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右手と左手を分けて練習する

/ ニッケルハルパ奏者

昨日、練習方法(目的に応じて練習を変える)について書きました。

目的によって練習方法(内容)を変える、練習方法にバリエーションを持たせる

その記事の中でも、例として少しふれましたが、「右手と左手を分けて練習する」ことについて今回は書きたいと思います。

シンプルにとらえる

ニッケルハルパを弾いている時、右手と左手は共同作業で音楽をつくっています。

その時、右手と左手のやっていることが自分の頭の中でごちゃごちゃになっていると、実際に両手もごちゃごちゃに動いてしまい、うまく弾くことができません。

右手と左手を分けて練習することで、それぞれの手がやりたいこと、やるべきことが意識として明確になり、「今の自分の右手/左手がどういう状態になっているのか(どういう動きになっているのか)」もよくわかるようになります。

また、右手と左手を分けて練習すると、複雑に見える曲も「それぞれの手の動きは意外とシンプルかも?」ということに気がつきます。

それぞれに動きの方向性や手の使い方が違うので、一見複雑に思えますが、片方ずつシンプルにとらえることで弾きやすくなります。

やり方

右手と左手を分けて練習するというのは、文字通り、「右手だけ、左手だけで曲を弾いてみる」ということです。

今練習している曲を弾いているつもりで、片手だけを使います。

右手で練習する際には、弓で弦を弾くだけ。

移弦はしますが、同じ弦の音は開放弦の音のままで弾きます。ずっとラの音とか、ドの音とか。

左手で練習する際には、キーを動かすだけ。

弓を使わないので、音は出ません。キーのタンジェントが弦に当たる音がするくらいです。

これはやってみると、意外と難しいと思うかもしれません。

普段「なんとなく」の流れで弾いていたメロディも、片手だけで弾くと、「そうか、ここはこういう風に弾いているのか」という新しい発見があるかもしれません。

メリット

これをやることによってどんなメリットがあるのか、具体的に考えてみました。

まずは右手のメリット2つです。

メリット①リズムが明確になる

すでに覚えている曲は、「何気なく」両手で弾いていることが多いと思います。

それをあえて右手だけで、しかも開放弦の音だけで弾くと、いやでも「曲のリズム」に意識がいくようになります。

ポルスカなら「1・2・3(そして特に1拍目と3拍目)」、ショッティスなら「1・2(1と2と)」というように。他の曲でも同じです。

音に変化が無い分、ボーイングが出す雰囲気が明確になるので、自分が普段「なんとなく」弾いていた部分はすごく「なんとなく」な音の出し方やリズムのとり方になっているのが、わかります。

そこで、リズムを意識して弾いてみると、かなり音楽の雰囲気が変わります。自分の意図も明確に音になります。

メリット②細かい音の移り変わり、移弦がしやすくなる

両手で何気なく弾いている時には、細かい音の移り変わりや移弦が「あいまい」なまま、おそらくテンポでごまかすような弾き方になってしまう時が多いと思います。

特に、左手が忙しい曲の場合、右手にまで意識がいかず、左手の忙しさにつられて右手もあたふたしたまま終了してしまいがちです。

左手を取り除くことで、右手のやることがシンプルに・明確になるので、細かい音の移り変わりや難しい移弦もシンプルにとらえることができるようになります。

複雑なことをやろうとすると、余計に頭がこんがらがってしまいますが、「右手はこういう風に動かせばよいのだな」と単純にとらえることができるだけで、一気に弾きやすくなります。

そこで「弾ける感覚」をつかむことで、いざ両手で練習した時にも、片手で練習する前よりもかなり弾けるようになっていると思います。

次に、左手のメリット1つです。

メリット③音のタイミング

音のタイミングというと、どうしても音を出す方の「弓」のタイミングを意識しがちだと思いますが、

左手の指のタイミングをはかる、というのも非常に重要な要素です。

私の場合、よくあるのは、速い曲や難しいフレーズで気持ちが先走ってしまい、「左手の指だけ次の音に早くいきすぎてしまう」ことです。

また、気持ちが先走ることで、「前の音を早めに切りすぎてしまう」というのもあります。そうすると、響きが消えてしまいます。

音を出しているのは右手の弓なのですが、左手の指のタイミングも、音色に大きく関係しています。

左手だけで練習することで、左手の指の感覚やタイミングにも気を配れるようになります。

「タイミングぴったりに動かしているつもりだったけど、結構早かったかも」とか、「自分が思っているタイミングよりもずれて動いている…」ということに気がつくだけで、両手で弾いた時の音が変わってきます。

そして次に、右手も左手も、両方のメリットです。

メリット④手の力加減に意識的になる

片手だけで弾くと、両手で同時に弾く場合よりも、「それぞれの手の力加減」に意識的になることができます。

たとえば、右手の力加減を状況に応じてどう変化させたらよいかを知ったり、左手の力はこんなに必要ないとわかったり。

力加減に関しては、右手も左手もそれぞれ意識的になればなるほど、音が変わっていきます。

「こういう力加減だとこういう音になる(なるだろう)」とか、「この力加減だとちょっと手が痛くなるな」とか、自分の感覚に素直になって、感じたことをまた次の練習(演奏)に活かしていきます。

私が練習時に意識していること

私自身は以下のような点を意識しています。(その時によって変わりますが)

まず右手です。

  • 曲のリズムとボーイングの雰囲気
  • 音色、響き(自分が欲しい響きになっているか)
  • 弓の圧力やスピード(自分が欲しいもの/しっくりくるものかどうか)
  • 腕・肩の感じ

また、左手で弾く時には、特に以下のことを意識しています。

  • 開放弦や、指の動きが必要ないような音も、感じられているか(→昨日のブログに書いた内容です)
  • 手の力は入っていないか
  • タイミングはどうか
  • 不自然な動きになっている部分はないか
  • 腕・肩の感じ

これらのことを意識しているのですが、おそらく何も意識しなくても、「ただ単に片手で何回か弾いてみる」練習をするだけでも結構良くなるのではないかと思っています。

それくらい、「できていないところ」や「思っていたのと違うことをやっている」ところが明確に出てくる練習ですし、こういった点に気がつけることが上達の第一歩だと思います。

片手でできる→両手でやる

実際曲を弾く時には、右手と左手のコンビネーションが必要になるので、両手の練習というのも必要になってくると思います。

両手で弾く際には、片手ずつばらばらで考えるよりも、「両手で一つの音を出している」という認識で、同じ目的に向かって両方の手が協力してはたらくと良いなと思います。

しかしその場合も、基本はそれぞれの手が、それぞれの役割(動き)を果たしていることが大切です。

片手ずつでうまくできないものを、いきなり両手でやろうとしても、うまくいきません。

まずは片手ずつ、自分の意図する動きができるようになることで、両手で合わせた時にも、お互いがお互いの動きを邪魔することなく演奏することができるようになります。


以上、「右手と左手を分けて練習する」について書きました。

この練習方法は私が考えたわけではなく、身体の使い方のレッスン(他の楽器を演奏する人達とのグループレッスン)で教わったものです。

グループレッスンなので、他の楽器の人がこの練習法を5~10分くらい試している様子を見ていたのですが、どの楽器の人にも、とても効果がある練習方法だと思いました。

ほんのちょっと(数分でも)やってみるだけでも良いので、ぜひ試してみてください。

お読みいただき、ありがとうございました。