ニッケルハルパ奏者のEric Sahlströmが出演していた動画の、解説・訳③です!
①と②はこちら→Eric Sahlströmの動画(解説・訳)①、Eric Sahlströmの動画(解説・訳)②
動画
今回は4:13~です!
古いタイプと新しいタイプの楽器の違い(駒・弓)
Jan Ling:完成した楽器も見てみましょうか。
Eric:ええ。(楽器を持ってくる)
Jan Ling:駒(Stallet)がここに見えますが、古いタイプの楽器の駒と見比べてみると…?
Eric:そうですね、こちら(現代的なタイプの楽器)の方が駒が大きく、基本的に、より「フィドル(バイオリン)の駒」のようになっていますね、穴があいています(切り込みが入っています)。
こちらの古いタイプの駒はひとつながり(シンプルな一片)です。(※ここちょっと訳が微妙ですが)
Jan Ling:弓も見てみましょうか。
Eric:今の弓はフロッグ(毛箱、froschen)がついています、このおかげで毛の張力を調整できます。
以前のものは、親指でこんな風に張力を調節しなければいけませんでした。
Jan Ling:(親指で調節するのは)大変ですよね(難しいですよね)。
Eric:ええ、長く弾くと疲れてしまいます。
Ericの音色の美しさの秘訣
Jan Ling:あなたはいったいどうやって、そんな美しい音色の出る楽器を生み出しているのですか?
Eric:説明するのは難しいですが、そうですね…。
私はいつも「音」を楽器に入れておくようにしているんですよ。表板を接着する前にね。それを忘れちゃうと、音が出ないので。
Jan Ling:(笑みを浮かべながら)で、その音をどうやって入れるのかは、教えてもらえないんでしょう?
Eric:ええ、秘密です。
(※最初、ここの受け答えの流れと2人が笑っている意味がわからなかったのですが、何回か見て「あ、冗談か~」と気づきました)
曲作りについて
Jan Ling:あなたは美しい楽器を作るだけでなく、美しい曲も作っていますよね。
Eric:そうですね、いくつか作りました。
Jan Ling:何曲くらい作りましたか?
Eric:思い出せないですね。作った曲の多くを私は忘れてしまうので。
Jan Ling:(忘れた分は)代わりにまた新しい曲を作るのですよね。
Eric:ええ、新しく作って補充します。
Jan Ling:そのニッケルハルパの音色を少し聴かせてもらえますか?
Eric:はい。
5:49~少しだけ音を弾く
Jan Ling:とても美しい音ですね。
Eric:ええ、私はこの楽器をとても気に入っています。
(※「ションマ bra」と言っていて、ションマのつづりと意味がわからなかったのですが、確か「とても」という意味(の方言)だったような気がします)
Jan Ling:あなたの曲は曲名も良いですよね。「Spelmansglädje」(演奏家の喜び)とか。皆さんご存知の曲ですよね。
曲はどうやって思いつくのですか?
Eric:歩いている時が一番思いつきやすいですね。音がやってくる(音が思い浮かぶ)ので、あとからそれに付け足して(構築して)いきます。
今回も短いのですが、続きはまた明日にします!
参考
弓について
弓の話が出ました。私は古いタイプの弓を持っていない(写真も持っていない)ので現代的なタイプの写真のみですが、たとえばこんな感じです↓弓の形は色々なものがあるので、これ以外にもあります。

そして、「フロッグ(毛箱。スウェーデン語ではフロッシェン)」は黒い部分です。拡大するとこちら↓

弓の仕組みをあまり知らない方も多いと思いますので(私もニッケルハルパを始めるまでは知らなかったので)補足しますと、フロッグの下、黒い先っぽの部分がありますが、ここがまわせるようになっています。ここをまわすと「毛の張力」が変えられるようになっているんです。
(弓をしまう時は毛の張力を弱めてからしまい、使う時にまた張力を強めます)
昔のニッケルハルパの弓はフロッグがついていなくて、親指を使って、張力を(手の加減で)調整していました。なので、基本的に毛はずっと「ゆるい」ままで、親指や他の指との加減で多少張力を強めていたわけです。こんな感じで↓(Daniel Hedmanによるシルベルバスハルパ(昔のニッケルハルパの1種)の演奏)
これにはメリットももちろんあって、毛が「ゆるめ」であるおかげで、複数の演奏弦を同時に弾くことができて(複数の弦に弓の毛が自然と触れるかたちになり)、それにより音がいくつも重なって、1回のボーイングでオーケストラのような和音を出すことができました。
(この古いタイプの弓のことをEric達は「疲れる」「大変だ」と言っていましたが、その辺の感想も人によって違うかもしれません)
話がそれますが、たとえばニッケルハルパ奏者のOlov Johanssonも、色々なタイプのニッケルハルパを弾いていますが(現代的なタイプをはじめ、古いタイプとしてはコントラバスハルパやシルベルバスハルパなど)、
おそらくツアー先にあまりたくさんの楽器を持って行けないことから、「現代的なニッケルハルパをあえて古いタイプの弓で弾く」ことで、まるで古いタイプの楽器を弾いているかのように見せることができる、と。「この弓は魔法の弓なんだ」と冗談まじりでよくライブでお話しされています↓
(ヴェーセン・デュオ(feat. Maria Kalaniemi & Timo Alakotila)のライブより。23:06~「あれ、弓変えた?」のフリに対して「これは魔法の弓だ」と話しています)
ということで、解説③でした。続きはまた明日です!
