昨日のLomjansgutenの記事の中で、最後の方に、Mats Berglund(マッツ・ベルィルンド)というフィドル奏者の動画のリンクを載せました。
この動画、昨日のブログを書いた時点では半分くらいしか見られていなかったのですが、その後最後まで見たので、そこで印象的だったことを1つご紹介したいと思います。
「Lomjansgutenが実際に弾いていたと言われる楽器について」です。
また、Lomjansgutenの曲の音源や動画も、記事の最後に2つだけ紹介しています。
Lomjansgutenについての動画(Mats Berglund)
まず昨日の記事がこちらです。
ヴェルムランド地方の19世紀の演奏家(フィドル奏者)、Lomjansguten(ロムヤンスギューテン)について紹介しました。
それで、参考の1つとして書いたのがこちらの動画です。
folkporträtt 1: “Lomjansguten” Mats Berglund, by Bilda Folk
(この動画はFacebookの配信動画なので、Facebookのアカウントが無いともしかしたら見られないかも(?)しれませんが、アカウントがあればおそらく誰でも見られると思います)
動画の内容
この動画は、ヴェルムランド地方の現代の演奏家(フィドル奏者)のMats Berglund(マッツ・ベルィルンド)が、Lomjansgutenについて解説し、演奏している1時間の動画です。
言語がスウェーデン語なのと、配信用の音声なので聞き取りにくいのが少し難点ですが、Lomjansgutenの曲の演奏もあり、興味深い内容になっています。
内容は、私が昨日参考にしたLeif Stinnerbomの文章と基本的にはかぶっているかなと思います。Lomjansgutenの生い立ち、教わった先生、彼の旅路、指導者としてのLomjansguten、Norrlandに住んでいたこと、などなど。Leifの文章についても何度も言及されていました。
一方で、Mats Berglundの視点による「同時代の演奏家どうしの関係性」や「別の演奏家から見たLomjansgutenの印象」、「Lomjansgutenについて調べて書き残した演奏家の話」など、当時の演奏家の横の繋がりや、縦の繋がりについても語られています。
当時の演奏家どうしも、やはりお互いに影響を与え合っていて、それが現在の(私たちが関わっている)伝統音楽にも繋がっているそうです。
演奏家の名前もいくつも挙げられていました。
私も一応動画全部は見たものの、半分くらいしか理解していないかもしれないので、何回か見てもうちょっと頭に入れられると良いなと思っていますが…時間とのたたかいになりそうですね。
Lomjansgutenのフィドル(テールピースが骨でできたフィドル)
で、今回書きたかったのはこれがメインです。
動画の中で、Matsの横の机に「ケースに入れられたフィドル」が置かれているんですね。
彼が演奏している楽器とはまた別の楽器なのですが。
この楽器が「Lomjansgutenが実際に演奏していた」と言われるフィドルなんだそうです。
これはArvika(アルヴィーカ、ヴェルムランド地方の地名)の博物館に保存されているものだそうです。
この楽器が「Lomjansgutenが実際に演奏していた楽器」と言われるのには根拠があって、それは「楽器のテールピースが『骨』でできているから」。
昨日の記事で、「Lomjansgutenは、演奏の先生であったMetbäckenが亡くなった際、Metbäckenの鎖骨を楽器のテールピースとして使うことで、Metbäckenの音楽的な力を手に入れた、と言われている」と書きました。
その言い伝えがあることから、実際に骨が使われているこちらの楽器は、(ほとんど確実に)Lomjansgutenの楽器だろう、と言われているらしいです。
Matsがこの楽器について説明しているのが、動画の27分前後くらいからなのですが、実際にこのフィドルを手にとって見せてくれるのは29:40くらい~です。
もしよければ、そこだけ再生してみていだたければと思います。
見てみると、テールピースが白いです。
(音声が聞きたい場合は、かなり音量を上げないと聞こえないです。演奏はまだ良いのですが)
この時点では楽器は紹介して見せるだけで終わっていますが、最後の曲の時(49:10くらい~)だけ、このフィドルで弾いていますので、音色も聞くことができます。
さらに、これは余談ですが、最後の質問タイムで「このテールピースの骨はDNA鑑定できますか?」「そもそも人骨ですか?」という2つの質問があり、それに対してMatsはこう答えています。
・DNA鑑定することはもちろんできると思うけど、実際の鑑定結果がそんなに重要(おもしろい)かというと…。これは「シンボル(象徴)」でもあるので、もしもLomjansgutenが弾いていた楽器でなかったとしても、私の想像をかきたててくれるものだと思っている。
・人骨かどうかはわかっていない。私たちが知っているのは、このテールピースが「骨」である、ということだけ。
だそうです。
(「鎖骨」というのも、私が参照した情報源に書いてあったことなのですが、鎖骨だとテールピースにしては幅が足りないかもしれないな、とかちょっと思ったりしました)
さて、本当にMetbäckenの骨が使われているのか、そしてこれはLomjansgutenの弾いた楽器なのか、それは今のところ誰にもわかっていないのかもしれませんが、
実際、昔の演奏家の楽器が残っていること自体はそんなに珍しくはないので、Lomjansgutenが弾いていた楽器、というのもあり得ないことではないかなと思います。
昨日のブログを書いた時点では、この楽器が紹介される前のところまでしか動画を見ていなかったので、後半を見てみて「おもしろいな~」と思い、今回ちょっと書いてみました。
曲の紹介(2つ)
また、昨日は曲が紹介できなかったのですが、Mats Berglundが動画内で弾いていた曲で、YouTubeからも聞けるものを2つ紹介したいと思います。
1つ目は、Matsが最初に弾いているワルツ(9:45くらい~)です。
こちらの演奏は、Hultkläppenの映画でHultkläppen役をしていたThore Härdelin(トーレ・ヘルデリーン)とその娘さんのThuva(トゥーヴァと読むのでしょうか)のCDです。この曲はどちらかが1人で演奏しているようですが。
Hultkläppenについて→Hultkläppen(フルトクレッペン)について(生い立ち~晩年まで)、Hultkläppenについて、補足・音源など
2つ目は、こちらのポルスカです(Matsの動画だと17:25くらい~)。Mats Berglundがこの曲を初めて聞いたのはノルウェーのTV番組だったらしいので、その時はスプリンガル(というノルウェーのダンスの種類)として紹介されていたそうです。
こちらの演奏は、向かって左がLeif Stinnerbom(レイフ・スティンネルボム)、右がMats Edén(マッツ・エデーン)だと思います。2人ともレジェンド的な演奏家たちで、Groupa(グローパ)というバンドを作ったことでも有名です。
左のLeifは、昨日の記事の参考にさせていただいた文章を書いた方なのですが、昨日音源を載せたMagnus Stinnerbomのお父さんでもあります。
という感じで、Lomjansgutenが弾いていた(と言われている)楽器と、曲の音源や動画を紹介しました。
Mats Berglundの動画の内容も、簡単にかいつまんで紹介できると良いなと思うのですが…私のスウェーデン語力がまだまだなので、「いつかそのうち」のプロジェクトとして頭の片隅に置いておきたいと思います。
(演奏家の名前がたくさん出てくるので、それらを調べるのにも時間がかかりそうです)
ただ、最近ちょうど19世紀のノルランドのあたりの演奏家について書いてきたところだったので(Hultkläppenや、Lapp-Nilsなど)、その辺の時代の雰囲気や、同時代の各地域の演奏家のことがわかるのはおもしろいなと思います。
また他の演奏家のことも、できる範囲で紹介していきたいです。