今回は演奏中の身体の話について。最近考えたこと書いていきたいと思います。
小指を「弓につけるかつけないか」問題
楽器を弾いている最中、弓を持つ手の「小指」を「弓につけるかつけないか」。
どちらが良いのだろう?と、数年間ずっと考えてきました。
前提:ニッケルハルパは基本「どちらでも良い」というスタンス
前提として、少なくともスウェーデンでニッケルハルパを弾いている人たちは「どちらでも良い」というスタンスの人が多い(どちらでも良いと教わる)、というのをまず書いておきたいと思います。
もしかしたら、他のジャンルの音楽や他の楽器だと、「小指を弓から離していけない」という指導があるかもしれませんが、ニッケルハルパの場合は、小指を弓から離している人も結構います。
むしろ、私が普段見ている動画の演奏家の方たちは、「小指を弓から離して弾いている人」の方が多いような(?)イメージがあったので、なんとなく私も、小指を弓から離して弾く癖がついていました。
(とりあえず真似から入るのは大事なので)
痛くなることに気づいた
…でも、気づいたんです。
小指を離して弾いていると、私の場合、特に「薬指のつけ根から小指にかけて」が痛くなる、ということに。
もともと、身体のことを勉強していた時に、「小指を弓からあえて離して弾く(=小指を立てて弾くみたいな感じ)というのは、手にとってはなんとなく『良くなさそう』な気がする…」とうっすら思ってはいたのですが、あまり考えないようにしていました。
それで弾いているプロの方が何人もいらっしゃるので、きっと問題ないはずだ、と。
「痛くなる」ことに関しても、見て見ぬフリをしてきたのですが…。
先日ようやく認め始めたんですね。
「私にはこのやり方は合っていないな」と。
小指を弓につけて練習するように
それで、数週間前から遂に(観念して)小指を弓につけて練習するようにし始めました。
今までも、つけたり離したりな感じで弾いてはいたのですが、本格的に「あえてつけた状態で練習しよう」と思ったのはこの時期からです。
最初は、弓の持ち方が変わったことで、違和感というか、「全体的になんか変わった」感がとてもあり、それが良いことなのか悪いことなのか判断がつきませんでしたが、
結果として、「私にはどうやら『小指を弓につけて弾く』方法が合っているらしい」ということを実感しました。
小指を弓につけることで感じた変化
小指を弓につけて弾いてみて、感じたことがこちらです。
- 指や手が痛くなくなった(特に薬指・小指)
- アップで弾く(弓を下から上に動かす)のがとても楽になった
- 手全体の力が抜けた(特に親指と人差し指)
- 音が出しやすい・細かい音が弾きやすくなった
- 弓の軌道が改善
- ボーイングのスピードが自然と上がった(速・遅のコントロールの幅が広がった)
- 普段から小指を上げる癖があったが、それが改善された
通販番組のように良いことばかりをずらっと書いてしまいましたが、正直な感想です。
弓の持ち方を変えたことで、他にも変えた方が良い点がいくつかでてきて(楽器の構え方など)、最初はその調整が少し大変でしたが、結果としては良い結果になったなと思っています。
私の場合、特にアップで弾く(弓を下から上に上げる)時のボーイングがとても楽になったのと、ボーイングがスムーズになり、弓を動かすスピードの幅が広がったと思いました。
あと、何よりも手と指が楽なんですね。驚くほどに。
普段から「小指を上げる癖」があった
また、さきほどの項目の一番最後に書きましたが、私の場合、楽器を弾いている間だけではなく、普段から小指を上げる癖がついていました。
たとえば、こうしてPCのキーボードを打っている時、スマホを持っている時、などなど。
左手は全然そんなことは無いのですが、右手の小指だけ、少し上げて(浮かせて)しまっていて、結構痛かったんです。「ばね指」みたいな感じにもなっていました。
それが、弓に小指をつけるようになってからは、小指を上げる癖が改善されてきました。
まだ今は、意識しないと上がってしまいそうになる時があるのですが、普段の癖にも変化が出るのは嬉しかったです。
普段から小指を上げることが癖になっていると、小指の腱や筋肉がこってしまい、痛くなります。
私も、右手の小指側(手の横側)が痛かったり、小指の伸筋(小指を伸ばす筋肉)がつながっている肘のあたりが、触るとかなりこっていたりして、以前から「あまり良くないな」と思っていたのですが、
これもやはりなんとなく「認めたくなくて」、痛いことに見て見ぬフリをしてきたんですね。
でもやっぱり痛かった。
最近やっと「痛くなくなってきた」ことによって、はじめて「ああ、あれってやっぱり痛かったんだな」と認められるようになりました。
(「痛みの中にいると、その痛みに慣れてしまうし、痛いということを認めたくない」ということの典型的な例だなと思いました)
気づくと弓から離している→気づいた時点で修正
ただ、癖というのは強力なので、ふと気づくと小指を弓から離しています。
そうするとだいたい、弾きにくくなるか、痛くなるので、「あ、離してた」と気づいた時点でまた戻すようにしています。
(弾きにくいはずなのに、無意識に元の癖に戻ろうとしてしまう、というのが、癖の怖さというか、すごいなと思います)
小指を弓につけるかつけないかというよりは、要は「弓のコントロールの仕方(のイメージ)」の問題なので、ただ小指をつけていれば良いというわけではなくて、「手全体を使って弓をコントロールする感覚」がつかめると良いかなと(私の場合は)思っています。
小指を離していた時は、その役割が「手全体」ではなく、薬指や人差し指や親指など「特定の指」に集中していた感じがあったんですよね。
特定の指だけで何かをやろうとするよりも、手全体のコントロールを使う方が、身体としては無理が無いのだろうなと思っています。
緊張したりするとすぐに以前の癖に戻ってしまうので、そういう時にも意識し直すのが効果的かなと思います。
人によって身体の感じ方は違う
人によって身体のつくりも感じ方も違うので、特に正解や間違いというのはありません。
今回私が書いたことも、他の方には全然当てはまらないかもしれません。
私としては、とりあえず「痛くないならそのままで良いし、痛いならちょっ変えてみると良いかも」というスタンスです。
また、ここまで書いてきて、あらためてニッケルハルパ奏者の動画などを色々見ていたら、案外小指を弓につけて弾いていらっしゃる方も何名もいました。
「皆が小指を弓から離して弾いているイメージがあったけど、そのイメージ自体が違っていたのかも」と思いましたね。
他の方の演奏を参考にしたり、真似するのは、伝統音楽的には非常に大切なのですが、自分の身体のことは自分にしかわからないので、自分の身体に合った弾き方をしていくと良いなと思います。
今回は、「小指を弓につけるかつけないか」について、私が感じてきたことと、現在の私の結論を書きました。
こういうことを書いておいて、数か月後には反対のことを書いているかもしれませんが…(意見がコロコロ変わってすみません)。
とりあえず今の私は、小指をつけた方が圧倒的に弾きやすいと感じています。まだまだ全然研究の余地ありですが。
痛いけど見て見ぬフリして弾いている時って、弾くのが辛くなってしまうのですが、その痛みは必ずとりのぞけるし、自分に合っている「楽」で「楽しい」弾き方が必ずあるはずだ、と私は常々思っています。
何か疑問点や改善したい点などがあれば、またレッスンなどで、ぜひ聞いていただけたらと思います。案外ちょっとしたコツで良くなることも多いので。
また、今回の件を通して、自分の楽器の構え方も最近変わりまして、そのことについても今後書けたら良いなと思うのですが…今はまだ文字にして伝えられる自信が無いので、弾きながら考えておきたいと思います。
参考になりましたら幸いです。