今回はFrom-Olle(フロム・オッレ)という演奏家についてご紹介します。
ヘルシングランド地方の昔のフィドル奏者です。
(情報がそんなにたくさん無かったのですが、わかる範囲で紹介したいと思います)
From-Olle(フロム・オッレ、1796-1876)
From-Olle(フロム・オッレ)、本名はOlof Jonsson From(オーロフ・ヨンソン・フロム)、1796~1876年。
Wikipediaによれば、
「From-Olleは、イェムトランド地方のLapp-Nils(ラップ・ニルス)、メーデルパッド地方のSpel-Gulle(シュペール・グッレ)、ダーラナ地方のPekkos Per(ペッコス・ペール)と並び、19世紀前半のスウェーデン中部における最も優れた演奏家4人のうちの1人として称されている」
と紹介されています。
(※Lapp-Nils(ラップ・ニルス)→Lapp-Nils(ラップ・ニルス)について)
ヘルシングランド地方の演奏家と言えば、以前Hultkläppen(フルトクレッペン、1834-1898)を紹介しました。
Hultkkläppenは主に19世紀後半に活躍した演奏家で、世代的には少しかぶっていますが、彼はヘルシングランド地方北部の演奏家であったのに対し、From-Olleはヘルシングランド地方中部あたりの演奏家ですね。
生まれ~演奏家としての活躍
From-Olleはヘルシングランド地方(Hälsingland)のJärvsö(イェルヴスェー)地区、Sjövästa(フェーヴェスタ/ショーヴェスタ)の生まれです。
「Järvsöの演奏家」としてよく紹介されます。
彼の父は、Jon Ersson From(ヨン・エルション・フロム)という人で、兵士(soldat)として働いていました。
(※From-Olleが生まれる前後だと、第一次ロシア・スウェーデン戦争(1788-1790)や、第二次ロシア・スウェーデン戦争(フィンランド戦争)(1808-1809)がありますが、From-Olleが生まれた頃はちょうど戦争が無かった頃かもしれません。また、当時は、兵士というのは一般的な職業の1つだったと私は解釈しています)
From-Olleは、他の有名な演奏家同様、子どもの頃から演奏が得意だったようです。
演奏家としての彼の評判は、当時ヘルシングランド地方内にとどまらず、隣の地方までも伝わっていました。
彼に「結婚式でぜひ演奏してもらいたい」と思う人がたくさんおり、言い伝えによると、200件以上の結婚式で演奏し、どの結婚式に行く時にも必ず「2曲」を作っていったそうです。
1曲は花嫁、もう1曲は花婿に向けて。
(※通常は1曲であることが多いと思います)
現在では、From-Olleが伝えたと言われる曲は、20曲ほど残っているそうです。
彼の弟子(生徒)たち
From-Olleが成人後に最も長く暮らしたのは、Sjövästa(出身地)の東隣の村、Boda(ボーダ)という所です。
彼の弟子であった演奏家たちも、そのほとんどが同じ地域に住んでいました。
たとえば、盲目の演奏家「Liv-Ante」(リーヴ・アンテ。1829-1905)もBodaに。
そして「Lill-Hans(Spel-Hans)」(リル・ハンス/シュペール・ハンス。1823-1887)は南西のStråsjö(ストローフェー/ストローショー)や、Kallmyr(カルミール)に住んでいました。
その他にも、「Flinka Johane」(フリンカ・ヨハネ(ヨワネ)、1827-1905)や「Lappmyrgubben」(ラップ・ミール・グッベン、1839-1913)、「Jönsagubben」(ユンサ・グッベン、1816-1899)などが、彼に教わった演奏家として今も知られています。
音源など
From-Olleの曲の演奏です。私も詳しくないのですが、いくつかリンクを貼っておきます。
今回メインで参考にしたのはこちらです。
・Musik i KallmyrのHP「From-Olle」のページ
Wikipediaの情報も、こちらのページの文章がそのまま載っている部分が多いようです。
その他参考ページ
・Wikipedia「From-Olle」(スウェーデン語)
Wikipediaには、From-Olleを描いた絵(もしくは写真?)が載せられています。
From-Olleについては、あまり情報はたくさん無いようで、From-OlleについてのCDの解説に書いてある情報がほとんどのようです。
(「本もある」と書いていたのですが、私が本だと思っていたものもCDだったので、修正しました。2025/8/14)
ただ、1つとても興味深いのが、From-Olleについてのお芝居(「Ingen som jag」)が1997年に上演されていて、それが全編YouTubeで見られるんですね。
これは1999年にTV放送されたバージョンだそうですが、30分ずつ3つの動画に区切られていて、見ることができます。
オープニングだけでもすごくワクワクする導入ですね。人形が印象的です。
私は、この動画は6年前くらい(ニッケルハルパの留学の前後くらい)に日本人の知人に紹介してもらったのですが(「内容がわかったら教えてほしい」と言われていた)、
その時は全然内容がわからなくて、普通に寝落ちして終わったんですね。
でも今回見直してみたら、全部のセリフや場面がわかったわけではないのですが、なんとなくわかった部分がああり、とてもおもしろいなと思いました。
こちらのお芝居を見ると、From-Olleの人生がよくわかるかなと思うので(脚色されている部分もあると思いますが)、もしできれば内容(場面だけでも)についても、いつか簡単に紹介したいなと思っています。
余談(兵士の家について)
また、余談ですが、From-Olleの父親について、「兵士」(soldat)という紹介がありました。
私がよく見ているスウェーデンのTV番組で、家の歴史を扱う番組があるのですが、その番組で出てくる典型的な昔の家のタイプの1つとして、「兵士の家」(soldattorp)というのがあります。
これは、兵士になると国や軍から与えられる「家」のことです。兵士になるというのは命がけで大変なことなので、その分、住むところが与えられていたのですね。当時としてはきちんとした家だったので、結婚することもできました。
(当時の結婚は、恋愛結婚というよりは、そういった「条件」で結婚することが多かったので、「家(住むところ)がある」というのが、結婚に有利でした。また、貧しく厳しい暮らしでもあったので、一緒に住むパートナー(働き手)がいる方が、お互いの生活のしやすさにもつながっていました)
この家は、兵士本人が戦地におもむいている間も家族が住むことができますが、もしも戦争で本人が亡くなってしまった場合、家族はそこを出ていかなくてはならず、なかなか厳しい時代だったことがうかがえます。
ということで、最後の方は余談が入りましたが(そしてこういう余談で間違ったことを書いていないか常にドキドキしてしまいますが)、今回はFrom-Olleについてご紹介しました。
From-Olleも、どんな人なのか個人的には気になっていたので、今回調べられて良かったです。
お芝居の内容も、なるべく早めにご紹介できるように頑張りたいと思います。