真似しているつもりが、全然できていなかったと気付く
スウェーデンの民族音楽では、曲を覚える時に楽譜は使いません。
演奏の仕方やリズムの取り方、弓の動かし方など、楽譜に書ききれない情報がたくさんあるので、楽譜から覚えるよりも誰かから直接習ったり、動画や音源を真似して曲を覚えることが一般的です。
…というのを踏まえたうえでの話ですが、私は最近になって、その曲を教えてくれた人の弾き方を自分がちゃんと見ることができていないし、聴けてもいない、ということに気付きました。
大きな進歩でした。
漠然と「自分はダメだ」と思い込むのはあまり良くありませんが、具体的に、自分がやろうとしていることと実際やっていることの間で、何がどう違うのか、どうダメなのか、もっとどこをどうすればいいのかがわかるということは、成長だと思います。
実際私はどうなっていたかというと、こう弾いた方がいい、こう弾くべきだという思い込みに基づいて弾いてしまっていました。
「自分が思い込む法則で一貫して曲を弾こうとしていた」のが自分の悪い癖であり、また、その自分が思い込んでいた法則自体も、少しずつ間違っていた、ということです。
以下、気が付いたことを書いていきますが、少しマニアックな話になりわかりにくいかもしれませんが、「ふーん」と思いながら、軽くお読みください。
一定のリズム/その場その場の瞬発力、両方必要
習った時の動画や音源を見返したり聴き返していて少しわかったのは、曲を弾く際には、
①1曲の中で大枠として常に捉えて表すべきリズム(一定、不変)
と、その反対に
②細かくその場その場の瞬発力で表現する音(変化)
との、両方への配慮が必要だということです。
反対に、と書いたのは、これらは一見反対のことのように思えるな、と思ったからなのですが。
私は①と②のどちらか「だけ」を意識していることが多く、一方を意識している時は一方を意識していない、もしくは両方意識できていない、という状態でした。
①だけを意識していると(例えばポルスカのリズムなど)、1音1音への配慮が薄くなり、音や音の間が粗くなります。曲としても細かい変化が無く、冗長になります。
②だけを意識していると、情緒的には弾けても、ダンス曲としてのリズム感がなくなります。楽器は弾けているけどスウェーデンの民族音楽感がない、という状態に近くなります。
一定のリズムに乗りながらも、その場その場で瞬発的に音を出す意識を持つことが必要、ということです。
メロディの流れだけで弾かない
また、①と②以外にも必要なことがあります。それは、
③メロディの流れだけで弾かない、ということです。
(①と②にも関わってきますが)
例えば「ドレミ」というメロディがあったとして、「ドレミ」と横の流れのみで弾くのではなく、必ず「ド」「レ」「ミ」と弾くということです。
音を切るという意味ではなく、「ド」の1音の中で弓の圧力を変えたり(強→弱)、次の「レ」に向けて音は繋げているけれど「レ」でまた新たに弾きなおす、というようなイメージでしょうか。新たな瞬発力を常に感じ続ける(しかもそれは音によって変化する)、という感じです。
これもやはり、メロディで弾いてしまうと、スウェーデンの民族音楽感のない曲になってしまいます。
また、その「ド」が1拍目なのか2拍目なのか(そのメロディの中での役割)によって、音自体のメロディの中での強弱も変わっていきます。これは例えばポルスカやワルツであれば、拍ごとの役割の違いがより明確なので、より顕著だと思います。
そうして1音1音を積み重ねていくことで、地に足がついた演奏になるのと同時に、それらが積み重なることによってメロディとしての一貫性と立体感が引き出される、ように感じています。一つ一つを区切って意識することによって一貫性が出てくる、というのは一見逆説的でおもしろいと思います。
(「メロディの流れだけで弾かない」という言い方だとわかりにくいかもしれませんが、メロディの流れで音をひとかたまりのフレーズとしてのみ弾くのではなく、今出している音に意識を集中する、という意味です。リズムで弾く、とも言えます。もちろん、メロディの流れを意識することも必要ですが、これはできていることが多いので)
まとめ
まとめると、このようになります。
・曲の種類ごとにある一定のリズムがあり、さらにその上に乗っている音は瞬間瞬間で変化している(音ごとの変化+音自体の変化)。リズムの一定性と、瞬間的に変化している音、その両方を表現する必要がある。
(必ずしも音の位置とリズムの波は一致していないが、弾く時には両方表現しうる)
・メロディを横の流れだけで捉えるのではなく、音ごと、もしくは拍ごとなどの、縦割りをより意識する。
①のリズムの話は、割と理詰めにスウェーデンの民族音楽の曲ごとのリズムを「頭で知る」ことから始まりますし(その後ダンスの動画を見たり音楽を聴いたりして実感できるとより良いですが)、②の音ごとの瞬間的な変化は、動画で奏者の弓の動き(「その音」を弾くのに使っている弓の長さ、速さ)を注意深く1音1音見て真似ていくのが良いと思います。
また、③メロディの流れだけで捉えないということに関しては、実際に弾きながら弓の動きと関連させて練習していくしかないかなと思います。これは①と②とあわせて意識することで、よりダイレクトに曲に関わっていけると思います。
マニアックな話で申し訳ありません。こういう話になると、いつも自分のために書いたもののようになってしまうのが毎回の反省点です。
が、何かの参考になれば幸いです。