先日、鎖骨のことを書きましたが、
自分の身体のパーツの位置・形状を知る~身体が楽になる方法・鎖骨~
それに関連して、今回は肩甲骨を見ていきます。
肩甲骨も、鎖骨と同じく腕の動きに関してとても重要な部分です。
人によっては、肩甲骨の動きが良くなることで、全般的な生活の質も上がるかもしれません。
肩甲骨についての簡単な解説と、私が自分の肩甲骨をさわってみて思うことなどを書きました。
ぜひ参考にしてみてください。
肩甲骨ー腕の動きに影響する
肩甲骨は、多くの人が一度は耳にしたことがある部分だと思います。
特に、肩こりに悩んでいる場合などは、肩甲骨周辺のコリを日々感じながら生活している人も多いと思います。
演奏に関していえば、肩甲骨の動きの良さは、楽器を演奏する際の腕の動きの良さに直接影響します。
肩甲骨の動きが悪いと、腕の可動範囲が狭くなり、動ける方向性も限られてきます。
そこで無理に腕の動きを大きくしようとして、肩や首にまで力が入ったり、動きをカバーしようとして、肘や手の方にも痛みが出ることもあります。
肩甲骨の動きが良くなると、腕の可動範囲が広がり、腕の動きを大きくすることができます。
また、可動範囲だけでなく、より細かい単位で動ける(スムーズに動ける)ようになったり、肘や手首など他の関節とも連携しやすくなるので、繊細な表現ややわらかい音色も出しやすくなります。
肩甲骨の形状・関節
肩甲骨の形状と関節について、私のできる範囲で簡単に説明します。
肩甲骨の形状
(肩甲骨の形状はなんとなく想像がつくと思いますが、より立体的にとらえられるように、ここでは書いていきたいと思います)
肩甲骨は、三角形のような形をしています。
三角形の面の表面は真っ平ではなく、上部にななめひとすじの凸部分(肩甲棘)がスッと存在しています。
背中の右上と左上に、内側から外側上方に向かってななめに隆起している骨の部分、これが肩甲棘(けんこうきょく)です。
山の尾根のような感じで、そこだけ、目で見てわかるくらいに骨が出ています。
「肩甲骨をさわろう」と思って真っ先に手にふれる部分は、この肩甲棘であることが多いのではないかな、と思います。
もしかしたら、肩甲棘を肩甲骨の上端だと思っている人もいるかもしれません(私はそうでした)。
肩甲骨自体はこの肩甲棘の上部と下部にも平野のように広がっていて(下部の方が割合が大きい)、表面が筋肉などでおおわれています。
筋肉におおわれている分、上や下は少しさわりにくいところもあるかもしれません。
また、肩甲骨には烏口突起(うこうとっき)と呼ばれる部分もあり、これは肩の前側に突き出ていて、前からさわることができます。
鎖骨を外側にたどっていった際に、鎖骨のカーブが落ち着いたあたり、そのすぐ下の位置に、前に突き出ている骨の部分にふれることができると思います。それが烏口突起です。
さわった感じだと、「骨」というよりも「周りの肉に比べて1か所だけしっかりした部分があるな」くらいの感じかもしれません。
肩甲骨というと「背中側にある骨」というイメージですが、前からもさわれる部分があると知って、私はびっくりしました。
この烏口突起の周りも、結構こりやすいです。
このように見ていくと、肩甲骨が「背中側にある三角形の骨」というだけでなく、より立体的で複雑な構造であることが感じられると思います。
関節
主な関節としては、先日書いたように鎖骨に接している肩鎖関節と、上腕骨に接している肩関節、この2つの関節があります。
「2つの関節で繋がっている」というと、なんとなく骨の片側に一つの関節があり、その反対側あたりの離れた位置にもう一つの関節があり、その間でバランスがとられているというイメージを持つかもしれません(私はそう思っていました)。
しかし、これら2つの関節は離れているところにあるのではなく、かなり近い部分に両方が存在しています。
右の肩甲骨なら、肩甲骨の右上部分に、左の肩甲骨なら、肩甲骨の左上部分に、この2つが存在しています。
肩甲骨から直接じん帯で繋がっている関節は、この2つだけなのだそうです。
つまり、骨だけで見ると肩甲骨はとても「宙ぶらりん」な状態に見えます。
