「弓の圧力をかける」という時に、私がしている考え方(イメージの仕方)を一つご紹介します。
今の私が思う、最も有効な方法なので、もしよければ参考にしてみてください。
楽器(弦)からの反発力に着目する
それは、弓の圧力をかける際に、「弓→楽器(弦)」という方向性の力のみを意識するのではなく、「楽器(弦)→弓」という方向性の力(楽器・弦からの反発)を同時に意識することです。
圧力をかけるというと、「弓で楽器(弦)にどう力をかけるか?」という一方通行の力のかけ方を考えてしまいがちですが、そこで必ず楽器(弦)から弓への反発力(抵抗力)も感じるようにします。
そして、弓の圧力をコントロールする際も、この「楽器(弦)→弓」への反発力を感じながら弓をコントロールします。
やってみて起きた変化
私の場合、最初は「弓→楽器(弦)」だけをひたすら意識している状態でした。
そこで、楽器(弦)側からの反発/抵抗を感じながら弾いてみると、以下のような変化が起きました。
・「どのくらいの圧力をかけたらいいか」が、感覚的にわかるようになってくる(弓を通して感じられる)
・圧力をかけすぎることが減り、手の余分な力が抜ける(「自分は圧力をかけすぎていたのだ」と知る)
・弓の圧力の微調整が可能になる(→表現力が増える)
・それまでは「弓でどう弾くか」ばかりを意識していたのが、「楽器の鳴り」「音の響き具合」に意識が向き、「弓をどう扱うと楽器がどう鳴るのか?」についてより意識的になる
・音が安定する
この方法(考え方)を試してみるまで、私は「弓の圧力を調整する」ということにとても高いハードルを感じていました。
しかし、いざ楽器(弦)側からの反発を感じながらやってみると、圧力を調整するということはきわめて自然なこと(自然にできること)なのだと知りました。
圧力を調整しているというよりも、感覚としては「音のハリと響き具合を確認しながら弾いている」という感じで、実際の圧力の調整は手が感覚的に行ってくれているような感じです。
私は擦弦楽器はニッケルハルパ以外には弾いたことがないので、もともとそういうことが感覚的にできるわけではないのですが、考え方や視点を変えるだけで、手や弓の扱いがこんな風に変わるのか、と思いました。
楽器の安定
考え方としては以上で、ここからは補足です。
楽器(弦)からの反発/抵抗を感じるうえで一つ思ったのが、「楽器がある程度しっかり支えられている(安定している)方がいい」ということです。
その方が、弓からの力をより効率的に受け止め、音に変えていけると思いました。
ニッケルハルパの場合は、ストラップをかけて、そして右肘と、右前側みぞおち付近のおなかのあたりで楽器をはさむようなかたちになりますが、これら楽器にふれている部分と、上半身の軸が、自由でありながら安定しているといいなと思います。
身体のどこか一点で楽器を支えるわけではなく、楽器と自分の身体が安定した関係にあるような感じです。各所が動いても、全体としてバランスがとられている状態です。
楽器をふらふらとさせたり、むやみに揺らす(前に私がよくやっていた)癖がある場合は、それを一度やめてみて、「楽器ではなく、弓(と、主に右肘から先など)を意識的に自由に動かす」練習をしてみるといいのではないかと思います。
たとえば、楽器を構えた状態で、左手だけ楽器にそえずに、だらんと楽にします。上半身全体も楽にしたまま、弓を大きく動かして開放弦を弾いてみます。その時に出る音・その時の弾き方を感じながら、そのまま左手もつけて、簡単な音だけを出していきます。ここで普通に曲を弾くと、いつもの弾き方にすぐに戻ってしまうので、簡単な音で「いつもと違う弾き方の感覚」というのを感じていきます。
「いつもと違う弾き方」を体験することで、「弾き方の選択肢」が増えると同時に、「いつもの自分の弾き方」(=現状)が少し客観的にみられるようになります。客観的にみられるようになると、意識や行動が少しずつ変化していくと思います。
楽器を安定させたうえで、動かすなら意図的に、意図する方向に動かします。もしくは、楽器自体をさほど大きく動かさなくても、自分の身体の動きをうまく使うことで、弓の動き・力を効率的に音にすることができるのではないかと考えています。
私自身、まだまだ研究中ですが、もしよければ、参考にしてみてください。
お読みいただき、ありがとうございました。