「Maskin」というトリオの配信コンサートの日本語訳②です。
①はこちら→「Maskin」のコンサート日本語訳①
今回は6曲目までいきます。
動画
前回終えたところ、②2曲目の始まるところ~再生するようにしています。
②(4:31~)「Gammal Ljungqvistervals nr.1」(Gås-Anders伝承のワルツ、1番)
(8:23~)
(Olov)今演奏しましたのは「Gammal Ljungqvistervals nr.1(Gås-Anders伝承のワルツ、1番)」でした。
これを演奏すると私はいつも、ある2人の演奏家のことを目の前に思い浮かべるのです。
その2人というのは、最初に(曲/演奏を)教えてくれた人たちとも言えると思います。
Curt Tallroth(クルトゥ・タルロート)とOlov Jansson(オーロヴ・ヤンソン)です。
15歳の時、私はÖstervåla(エステルヴォーラ)に行き、Östervålaのフィドル奏者たちやニッケルハルパ奏者たちと一緒に弾きました。
そこでは、そのOlov Jansson(Olle Jansson)とCurt Tallrothが――この2人は本当に素晴らしい演奏家たちで、昔ながらの美しい演奏をする奏者たちなのですが――彼らがいつもこの曲(※②のワルツ)を十八番(paradnummer)として弾いていたんです。
※paradnummer…得意な曲、輝けるような曲、十八番
(Erika)彼らの演奏を聴くのは本当に素晴らしいですよね。
(Olov)本当に。
続いての曲も、Gammal Ljungqvisterの曲、Gås-Andersの曲を1つお届けしたいと思います。
ポルスカです。
私たちはこの曲を「グリッサンドポルスカ(Glissandopolskan)」と呼んでいます。
この呼び名は、Viksta-Lasse(ヴィークスタ・ラッセ)のフィドルの演奏テクニックにちなんでいます。
(※Viksta-Lasseはウップランド地方のフィドル奏者(1897-1983))
Viksta-LasseはたくさんのGås-Andersの曲を弾いていた人で、そのレパートリーはBosse Larsson(ボッセ・ラーション)に引き継がれました。
BosseはRobertのお父さんです。(Robert手を挙げる)
そして、そのBosseが教えてくれたことなのですが、Viksta-Lasseは演奏中、高音のポジションにいく時などにこうしていた(こう言っていた)そうです。
「(ポジション移動させたい時は)ただ弾きたいポジションから近い指をとって、そのまま弾きたいところに移動させて(滑らせて)、そこからまた弾くのを続ければいいんだよ」と。
(ErikaとRobert、笑う)
(Erika)すごく簡単そうに聴こえるけど。
(※実際は難しいのに、さも簡単そうに言うところに笑っている)
(Olov)うん、でも本当に、そんなに複雑なことじゃないんだよね(半分冗談で)。
では、「Glissandopolskan(グリッサンドポルスカ)」です。
Viksta-Lasseは、特に晩年は指が動きにくくなっていたらしいこともあり、音が飛ぶところで指を弦から離して移動させるのではなく、「指を弦に乗せたまま滑らせてポジション移動をする」ようなグリッサンド的な演奏をすることで有名でした。
Viksta-Lasseについてはこちらのブログ記事でも解説しています→Viksta-Lasseについて
昔の奏者あるあるなのですが、本人は高度なテクニックを使っているのに、さも「簡単なこと」をやっているかのように周りに話すので、その話しぶりが周囲の笑いを誘う、ということがよくあります。
また、Bosse Larssonもフィドルの奏者で、Viksta-Lasseの兄弟Svenの子ども(甥)に当たる人です。
③(9:53~)「Glissandopolska(グリッサンドポルスカ)」
(12:17~)
(Robert)楽しいね。
(Erika)そうだね。
(曲や演奏の)先生とか、理想の演奏家(自分がモデルとしている演奏家)の話でいえば、Bosseはきっとこの3人の中での共通の先生の一人だったと思います。
私はBosseの家に何度も行ってたくさん一緒に弾きました。私も、Olovもね。
(※RobertはBosseの息子なので家に行く必要はなし)
