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無印良品BGM8に収録されている曲を解説⑤

/ ニッケルハルパ奏者

今回も、無印良品BGM8に収録されている曲を解説していきます。

これまでの記事↓

無印良品BGM8に収録されている曲を解説①

無印良品BGM8に収録されている曲を解説②

無印良品BGM8に収録されている曲を解説③

無印良品BGM8に収録されている曲を解説④

ちょっと今日は時間が無かったので、8曲目だけですが、楽しんでいただける内容になっているのではないかと思います。

解説

8.Brudmarsch från Skokloster(スコークロステルに伝わる結婚行進曲)

演奏家

演奏は、1・4曲目と同じくOlov Johansson(オーロヴ・ヨワンソン、コントラバスハルパ)とAnders Bromander(アンダーシュ・ブロマンデル、ピアノ)です。

コントラバスハルパー昔のニッケルハルパ

この曲でOlovの演奏している楽器ですが、コントラバスハルパ(Kontrabasharpa)という楽器になっています。

これは「昔のニッケルハルパ」です。昔はこちらが「ニッケルハルパ」と呼ばれていましたが、のちにその他のモデルが生まれたことで、新しいモデルと区別するために「コントラバスハルパ」という名前がつけられました。

コントラバスというと、あの大きい楽器のコントラバスが思い浮かぶかもしれませんが、そちらに由来しているのではなく、「コントラ(=対になっている)+バス(=ベース→ドローン弦)」ということで、「ドローン弦の両側に、メロディ弦が対に張られている楽器」という意味があります。

ドローンというのは、機械のことではなくて、バグパイプのような感じで、「メロディとは別の常に鳴っている音(ずっと音程が変わらない音)」のことで、この音を出すために張られている弦が、「ドローン弦」です。

メロディ弦2本の中間(真ん中)にこのドローン弦が張られていることで、「どちらのメロディ弦を演奏していても、ドローンの音を鳴らし続けることができる」そうです。

(私はコントラバスハルパについては、あまり弾いたことが無くて全然詳しくないので…もしも間違ったことを書いていたらすみません)

音色が、普通のニッケルハルパよりも少し違うのが感じられますでしょうか。良い意味で少しザラザラ感があるというか、古さがあります。

大きさとしては、現代のニッケルハルパよりも軽くて、体感的には少し小ぶり(丸みがあって幅が広くない)な感じです。

同じ2人(OlovとAnders)による違う曲の演奏で、コントラバスハルパが使われています↓

見た目もちょっと違いますよね。

Skoklosterー古城

曲が伝わっている「Skokloster」(スコークロステル)というのは、スウェーデンのウップランド地方の南部にある地名です。

ウップランド地方はニッケルハルパの伝承地であり、Olovの出身地です。Olovはウップランド地方の曲をレパートリーの中心としています。こちら、緑色のところがウップランド地方です↓すぐ下に首都のストックホルムがあります。

ウップランド地方をとり出すと、Skoklosterは、水色のところです↓首都ストックホルムに近いエリアかなと思います。

Skoklosterには「Skokloster slott」(=Skokloster castle)というお城があるそうです。

メーラレン湖のほとりにある、バロックの古城だそうです。1654~1676年に建てられました。公式YouTubeの動画がこちらです↓

スウェーデンのお城って、シンデレラ城みたいな塔があって装飾の多い感じではなくて、もっと「建物」っぽい感じで、シンプルで四角いんですよね。色も、ものによって色々ありますが、このお城は白いです。

また、こちらの動画は秋休み(=11月初め頃に、「アルヘルゴナ」という「祖先や故人を追悼する」祝日があるのですが(私のイメージでは「お盆」のような感じ)、その前後くらいの1週間まるまる学校などが休みになるのです)に向けて、お城で開催されたおばけ展示の宣伝動画だそうです↓サムネイルが北欧のホラーコメディっぽくて良いです。

もしかしたらハリーポッター風なのかも。

日本のお城と同じような感じで、城内部の見学、保存されている芸術作品の展示やミュージアム、カフェ、周りの庭園などの散策、季節にあわせた催し物などが開催されているようです。

お城のHPの英語版のリンクがこちらです→https://skoklostersslott.se/en/

こういった建物は、都市部よりも郊外にある印象なので、スウェーデンに滞在していても、訪れる機会は意外と多くなかったりもしますが(車が必要だったりするので)、こうして見て想像するだけでも結構楽しいかなと思っています。

結婚行進曲について

そんなSkoklosterで伝わっている「結婚行進曲」(Brudmarsch)です。

「Brud~」という曲は伝統音楽の曲の中にもたくさんありますが、これらはすべて「結婚式」関連の曲になります。

Brudpolska(結婚式のポルスカ)、Brudvals(結婚式のワルツ)、Brudlåten(結婚式の曲)、など。

(「brud」という単語自体は、「花嫁」という意味があります)

スウェーデンの昔の結婚式では、演奏家を呼んで演奏することが多く(信じる宗教の具合にもよりますが)、結婚式での演奏は、演奏家のメインの仕事の1つでした。

(昔の演奏家について調べていると、「この人はたくさんの結婚式に呼ばれた演奏家だった」といった記述が出てくることが多いです)

結婚行進曲に始まり、結婚式でのダンスの演奏(皆でダンスを踊ることがよくありました)、食事や乾杯の席での演奏、なんならご祝儀を渡す時にも演奏、などなど。

昔の結婚式は数日間続くことも一般的だったそうなので、演奏する場面も多かったみたいなんですね。

結婚行進曲についても、教会の中を歩く時だけではなく、花嫁の家から教会までの道のりを皆で歩いて、その時に演奏家がこういった行進曲を演奏したり(馬に乗って演奏したり)したそうです。

スウェーデンの昔の結婚式の風習について、音楽以外の視点からも書いた記事がありますので、ぜひご覧ください→スウェーデンの昔の結婚式について

また、この曲はOlovと、彼の師匠(というか、先生というか友達というか)のCurt Tallroth(クルト・タルロート)が一緒に演奏している音源もあります。

Curtはクラリネットで演奏していて音階も違うので、BGM8バージョンとはかなり雰囲気が変わるかなと思います。BGM8の方は荘厳でおしゃれな感じですが、こちらはかわいい感じがします。

演奏家や楽器によって曲の雰囲気ががらりと変わりますね。


という感じで、今回は1曲だけでしたが、お城のある町Skoklosterで伝わる結婚行進曲をご紹介しました。

お城についてはあまりよく知らなかったので、今回調べられてとてもおもしろかったなと思います。曲の聞き方が少し変わりました。

お読みいただき、ありがとうございました。