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スウェーデンで経験した小さな不思議な話をひとつ。

/ ニッケルハルパ奏者

日本では夏は怪談の時期ですが、スウェーデンでもたまにおばけの話になることがあります。季節はあまり関係ありません。

私は留学中に2~3回不思議な体験をして、それがおばけのせいかどうかはわからない(違うかもしれない)のですが、私の中では「不思議なこと」として思い出になっています。


そのうちの1つの話で、とてもとても小さな出来事なのですが、4年目の留学でUppland(ウップランド地方)のTobo(トーボー)という所でニッケルハルパを学んでいた時のことです。

その学校に大きなホールみたいな空間があって、ダンスの授業やコンサートはそのホールで行われます。暖炉とかもあって、素敵なところです。

そこにプロジェクターの映像を映すスクリーンがあって、ちょうど私のクラスメイトの一人が機械好きで、プロジェクター自体を持っていたので、その人のPCとプロジェクター(パワーポイントとかを映す機械)を使って週末の夜に皆で映画を観ていました。

ホールにあるソファをスクリーンの前に並べて、部屋から毛布やお茶を持ってきたりしてくつろいで観ます。

私は当時は疲れやすくて夜起きているのが苦手だったので、映画会にはあまり積極的に参加していなかったのですが、その時はたまたま参加しました。

観た映画は、確かアメリカの映画で、どんでん返しのあるミステリでした。マジシャンが出てくるのですが、そのマジシャンが実は複数いる?え、なぜ?みたいな映画でした。

ラストでどんでん返しがあるので、観終わった後にも「え?つまりあそこの場面のあれはどういうことだったの?」みたいなのを考える必要がありました。


そのホールに入る手前に学校の食堂があります。

食堂と言っても、とてもこじんまりとしたかわいらしい食堂です。普段はそこにティーバッグや湯沸かし器が置いてあって、しかも平日の午後にはFika(フィーカ。コーヒーブレイクみたいなもので、お菓子を食べたり休憩したりたまに余興をしたりする。学校のタイムテーブルにはFikaの時間が組み込まれている)用のお菓子が用意されていて、職員さんはお菓子を用意したらそのまま帰ってしまうので、お菓子がたくさんある日は翌日まで(金曜なら翌週の月曜日まで)私達だけで食べ放題状態でした。(そんなにたくさんあったわけでもありませんが、私達は全校生徒11人だったので、ある意味食べ放題でした)

映画を観た日は確か土曜日か何かで、私達は夜更かしすることができたし、金曜日のFikaのお菓子(確かクッキーみたいなもの)も残っていたので、一度休憩で「夜中のFika」をしてから何かもう一つ映画を観よう、ということになりました。

お湯を沸かしてお茶を用意して、皆で一つのテーブルについて(食堂の真ん中あたりのテーブル)、お茶を飲みながらクッキーを食べながら、私達はさっき観た映画のからくりを議論していました。

私は、映画が英語だったせいもあって内容のからくりが気になりすぎて、他の人達の議論よりもまず日本語の解説記事みたいなのをスマホで調べて、皆に「日本語のページあるもんね~」みたいなよくわからない自慢みたいなのをしながら、解説を読んだり議論に加わったりしました。


他の国でもそうなのかもしれませんが、スウェーデン人は基本的に暗い部屋で何かをするのを全く苦にしません。

昼間は電気をつけないでいることもよくあって(職場などは別かもしれませんが)、夕方になってかなり暗くなってきてから思い出したように電気をつける、ということもあります。

薄暗いくらいの方がちょうどいいとか、明るすぎるのは眩しくて嫌だというのもよく聞きます。

私達のクラスはスウェーデン人に加えて色々な国籍の人がいましたが、半分はスウェーデン人だったのでなんだかんだスウェーデン式に慣れていました。

その日も夜更けに議論をしながら、私達は天井の電気を点けずにいました。

もともと学校には窓辺に置いてある小さいランプがいくつもあり、常時オレンジ色の灯りがぼんやりと点けられています。これはその学校だけではなく、多くの学校や家々がそうです。スウェーデンで夜歩いていると、よく目にする光景です。

窓辺のランプもあるし、非常灯も緑色に光っているし、という感じで私達はとてもナチュラルに、電気を点けずに話していました。


お茶も用意し終わって全員が同じテーブルについて議論していた時、私達のテーブルの上の天井の照明だけがパッと点きました。

スイッチには誰も触れていないし、そこにいた誰かが点けたわけではありませんでした。

また、誰か別のクラスメイトが新たに学校に入ってきたわけでもありませんでした。学校の扉は重いので誰かが来ればすぐにわかるし、食堂のスイッチは食堂の入口ではなく、入って少し進んだところにあるからです。

(スイッチは「押したら点く」というタイプの丸いもので(ちなみに、まわしたら調光ができる)、パチッとON/OFFで傾くタイプではないので、一目見ただけではON/OFFがわかりません)

私達は一瞬「え?」となりましたが、そこで過剰に反応したのは私と、いつもリアクションをしっかりとってくれるフランス人の友達くらいで(あらまあ、みたいな変顔をしてくれた)。あとの人は「…ま、点けてくれたのかもね!ありがとうー」みたいな感じでさらっと流していて、私は「えー!」と思いました(ここ、盛り上がるところじゃないの?って思ってました)。

そして私達は、さきほどの映画と同じ俳優さんが主演でマジシャン役の、明るいハッピーな別の映画を観てから、片づけをして何事もなく寮に戻りました。

以上が、小さな不思議な経験です。


日本だと、こういう話になるとゾッとしたりするものですが、この話だけでなく留学中に私が思ったのは「日本以外の国の人って、『良いおばけなら全然オッケーじゃん』みたいな価値観がある人が多いよなあ」ということです。

おばけ=怖い、ではなくて、そこに良いおばけか悪いおばけか、という判断が出てきて、良いおばけならスル―って感じです。

これは私が日本で怪談話を自然とよく聞いて育ったせいか、そういうものに対して想像力が働いてしまうからなのかもなあと思います。「怖いもの見たさ」で、怖いと思いたい(怖がりたい)のかもしれません。

そんなことがあったなあ、とよく思い出しています。

今日の動画は「Leipzigs krigsmarsch(ライプツィヒの戦いの行進曲)」です。この曲がライプツィヒの戦いとどう関連しているのか(もしくはあまり関連していないのか)、確か先生が少し教えてくれた気がするのですが、私が世界史を覚えていなさすぎて留学当時あまり理解できず…。今も全く覚えていません。すみません。曲はUppland(ウップランド地方)で伝わる曲です。この曲は歌としてすごく有名で(歌詞の関係で、弾いた時とは少しだけメロディが違います)、歌の時は別の曲名で呼ばれているので、そちらの曲名の方がよく聞くかもしれません。昨日に続き、元気な明るい曲です。

今日もお読みいただき、ありがとうございました!