演奏の際には、ほとんど必ず、MCで話す機会がセットでついてきます。
この機会、私はとても大切に思っているのですが、同時に「話をすることの難しさ」も感じてきました。
今回は、MCなどで話をする際のコツについて、自分なりに考えたことを書きます。
書き言葉と話し言葉は違う
最近よく感じていることがあります。
それは、「書き言葉と話し言葉は違う」ということです。
文章としては読みやすい文章でも、話としては聞きにくい(わかりにくい・つまらない)ことがあります。
これ自体はよく聞く話だと思いますが、自分のMCなどを通して、最近あらためて実感しています。
原稿通り話せているのに、話しにくい気がした
普段、私はMC用に原稿を準備し、話の流れを事前に整理し、把握してから、演奏にのぞむことが多いです。
演奏の際には、何も見ません。
流れは頭に入っているので、その流れのまま、MCをします。
でも、いざお客さんの前で話していると、ふと「うーん、話しにくい」と思ってしまうことがあるのです。
自分が準備した通りに話せているのに、なぜか、話しにくい。
話しにくいのは、もちろんその場の雰囲気やお客さんのせいではありません。
お客さんはよく聴いてくださっているのに、私の中の何かが、やりにくさを感じさせていました。
そこで、思いました。
「私が準備した原稿自体が、MCとして話すには、ちょっと違ったのかもしれない。原稿として、書き言葉の状態では読みやすかった文章も、いざ話してみると、話しにくい(聞きにくい)のかもしれない」と。
ちなみに、「そもそも原稿なんか用意するからダメなんだ、原稿はいらないんだ」と思う人もいるかもしれません。
私も一時期そう思って、原稿なしでやってみたのですが、そうすると余計にぐちゃぐちゃのグダグダになることが発覚しました。
原稿が無いと、時間の管理もめちゃめちゃになります。(たいてい、長引いてしまう)
ですので、ソロの時には、一度事前に文字にしてアウトプットするようにしています。
書き言葉と話し言葉の違い
というわけで、書き言葉と話し言葉の何が違うのか、私なりに考えてみました。
違いがわかれば、自分が置かれる状況も把握しやすいし、対策も見つけやすいからです。
①時間がかかる
まず1つ目の違いは、「文章を読むよりも、話を聞く方が、時間がかかる」ということです。
書いてある文章は、パッと見て、即座に情報をつかむことができます。
どこに何が書かれているか、一目ですぐにわかりますし、その中から自分が必要とする情報だけを選択して、一部分だけを読むことができます。
しかし、話し言葉(話)は違います。
話し手の速度に合わせて、一つ一つの単語を順番に聞きながら、話を聞かざるを得ません。
これは時間がかかります。
しかも、重要な情報がすべて最後に来ているような文章の場合、文を最後まで聞かないと話の内容が見えなくて、まどろっこしい思いをするかもしれません。
(そういう文章が必ずしも悪いわけではありませんが)
②集中力が続かない
また、話し言葉の場合、1文に情報が理路整然とつめこまれていると、聞きにくくなってしまうだろうと思いました。
聞きにくいというよりは、「疲れる」「集中力が続かない」という感じでしょうか。
聞き手は、すべての単語を拾って聞くような聞き方はしません。
適度に休憩しながら聞いていると思います。
1文に情報を詰め込まず、ちょっとずつ休憩しながら聞けるような、余白のある文の方が良いなと思うようになりました。
自然な会話で思い浮かべてみるとわかるのですが、ちょっとした余白や寄り道が、会話のテンポの心地よさを生み出していますよね。
そんな風に自然に話せると良いなと思いました。
対策
書き言葉と話し言葉の違いを考えたうえで、
できるかどうかは別にして、私なりの対策(MCの準備の仕方、話をする際のコツ)を考えてみました。
①聞き手の想像力を利用する
話し言葉は「時間がかかる(最後まで聞くのに時間がかかる)」と書きました。
これは見方を変えれば、「話を聞いている間に、聞き手が想像する時間が生まれる」とも言えます。
この時間をうまく使えるかどうかが、聞きやすい話になるかどうかの秘訣だと思いました。
