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Anna Lindblad & Anders Löfberg(Boda, 2020)コンサートの和訳②

/ ニッケルハルパ奏者

Anna LindbladとAnders Löfbergのコンサートの和訳②です。

①はこちら→Anna Lindblad & Anders Löfberg(Boda, 2020)コンサートの和訳①

動画

前回の続きから(19:31~)の再生です。

Anders:次に演奏するのはSlängpolska(スレングポルスカ)で、Småland(スモーランド地方)のVirserum(ヴィッシェルム)で伝わる曲です。

Virserumは私が生まれたところで、幼少期を過ごしたところです。

郊外にある小さな村です。

この曲を伝えた演奏家もきっとそうだったのだろうと思います。Jonas Börjesson(ヨーナス・ブリエソン)という人です。

では、彼の伝えたBrudpolska(結婚式のポルスカ)を演奏します。

私の好きな曲の1つです。

※VirserumーWikipediaのページ(スウェーデン語)

⑥(20:04~)Brudpolska efter Jonas Börjesson, från Virserum(ヴィッシェルムの、ヨーナス・ブリエソン伝承の結婚式のポルスカ), Småland

(23:09~)

Anna:とても美しい曲です。

では、ここからは私たちの作った曲も演奏したいと思います。ここまでの曲は、すべて伝統曲でしたので。

次の曲は、私がたしか6~7年前に書いた曲です。

この曲を弾いた時、私はボート(※両親のボート?)に座って、家の近くの湖を(そのボートで)巡っていた時のことを思い浮かべていました。

(※「両親の」という部分と「思い浮かべていた」の部分の聴き取りが少し曖昧ですが)

ですので曲名ももちろん、「Vals till Båten Bettan(ボートのベッタンへのワルツ)」という名前になりました。

(※Bettanというのがボートの名前なのだと思います)

⑦(23:48~)”Vals till Båten Bettan” av Anna Lindblad(「ボートのベッタンへのワルツ」アンナ・リンドブラード作曲)

※この曲はこちらのYouTubeのページでも聴けます。AnnaとAndersとRoger(Tallroth)が3人で弾いているバージョンです→playingwithmusictv「Anna LindbladーVals Till Båten Bettan」

⑧(27:23~)Polska efter Johan Albert Pettersson, från Ornunga(オーヌンガのヨーワン・アルベルト・ペッテション伝承のポルスカ), Västergötland

※Johan Albert Petterssonについて参考:Folkwikiのページ

(32:13~)

Anders:では次は2本のフィドルでの演奏になります。

(次に使うフィドルは)チューニングを少し変えています。

次の曲は私が作った曲で、Walter(ヴァルテル)というに向けて作ったものです。

曲は「Walter’s Dream(ウォルターズ・ドリーム、ヴァルテルの夢)」。

Walterの名前は、Walter Bengtson(ヴァルテル・ベングトソン)です。

彼は私の家族の友人で、芸術家でした。

本物の芸術家の魂を持っているような人でした。自身のあらゆる面や、色において。

彼は、必ずしもいつも同意を得ることが簡単な人では無かったかもしれませんが(※少し頑固だった、自分の考えがある人だった)、私が成長する過程で、彼と接していた時期には、とても良い思い出をたくさんもらいました。

彼はもう生きてはいません。

彼が亡くなった時、私の家族はフィドルを譲り受けました。

彼自身が持っていたフィドルです。

そのフィドルは少し変わっていました。

楽器自体はそんなに良い状態ではありませんでした。

彼は伝統音楽を愛していて、フィドルも少し弾いていたのですが、板に美しいバラの絵を描いたりとか、ペグボックスに金属の何かをつけて、2本の「下の弦」(※演奏弦の下に張る弦=共鳴弦だと思います)をつけたりしていました。

(※共鳴弦つきのフィドルはSmålandの演奏家が演奏していたります)

ちょっとおもしろい楽器でした。

私はある日、そのフィドルで遊んでみて、チューニングも変えました。

このフィドルと同じ、ADADにしてみたんです。

そして、私は彼の曲を作りました。

Halmstad(ハルムスタッド※Halland(ハランド地方)の地名)出身の芸術家、Walter Bengtsson、彼の栄誉をたたえて。

では「Walter’s Dream」です。

また、私はこうも考えているんです。

彼はきっと「フィドルをもう少し上手く弾けたら良いな…」と夢見ていただろうと思うんです。

そんな彼が、もしもこの曲を聴いたら、おそらく「この曲を弾きたい」と思ってくれたのではないかな、とね。

(※Walterはスウェーデン語読みだとヴァルテル、英語読みだとウォルターになるみたいですが、この曲名はあえて英語でつけているのだと思います)

