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スウェーデンの音楽紹介:『Ellen Lagergren』Josefina Paulson

/ ニッケルハルパ奏者

今回は、ニッケルハルパ奏者Josefina PaulsonによるCDアルバム『Ellen Lagergren』を紹介します。

Josefina Paulson

Josefina(ヨセフィーナ)はスウェーデンのニッケルハルパ界をけん引する奏者の一人です。

元気で若々しく、勢いがあり、あたたかい雰囲気の演奏をします。

ストックホルムの音大を出て以降、ずっと活躍されているイメージがあります。

日本にも演奏に来たことがあります。

ハーモニーフィールズさんのアーティスト紹介ページ「Jonas&Josefina」(日本語)

色々な奏者とのデュオを中心に、積極的に少人数(2~4人)でのアンサンブルによる伝統音楽の演奏を行っている印象です。

そんなJosefinaですが、(おそらく今年の初めに)ソロ演奏のみのCDアルバムをリリースしました。

Ellen Lagergren

アルバム名は『Ellen Lagergren(エレン・ラーゲルグレン)』です。

Ellen Lagergren(1882-1966)は、Josefinaの出身地方Västmanland(ヴェストマンランド地方)の、女性演奏家・伝統曲蒐集家だったそうです。

バイクに乗って、Västmanland内各地の伝統曲やそれにまつわるエピソードなどを集めていたそうです。

Josefinaは、このEllenが集めて伝えた曲を、よくソロで演奏していました。

今回はそういった曲を集めて、ニッケルハルパやコントラバスハルパ(昔のニッケルハルパ)を使い、アルバムとして仕上げたようです。

と言っても、CDはまだ手に入っていなくて、ライナーノーツなどが無いので、ここに書いたことはすべて私の推測ですが。(違っていましたらすみません)

ジャケットに、バイクに乗った女性とJosefinaが描かれているので、たぶんそうなのではないかと思いました。この絵、すごくかわいいですね。CDを聴くと、この2人と一緒に伝統音楽の旅をしている気分になれる、ということなのかもしれません。

Ellen Lagergrenについては、こちら↓の動画で本人が少しだけ話しています。

スウェーデン語ですが。

内容はだいたいこんな感じです。1930年代、Ellen Lagergrenはバイクに乗り、Västmanland(ヴェストマンランド地方)で伝わる曲を集めていました。中でも女性の歌(もしくは女性の曲)を集めていて、そのうちの一人がAnna Lisa Normanという1800年代の歌い手の歌です。彼女(Anna)は歌い手でしたが、息子など、彼女の周りには楽器を演奏する人達がいたので、彼女(Anna)の伝えた歌は楽器でも演奏できる曲になっています。

とのことです。もしも間違っていましたらすみません。

私はこの動画のJosefinaの演奏が好きで何度も見返していたので、この曲が収録されているアルバムが出て嬉しかったです。

アルバムの曲はSpotifyやYouTubeなどでも聴くことができます。

また、私が留学していた学校ESIでJosefinaによる特別レッスンが開かれていたそうで、レッスン概要と本人の紹介がHPに書かれていたのですが、そちらにはこんなことも書かれていました。

Josefina vurmar för musiken från Västmanland och tycker om att använda nyckelharpan som en enmansorkester/ i solo tradition, där låten byggs upp i flera dimensioner med dubbelsträngsspel utifrån harpans hela potential och att få alla strängar att klinga med.

ヨセフィーナはVästmanland地方の音楽に魅せられていて、ニッケルハルパを一人きりのオーケストラとして/ソロの伝統の中で扱うことを好んでいる。それは、楽器のポテンシャルのすべてを使って重音(2つの弦を同時に弾くこと)を奏でたり、すべての弦を一緒に響かせることによって、曲をいくつもの様相で構築することである。

ESIのページSpelkurs – ”Ut på låtjakt med Ellen Lagergren” 4 marsより引用

私の訳が微妙かもしれませんが、言いたいことは伝わりますでしょうか。

重音やすべての弦の共鳴を駆使することで、一人きりのオーケストラのような感じで演奏し、ソロの伝統におけるニッケルハルパの可能性を引き出している、という感じかなと思います。

こういう風に説明してもらうと、「なるほど、そういう風に思って弾いているのだな」と思えておもしろいです。

音楽は、そのまま音楽だけ聴いていてもちろん楽しいものですが、本人の意図や曲の背景を聞くとより一層楽しめると感じます。

JosefinaのCDとは関係ない話になりますが、たとえば演奏者本人の意識が高いところにありすぎて、私にはついていけない、理解できない…と思ってしまう音楽を耳にする時もよくあります。

でもそんな時に、説明を聴いたり読んだりしながら、くらいついてでも聴いていくと、だんだんとわかってくる瞬間があり、楽しめるようにもなります。すると、「演奏家に自分の世界を広げてもらった」という気分になります。その瞬間が好きです。

JosefinaのCDは、そういうわかりにくい雰囲気の音楽やシリアスな雰囲気のCDとは違っていて、入ってきやすく親しみやすい曲調と演奏です。

普通にまったりと聴くだけで、落ち着いたり元気になれる演奏だと思います。

それでも、やはり聴けば聴くほど本人の演奏世界に自分も入っていける気がして、とても魅力的です。

技術的な上手さはもちろん根底にありますが、遊び心や感情が前面に出ている演奏だと思いますし、良い感じの古さみたいな音色(歴史的な古さ)も感じます。

ぜひ、聴いてみてください。


以上、Josefina PaulsonによるCDアルバム『Ellen Lagergren』をご紹介しました。

お読みいただき、ありがとうございました。

参考:「Kulturarv Västmanland」のEllen Lagergrenに関するページ(スウェーデン語)