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きれいな音を出すには?(理論・感覚の2つのアプローチ)

/ ニッケルハルパ奏者

昨日に続いて、レッスンの時によく話題にでる話を書きたいと思います。

「きれいな音が出ない!」

これはどの楽器でも、どなたでもご経験があると思いますが、「きれいな音が出ない!」というお悩みですね。

私も自分で思う時がよくあります。

自分のその日のコンディションや身体の具合によっても、調子の良い時と悪い時があります。

(ちなみに、「きれいな音」というのは、「自分が出したい音」という意味なので、人によってきれいだと思う音は違うと思いますが。ここではわかりやすく「きれいな音」と書いてしまいます)

さて、「きれいな音が出ない」という時、それぞれの個別の原因は様々にあるかと思いますが、私が大事にしているのはこの2つです。

①その楽器の音の出し方(原理・やり方・一般的に言われていること)を知る

②自分でただ色々自由に弓で弦に触れてみて、「良さそうなところ」を探る

そして最終的には、①と②の「自分なりの落としどころ」を見つけます。

それぞれについて書いてみたいと思います。

①その楽器の音の出し方(原理・やり方・一般的に言われていること)を知る

どの楽器も、「この楽器で音を出すにはこういう風に音を出す」と一般的に言われている基本の方法があると思うんです。

まずはそれを簡単に「知る(頭で理解する)」と良いと思います。

ニッケルハルパの場合は、たとえばよく言われるのは、

「音を出す直前だけ、弓で弦に圧力をかけ、音を出したその瞬間にその圧力を解放してスーッと弓を動かす・弓を動かしている間はそこまで圧力をかけなくて良い(弓を弦に乗せている状態で良い)」

といった感じでしょうか。

真逆の2つのアクションを、音を出すごとに仕切り直して行っているような感じです。

(最初に圧力をかけないと音があまり出ませんし、反対に、ずっと圧力をかけたままだと音がつぶれたり音程が低くなったりします)

人によって、実際の音の出し方は違うと思いますし、この方法もケースバイケースなので、音を出している間にもあえて圧力をかける場合もありますが、基本はこんな感じですね。

そこからさらに深堀していって、たとえば「弓で弦に圧力をかけるってどういう状態なのか?」というと、これは

  • 「弓が弦にひっかかる感じ」
  • 「弓と弦に摩擦が生じて、弓が動かせない状態」
  • 「弓を動かした際に『クッ』という引っ掛かりの音が入るような状態」

みたいな風に、感覚的にとらえることができます。

同様に、「圧力をかけずに弓を弦に乗せてただ動かす」というのも、

  • 実際に弦の上にただ弓を乗せて力を入れずに動かしてみる
  • 「裏返った弱弱しい音しか出ないくらいの力加減であえて弓を上下に動かしてみる」(←実際、音を出している間はこのくらいの力加減で充分だそうです)

などを試してみることで、なんとなく、感覚的にわかる/頭では理解できる、のではないかと思います。

ただ、「理解している・知っている」ことと、「実際にできる」ことは別なので、ここでまた別のことをやります。②です。

②自分でただ色々自由に弓で弦に触れてみて、「良さそうなところ」を探る

そんな風に原理を理解したうえで、あえて今度は①の内容を一回忘れて、「自分の感覚で良さそうなところを探りながら弾いてみる」というのをやってみます。

おすすめは、開放弦(何もキーを使っていない状態)の音で、弓を下げたり上げたりしてみることです。

ニッケルハルパなら、「ラ」(A)か「ド」(C)の音あたりです。(慣れてきたら他の音でも良いと思います)

この時は、自由な動きに加えて、あえてさきほどの原理に「反する」ような動きも実験のような感じでたくさん試してみると良いと思います。たとえば、

  • ずーーっと圧力をかけて弾いたらどうなるのか?
  • あえて音の真ん中だけ圧力をかけたらどうなるのか?(実際そういう弾き方をする時もある)
  • 弓を動かすスピード、速めたり遅くすることで違いはあるのか?
  • 駒の近くや遠くを弾いてみたら違いがあるのか?

あまり深く考えずに、「なんとなく」な感じで色々試してみると、「このくらいの力加減だと、わりと良い音が出るかも」みたいなものが、少しずつ感じられると思います。

で、特に私が自分で「良いな」と思うのは、「弦からの反発を感じる」ということです。

ここまで力を込めると弦の反発を殺してしまうけど、このくらいだと共存できるな、とか。

弦からの反発をこういう風に感じると、響きがこんな風になる(良くなる・悪くなるetc)な、とか。

理論や原理はあとから説明されたものだから、自分の感覚もまた大事

さきほどの原理や理論通りに弾こうと思うと、どうしても真面目な方ほど「その正解にたどり着くためにどうしたら良いだろう?」とすごく考えると思うのですが、この理論って、あくまでも「すでにできている人が、自分の身に起きていることを、後から言葉で説明している」に過ぎません。

なので、その人たちも「この理論通りに弾こう」と思って弾いているというよりは、実際は「こういう感覚で弾くと良い音が出る」というもの(感覚的なゴール・基準・及第点etc)がすでに自分の中にあって、そこを目指して音を出している、という状態だと私は思うんです。

(そしてそれを後から言葉で説明したのが、さきほどの原理や理論)

で、教わっている方としては、その「目指すべき部分」は「自分がまだ感覚的につかんでいない」部分だったりするので、わからないまま理論だけ重視してやっていると、自分と楽器との関係性を置き去りにしてしまうと思うんですね。

なので、一度「自分の感覚でとらえる、楽器との付き合い方・音の出し方」というところに目を向けると良いのではないかな、と思っています。

「こういう風に弾くと、こういう音が出る・こういう風に弦の反発がある」ということを感じていくと、原理や理論に縛られすぎずに、自分の感覚でもって音の出し方を知ることができると思います。

①と②の落としどころを探る

そして、最終的に、理論に縛られすぎず、かといって100%自己流でもなく、「理論を取り入れた上で、自分に合う音の出し方・弾きやすい弾き方」というのを探っていけると良いのかな~と思います。

これは結構メンタルの部分も大きいかなと私は思っているのですが。

なんとなく、人によって「①を完璧にきわめよう」とか、反対に、「②の方向に全振りしたりしがち」な傾向がある気がするのですが、「両方取り入れつつ、どっちつかずな感じ」を、自分の中でバランスを見ながらやっていけると良いなと、私自身は思っているんですね。

これは日によって変わるかもしれませんし、曲によっても変わるかもしれません。

自分の音の出し方というのはいくらでもあって良いと思うので、「ただ1つの音の出し方の極意・真理」みたいなのを発見しなくて大丈夫ですし、毎回音の出し方が違っても良いと思います。

また、「音がきれいに出せるようになってから、この曲を弾こう」ではなくて、その曲を練習する過程で音を(自分の出したいように)出す方法を学んでいけば良いので、曲も色々と挑戦してみると良いと思います。

曲によって、求められる音の出し方も違うと思うので。


という感じで、今回は、「音をきれいに出す」ために、できることをご紹介しました。

参考にしていただけましたら幸いです。

では、良い週末をお過ごしください。