※Walter Bengtssonについて(彼自身と作品の写真など)→Wikipedia(スウェーデン語)Halmstadの紹介ページ(スウェーデン語)

Walter自身の写真を見ると、曲の雰囲気がより伝わってくるように思いました。芸術家と聞いて、私はてっきり職人風の気難しい芸術家を想像していたのですが…写真で見ると、花柄の帽子をかぶったおじさんで、私が想像していたよりもファンタジックで自由そうな人(遊園地にいそう)という感じです。この曲にもとてもよく合っていると思いました。

⑨(34:20~)”Walter’s Dream” av Anders Löfberg(「ウォルターズ・ドリーム(ヴァルテルの夢)」アンダーシュ・ルーフベリィ作曲)

(37:35~)

Anna:楽しい夢ですね。Walterが夢見ていたのは。

Anders:Walterのことでよく覚えているのが、さきほどもお話しした通り、彼は大きな野心と進行中のアイディアを常に持っている人でした。

Anna:ちょうどこの曲のようにね。常にちょっと変わっている(トリッキーな/複雑な)ような。

Anders:その通りです。

このコンサートのプログラムについて考えていた時、どの曲にしようか、このチューニング(ADAD)で演奏できる曲は他にあるだろうか?と考えたんです。

このチューニングの曲はそんなにたくさんはありませんから。

でも1曲思いつきました。

それが今から演奏するSlängpolska(スレングポルスカ)です。

Östergötland(ウステルヨートランド)のYdre(イードレ)で伝わる曲です。

この曲は、私の父(Bengt Löfberg(ベングト・ルーフベリィ)とPelle Björnlert(ペッレ・ビョーンレート)による演奏が録音されてCDとなっています。「En roliger dans(楽しいダンス)」というCDです。

曲の方は「Nöcklaharpa(ヌックラハルパ)」と呼ばれています。何らかの理由で。

このチューニングで演奏される曲です。

このCDは聴くとおもしろいんです。ひと昔前に録音されたものなので、当時の彼らの演奏スタイルとか、どういう風に演奏していたのかを聴くことができます。

彼らは短い曲を演奏していました。

それらを、かなり長い時間弾くのです。おもしろくなるように、そしてかなりまっすぐ(ストレート)に。

また、彼(※Bengt Löfbergのこと?)がインド音楽を演奏した時のことから、「Smålands ragor(スモーランドのラーガ※ラーガはインドの楽器)」という名前も生まれました。

(※「インドの音楽を演奏した」というのが、実際に演奏していたのかどうか調べきれなくてよくわからなかったのですが)

録音を聴くと、フェードインしているのを聴くことができます。今ではあまりやりませんよね、フェードインしながら曲が始まるという。

そして長い時間演奏して、最後はフェードアウトしていきます。

ですので、永遠に終わらない物語(ネバ―エンディングストーリー)という感じがするんです。

ごつごつしていて、かたい(鋭い)演奏で、素晴らしいです。

現在ではそういう風に演奏されることはほとんどありませんが、そんな風に演奏するのもおもしろいですよね。

※Bengt LöfbergーWikipediaのページ(スウェーデン語)

⑩(39:37~)”Nöcklaharpa”(ヌックラハルパ), Slängpolska från Ydre, Östergötland

(続きは明日)


MCが短い分和訳自体はどんどん進んでしまうのですが、曲1つ1つがとても良い、素敵な演奏ですね。

AndersがBengt Löfberg(ベングト・ルーフベリィ)の息子さんだというのを、このコンサートを見て初めて知りました。

Bengt LöfbergはSmåland(スモーランド地方)の演奏家です。Andersはニッケルハルパ奏者のEmilia Amperとも一緒に弾いていたりしますが、そのEmilia自身もSmålandの人で、Bengt Löfbergの伝えた曲などをアルバムでも(ニッケルハルパで)弾いていたりします。

この辺の地域の演奏家のことは全然わからないので、少しずつわかるのがおもしろいです。

明日でこのコンサートの和訳は終わりですが、明日の分もお楽しみに。

お読みいただき、ありがとうございました。