つまり、話す場合には、書き言葉のように最初から最後まで整然と話すのではなく、聞き手の想像力を利用するような文の組み立て方を工夫します。
具体的には、たとえばこのような感じです。
- 聞き手が想像しやすいような単語の順番、話の持っていき方を工夫し、余分な言葉をカットする
- 聞き手の想像にゆだねて、適度に情報をカットする
この2つを意識することで、より聞きやすい話になるのかもしれないと思いました。
「余分な言葉をカットする」とか、「情報をカットする」と書いたのは、言わなくてもわかることをぐだぐだと説明するのをやめて、話に余白を作ったり、伝える情報を厳選するという意味です。
私の場合は特に、つい情報を詰め込みすぎてしまいます。
「どの情報を削るか」を意識することが大切だと思いました。
②やさしい言葉や表現でやわらかく表現する
書き言葉は、「単刀直入に・簡潔に」書いてある方が読みやすいと思いますが、
話し言葉の場合、あえてやさしい言葉や表現で、少し蛇行しながら進む方が良いのかも、と思いました。
やさしい表現や、やわらかい表現があると、それだけで話に余白ができます。
その間に聞き手は想像したり、休憩することができます。
休憩や余白と言っても、別に雑談を入れたり、無言の時間を長くとる必要はありません。
ましてや、①でせっかく削った説明を入れる必要もありません。
やわらかい表現をとり入れることで、お客さんの心が適度に休まり、重要な情報が耳に入りやすくなると思いました。
練習あるのみ
こういったことを考えてみましたが、これらを実行するには、結局のところ、「やってみるしかない」と思っています。
原稿を作ってみて、それを直して、口にして練習してみて、また作り直して、という感じです。
練習あるのみです。
話を聞く人の気持ちになって、自分が話していることを聞いて、改善を試みていくことです。
私が最初に「原稿通りに話せているのに、なぜか話しにくい」と感じた部分も、
おそらく「ここ、お客さん的にはなんとなく聞きにくいかも/わかりにくいかも/つまらないかも」
と無意識に自分で感じていたからだと思います。
自分が話しにくい部分は、お客さんも聞きにくい部分なのかもしれません。
大切なのは楽しんでもらうこと
話をする時、つい「情報伝達」に意識がいってしまいます。
これを伝えなきゃ、あれを伝えなきゃ、楽器紹介をしなきゃ、など。
もちろん情報伝達も大切ですが、私がなによりも大切にしたいのは、演奏全体を通じてお客さんが得られる「体験」です。
以前同じことを書いた記事→音楽は体験。演奏することは、体験してもらうこと。
スウェーデンの話をする時にも、スウェーデンの自然の風景や、おおらかな雰囲気、音楽を楽しんでいる様子などが思い浮かぶような伝え方ができると良いなと思うし、
体験全体を通じて、お客さんに「何かプラスになるような気分(楽しい、おもしろい、元気になる、癒される)」になってもらえると良いなと思っています。
何よりも大切なのは、まずは「楽しんでもらうこと」なのです。
そのためには、情報を詰め込む・情報を伝える以外にも、やるべきことがあると思いました。
また、お客さんが聞きやすい話は、きっと私自身にとっても自然な話し方、話の流れになることが多いだろうと思います。
そういう話の流れを作れれば、おそらく最終的には、原稿を作ったり覚えたりしなくても、言葉が出てくるようになるのではと感じています。
5月13日にもお話と演奏の機会がありますが、そちらも含めて、引き続き頑張っていきたいと思います。
【演奏情報】5/13(土)13:20~15:00「北欧音楽の調べ」@駿河台大学(第二講義棟4階7405教室)
以上、「MCの準備、話をする際のコツ」について考えたことを書きました。
音楽をよりゆったりと聴いてもらうために、言葉で伝える部分も、自分らしい伝え方ができるよう工夫することは大切だと思っています。
別に、お笑い芸人のようにおもしろく伝える必要は特にありませんので(私はそういうタイプではない気がするので)、私自身が納得のいく伝え方ができるように、日々考えていきたいです。
ぜひ、何かの参考になれば嬉しいです。
お読みいただき、ありがとうございました。