Bosseは私が一番好きな先生/理想の演奏家の1人で、確か、初めてお家にお邪魔したのは11歳の頃だったと思います。
私はその頃、いかにも「カッコいい10代の女の子」という感じで、黒い服を着て、ロングヘア―にパーマをかけて、ハードロックばかりを演奏していたものですから、Bosseの家で伝統音楽を弾きに行くのが「休憩(息抜き)」という感じでした。
それで思うのですが、そういう自分の理想の演奏家(自分がモデルとしている演奏家、お世話になった演奏家)に対して、自分の感謝の気持ちを、きちんと表す機会って結構少ないですよね。
自分の内側には気持ちがあふれていて、感謝しているのだけれど、直接本人たちにその気持ちを表す機会はあまりありません。
ですので、Bosseが70歳を迎えた時、ちょうどBarbro(バルブロ。Robertの母で、Bosseの妻)も同じ頃に誕生日を迎えて70歳になったので、私は彼ら2人に対して曲を作りました。
ワルツです。
「Bosse & Barbros 70 års vals(BosseとBarbroの70歳のワルツ)」です。
その曲を今から演奏したいと思います。
伝統音楽を演奏している人は、友達やお世話になった人が誕生日を迎えたりすると、曲を送ることがあります。「誰々の○○歳のポルスカ」などとついている曲名は、そういう時に作られた曲です。
他にも、結婚式や子どもが生まれた時など、お祝い事の時に曲を作ってお祝いの気持ちを示すことが多いです。
④(13:27~)「Bosse & Barbros 70 års vals(BosseとBarbroの70歳のワルツ)」
(16:37~)
(Robert)きれいな曲だね。
1970年代の中頃、Viksta-Lasseと私の父(Bosse)はBror Hjorths Husでコンサートをしました。
そのコンサートの後、Viksta-Lasseはそのまま残って少し弾いていました。
そしてBror Hjorthの息子Ole Hjorthは賢かったので、(Lasseの弾いている様子を)録音していました。
すると、少し経った頃に1つのポルスカが演奏され、OleはViksta-Lasseに尋ねました。
「今のポルスカはなんて曲?」と。
その曲は、実はOleにあてて、新しく作られた曲でした。
タイトルは「Polska till Ole Hjort(Olle Hjortへのポルスカ)」。
(Olov)ここで私はオクターブハルパを弾きます。あ、腕時計を外さなきゃ。
(Erika)(時計を外すのを)思い出して良かった。
コンサートの場所として出てきた「Bror Hjorths Hus」は、前回訳した「Duo Cavez/Paulson」のコンサートが開かれた場所で、伝統音楽に造詣の深い芸術家Bror Hjorthのアトリエです。
今はミュージアムとして開かれていて、たまにコンサートをしています。
息子さんのOlleが演奏している様子を描いた絵も(確か)あります。
また、「オクターブハルパ」は低い音の出るニッケルハルパです。
⑤(17:35~)「Polska till Ole Hjort(Ole Hjortへのポルスカ)」
曲名表記↑だけ、MaskinのCDにならって「Hjort」と表記しました。他はOle Hjorthで書いていますが。
(20:00~)
(Robert)さあ、では次にまたLjungqvisterのワルツ(Gås-Andersのワルツ)を演奏したいと思います。
Gås-Andersはspringvals(スプリングヴァルス=テンポの速いワルツ)の名手でした。
ということで、「Ljungqvistervals nr.2(Gås-Anders伝承のワルツ、2番)」です。
(Erika)Olovは楽器を持ち替えます。
(Olov)(楽器の弦がたまたまボーンと鳴る)こういう風な音が出ますよ。準備はOK?
どうでもいいことですが、最後の、弦がボーンと鳴って「こういう音が出ますよ」と言っている所は、お客さんがいれば、笑いが起きるところだろうなと思います。
⑥(20:41~)「Gammal Ljungqvistervals nr.2(Gås-Anders伝承のワルツ、2番)」
明日はこの後から訳していきたいと思います。
3人の演奏している雰囲気が、自然体で平和だなあと思いながら見ています。
明日以降も訳していきますので、コンサートの感じを楽しんでいただけましたら嬉しいです。
お読みいただき、ありがとうございました。