうなる
さて、では情報共有していないと具体的にどうなるのか、色々なパターンがあると思いますが、私が感じたことや思いつくことを書いてみたいと思います。
できないことを提案してお互いに険悪になる
これは今回の私なのですが、全体像を全く把握しないまま・枠組みがわからないままだと、依頼される側が、「そのイベントにおいて自分に何が求められているのか」が、全くわからないまま走りだす(準備を始める)ことになってしまいます。
そうすると、依頼される側というのは、「楽しんでもらいたい」という気持ちを強く持っているので、「何か工夫をしよう」とか、「今回の企画にふさわしいスペシャルなことをしよう」とか、思ってしまう。(少なくとも私は思う)
でもそれが、依頼する側としては「意図しないことを言ってくる」「余計なことはしなくて良い」「かえって面倒を増やされた」となってしまったりするんですね。
(「依頼される側が、依頼者側の意図しない方向に暴走」してしまったり、「依頼される側が良かれと思って提案したことが、かえって依頼者側からすると都合の悪いもの」だったり)
特に大きいイベントで何事にも決裁が必要だったり、融通を効かせるのが難しい会場の場合、そうなる可能性が高いのかな、と(小さいイベントの場合は大丈夫かもしれません)。
そうすると、余計なやり取りが増えて、お互いに消耗するし、相手への「不信感」がつのるし、険悪になってしまうんです。
モチベーションの低下
しかも、依頼された側は、枠組みを知らないまま、ただ「良かれ」と思って色々提案しているから、提案がことごとくNGとなると、「???」となるわけです。
なぜなら、枠組みを知らないから。「依頼者側の持っているルールを、把握していないから」です。
で、NGになった時にそのルールの「一部だけ」説明されても、全体像を把握していないから、なんでそうなるのかがよくわからない。
よくわからないけど、とりあえずNGということだから、もう余計なことはしないようにしよう……と。
そういうことが続くと、最悪の事態としては、だんだんとイベントに対するモチベーションが失われて行ったり、「無難に済まそう」とか、「他のコンサートの使いまわしでいいや」となってしまうかもしれません(私は別にそうなっていませんが、そうなることもよくあると思います)。
険悪な空気になって、嫌なことを言われることもあるけど、挑発には乗らない
険悪な空気になった時に、残念ながら嫌なことを言われることもあると思います。
私の場合は、すでに相手に不信感がかなり募っている状態で、言われたことに対して「まあ、わかりました」と(おそらく不満げな声だったと思いますが…)言ったら、電話で「もう公演難しいですか?(=やめますか?できないんでしょ?)」と3回くらい言われました。
なんだか、脅し文句みたいだな、と思ってしまいました。3回も言うなんて、やめてほしいのかな?と。
そのつもりはないのかもしれませんが…。
そういう言い方をするのはとてももったいないし、でも、私以外の人にもそういう言い方をしているのかもしれないな~、と感じました。
ちょっと揉めたらすぐに「じゃあやめようか」となるのは、子どものケンカみたいです。
昔はそういうことを言われたら演奏家が泣き寝入するしかなかったのかもしれませんが、今はもうそういう時代ではありませんし、発言はネットにばらまかれてしまいます。
挑発には乗らない方が良いです。
「私も同じことを誰かにやっているかもしれない。気をつけよう…」とあらためて思いました。
逆のパターンもある
あと、上記の現象は逆パターンもあるな~と思っていて。
イベント自体が初開催で、「企画者側がイベント開催についてよくわかっていない」という場合、依頼者が、依頼される側に「意図せず無茶ぶりしてしまう」ということもありますね。
そういう場合も、依頼される側は「え、無理なんだけど…なんでそんな無理を言われるんだろう」と思ってしまうし、依頼する側も「良かれ」と思って提案しただけだから、そこですれ違いが起きて、なんか気まずくなる、みたいなことは全然あります。
すれ違いが起きるのはしょうがないから、その先を考える