実際には、宙ぶらりんに見えるところは筋肉が支えていますが、こうして見ると「肩甲骨の動きの自由度は高くなっている」ということがよくわかると思います。
肩甲骨をさわってみる
以上をふまえたうえで、肩甲骨を実際にさわってみました。
肩甲棘がさわりやすいので、そこをたどりながら、内側のふちを上下にいってさわってみたり、脇の下から肩甲骨の下のふちのあたりにふれたりします。
肩甲棘以外の部分は、さわりにくい(わかりにくい)ところもあるので、なんとなくで大丈夫です。
さわってみて、私はこのようなことを思いました。
- 肩甲骨は思っていたよりもかなり外側にある(背中というより、脇に近い)
- 内側から外側にかけてかなり角度がついている。背中に並んでいるというよりは、後ろから前に向かってななめについているような感じがする
肩甲骨の位置
私は「肩甲骨は背中にある」というイメージだったので、なんとなく「背骨のすぐ横の背中」のあたりに「背中の平面に沿うように、左右の肩甲骨が並んでいる」というイメージを持っていました。
でも実際にさわってみると、肩甲骨は自分が思っていたよりもずっと外側(脇の方)にありました。
「背骨の横」ではなく、さわった感覚だと、「脇の真上~ななめ上のあたりをおおっている」ような感じです。
背中というよりも、脇とセット、というイメージの方が私にはわかりやすいかも、と思いました。
(これはよく考えれば当たり前なのですが。「背中とセット」というイメージが強かったみたいです)
私は肩甲骨が内側にあるイメージだったので、普段から肩甲骨を寄せようとしてしまって、肩甲骨の内側がこったり、楽器を構えた時に「腕が短くて足りない」と思ったりするのだと思いました。
肩甲骨の実際の位置を確かめることで、肩甲骨の内側部分が楽になると感じたのと、腕を前に出しやすくなるので、楽器を構えた時の背中~肩のあたりが楽になる・腕が前に伸びやすくなると思いました。
肋骨のカーブに沿っている(スライドする)
また、肩甲骨は、背中の平面に並んでいるのではなく、肋骨の楕円状のカーブに沿うようなかたちで、内側から外側にかけて角度がついた状態で位置しています。
言葉で伝えるのが難しいのですが、脇(肩関節)の方にいけばいくほど、肩甲骨が前側にせり出しているような感じ、というのでしょうか。
背中の平面にまっすぐに並んでいるのではなく、肋骨の円筒に沿うように並んでいるので、前後の角度がついていて、ふれてみると「思ったよりもななめになっているな」と感じました。
肩甲骨が動く際にも、肋骨のカーブに沿ってスライドするように動きます。これは、実際に腕を動かしながら肩甲骨にふれてみるとわかります。
「肋骨に沿っている」ということと、さきほどの「肩甲骨の位置」と、両方を感覚でとらえながら身体を動かしてみると、それ以前とは身体の感じ方や動き方、姿勢がかなり変わるな、と思いました。
イメージに自分の身体を合わせるのではなく、自分の身体にイメージを合わせる
肩甲骨は、よく耳にするし、私の場合は身体の使い方のレッスンで何度も扱っているものなのに、自分でさわってみると、鏡で見えているイメージや頭で理解しているイメージとは全く違う発見がありました。
発見があるということは、それだけ普段から、自分の実際の身体と違うものを頭の中でイメージしているということです。
自分のイメージに実際の身体を合わせるのではなく、自分のイメージを実際の身体に近づけることで、身体が本来のポジションや動きをとれるようになります。
たとえ今の自分の身体の状態や姿勢などが、「不自然だ」「こうあるべきじゃない」と自分で思っても、まずは今の自分の身体の状態を知り、それを受け入れることで、身体が自然と楽なポジションをとれるようになる、と私は感じています。
以上、肩甲骨について書きました。
肩甲骨をさわってみて、あらためて発見がたくさんあり、肩まわりが楽になってきたので、良かったなと思っています。
大事なのは、自分の身体に自分でふれてみて、実際の位置や形を自分でさわって知ることです。
ぜひ、参考にしていただけたら嬉しいです。
お読みいただき、ありがとうございました。