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ルンド留学から帰国して逆カルチャーショックになった。

/ ニッケルハルパ奏者

ルンド大学での留学生活を経て私はスウェーデンが好きになりました。スウェーデン人の考え方をもっと知りたいと思いました。

そして2011年に日本に帰国してからが、実はとても大変でした。日本をバカにしたり、批判したりすることが止められないのです。日本がとても嫌に思えて、毎日スウェーデンに帰りたいと思っていました(私の帰る場所はスウェーデンではなくてここなのに)。

典型的な逆カルチャーショックでした。

逆カルチャーショックというのは、海外に行った日本人が、日本に帰ってきてから今までの日本の生活に順応できなくなることです。カルチャーショックの反対バージョンです。

私はこれでした。

もともと大学生の頃は社会への反抗期みたいなところがあったので、しょうがないです。というかこの時の私にはこれが必要だったのだと思います。権力とかお金とか、制度とか、風潮や流行に対してなんなんだ!と歯向かう気持ちがありました。おそらくスウェーデンとは関係なく、そういう気持ちを当時私がもともと持っていて、それがスウェーデンへの留学をきっかけに噴き出してきたのかなと思います。

自分が世の中の流れとは違う考えを持っていることに気付き始めて、そこに戸惑って、でもまだ開き直るまではいかなくて、「なんなんだよ、世の中間違ってるよ」と思いながらも周りの目を気にして、結局中途半端な自分でいるしかなくてもどかしい、という感じでした。それがスウェーデンに行った時に、「こんな自分でも良いんだ」とか「世の中には色々な考え方があるんだ」と思えてほっとしたんです。その安心感を日本にも求めたけど、待っていたのは満員電車と他人の目、そしてそれを気にする自分自身でした。

スウェーデンで得られた安心感というのは本当は私自身が自分で作り出したものだから、日本に帰ってきてもそのままの自分でいれば別に良かったんですけど、当時の私は自分が日本の社会でやっていく自信がありませんでした。共感してもらえる自信が無くて、自分が変わっていることに引け目を感じていて(本当は皆変わっているのですけど)。スウェーデンにいた時は、「私日本人だし。外国人だし」と開き直れて楽だったのですが、日本に帰ってきたら皆と同じじゃなきゃいけないような気がしていたし、頑張ればそれができてしまうので(日本人ですから)、それを選択しない自分はダメな気がしていました。

だから日本に対して噛みつくことしかできなかったんです。日本で感じる劣等感、異分子感、違和感。スウェーデンが私に与えてくれた安心感を、どうして日本では誰も私に与えてくれないんだ、ガオーみたいな感じです。本当は日本のせいじゃない。本当は、「日本では自分が自分らしくやっていけないんじゃないか」という自分の怖れと不安があっただけでした。(でもそれを当時の自分に言ったら余計に追いつめることになるので、タイムマシンがあっても絶対に言いません。別にそのままで良いのに~、とだけ言います)

それに、世の中の流れに対する違和感とかは持っていていいものですし、この当時考えていたことと今考えていることの内容は実際はあまり変わらない気がします。違うのは、今はその違和感を「自分の不安を正当化する材料」に使わないようにと心がけているのと、そういう違和感を持っている自分でも日本で居場所を作りたい、というか必ず作ると決めていることです。2011年当時の自分というのがちゃんと今の自分の中にも生きていますし、逆カルチャーショックになって心の中で日本を批判しまくっていた自分と、それでも日本で生きていきたいと思っている今の自分は、矛盾しているようでちゃんと繋がっています。


そんな中でも、当時は日本でもスウェーデンと関係したことを始めようと思ってイケアでアルバイトを始めたり(初バイトでたくさん失敗しました。やらかした記憶ばかりが蘇る)、東京スウェーデン語学校に通い始めてスウェーデン語の勉強を始めました(今も受講しています)。とにかくスウェーデンと関わるようにして、なんとか楽しくやっていました。


海外留学や海外旅行に行って価値観が変わりました!という話を聞くことがありますが、私は、本当はその変化した価値観の「種」というのは、留学や旅行前からその人がもともと持っていたんだろうと思っています(でも抑圧していたりして、意識にはのぼってこなかったりして)。例えば自分の日常に対するちょっとした違和感や、社会で感じる閉塞感。それが留学や旅行を通して芽が出て、トトロの樹みたいに一気に成長して顕在化する。じゃあ留学や旅行でどうしてその芽が出るかといえば、自分の中でのタガが外れるからだと思います。海外では自分が外国人。日本ではわかって当然のことがわからない。何か一つやるだけでもドキドキ。でもそんな時に使える魔法の呪文。「自分、日本人だし。外国人だし。わからなくて当然じゃーん!」。あとは現地の人達の、想像もつかないような常識や価値観・行動を目の当りにして、そのタガはより外れていきます。「こんなのもアリなんだ!」と。日本で背負っていた役割、自分の立場。そういうものを一度放り出して、自分が自分に課していたキャラとは違う行動をとる自分を、自分が許せる。ちゃんとしてない自分を、自分が許せる。

私の場合は、海外に行って外せたはずの自分のタガを日本に帰国してからまた自分で締め直していました。だから窮屈になりました。そして一度タガが緩んで出てきたものは、もうそれ以降は無かったことにはできなかったんです。だからまた行きたくなりました。

そういう意味で、留学や旅行ってやっぱり良いものなんだと思います。留学に行ったから、旅行に行ったから、それだけで一発逆転、人生が好転する(本人の働きかけなしに)ということはありえないと個人的に思います(本人が働きかけて人生の方向性が変わることはあると思います)。でもそこを通じて得られるものがたくさんあります。留学や旅行を通じて得られたと思っているものは、実は以前から自分の中に既にあったものだったりして、しかもそれは自分が留学や旅行を終えて今現在どこにいたとしてもまた何度でも生み出せる。私は自分の留学経験を通じて、そのような思いを抱いています。

逆カルチャーショックになったことだけを書くと留学が悪いものみたいに見えそうだったので、そうじゃなくて、逆カルチャ―ショックも含めて留学ってやっぱり良いもんだなと思った、と書きたかったんです!

今日もお読みいただき、ありがとうございます!