相手への不信感って、一度ついてしまうとなかなか拭うのが難しかったりするのですが、そこをどう付き合っていくのかは、その人たち(自分たち)次第ですよね。
時間をかけて、だんだんとお互いのやり取りの仕方がわかってくると、無理なく適度に付き合えるようになると思うのですが、その関係になるまでは少し辛抱が必要です。
(「相手はこういうやり方なんだな」というのがわかれば、お互いにそこまでストレスを感じずに付き合えるような気がします)
最終的には、一度不信感を抱いた相手でも、「どっちが悪いか」みたいなことよりは、「その先の関係性をどうしたいか」ということですよね。
すれ違いが起きてしまったらもうそれはしょうがないから、「今後どういうやり取りの仕方をすれば、その人と上手く付き合っていけるのか」を、考えると良いのかなと思います。
どういう訊き方をすれば良いか、とか。
(具体的に教えて欲しい場合は、ここまで具体的に訊いた方が良いな、とか)
もしくは、外堀を埋めてしまった方が良いのかな、とか。
私の場合、結構前(演奏活動を始めてすぐぐらい)にそれで心がヤマアラシ状態になり(誰が特定の悪い人がいたわではなく、なんとなく色々傷ついてしまった)、「誰も信じるな」みたいな状態になりましたが、そこから徐々に信頼できる方たちと付き合っていく中で、「そこまで人間不信にならなくても良いんだな」と思えるようになりました。
それで色々また頑張るようになって、今回また久しぶりに、びっくりする事故に遭ったみたいな気分ですが、
最終的には、自分次第です。
そして、そういう経験(うまくいかない経験)を積み重ねていけば、「このご依頼はこっち系の方向性だな」とか、そういう「やり取りのパターン」とか「相手の法則」みたいなものが数種類自分の中にできあがっていって、多少「??」と思うことがあっても、上手く切り抜けられるようになる気がするんですね。
つまり、経験値です。
経験値は、経験を積まないと見につきませんから、「何事も挑戦なのかな」と最終的には思うわけです。
一方で、「演奏依頼をよそおった詐欺」というのも世の中には普通にあるそうなので(チケットノルマを後から課して、それでお金を巻き上げるらしい)、詐欺だと思ったらその時点で逃げた方が良いと思います。今回の私のケースはさすがに詐欺ではないと思いますが。
一度すれ違いが起きてしまったとしても、その先のことを考えて行動していけば大丈夫だと思います。
それで何かが全部崩壊しても、またイチから作り直していけば大丈夫なので。
そこから先、自分がどう考えてどう行動するかで、すれ違いが自分の人生にもたらす意味はかなり変わると思っています。
※ただし、焦らされるものは注意した方が良い
ただ、「焦らされる」のだけは本当に気をつけた方が良いです。
これも詐欺と同じで、焦らされると、まともな判断ができなくなるので。
焦りや催促に乗らず、自分のペースで決めていった方が良いです。それでもしもチャンスを逃したと思うようなことがあっても、それは「たまたまタイミングが合わなかっただけ」だと思います。
私は今回、それが自分の中での一番の反省点です。
やり取りが上手くいかない原因とその対処法について、私なりに書いてみました。
ちょうど今夜公開されるインタビュー動画と記事(公開されたらお知らせします)でも、日本でニッケルハルパを演奏することについて、本田さんとちょっとディープな話をしているので、あわせて何か参考にしていただけたら良いかなと思います。
演奏するうえで、ネガティブな経験をされている方は、どの音楽ジャンルでも多いと思いますし、それとは別に、たずさわる人口が少ない音楽や楽器というのは、どうしても周りの人にとって「よくわからないもの」だったり、「イメージだけで語られてしまう」ものだったりすると思うので、
その中にいる人どうしで、思っていることを言語化できると、少し違う側面も発信していけるのかな、と感じています。
そのうえで、楽器や音楽のおもしろさを、あらためてお伝えしていければと思っています!
では、参考にしていただけたら嬉しいです。
