昨日に続き、Olov Johanssonの2007年のアルバム「I LUST OCH GLÖD」を紹介しています。
昨日のブログはこちら→ニッケルハルパのアルバム紹介:Olov Johansson「I LUST OCH GLÖD」(2007)①
一昨日のブログ(「Storsvarten」についての記事)はこちら→ニッケルハルパのアルバム紹介:Olov Johansson「Storsvarten」(1997)
内容についての感想(続き)
内容について、思ったことの続きを書いていきます。
①Catriona McKayとのデュオ-2曲なのに存在感がある
Catriona McKayはスコティッシュハープの奏者です。
今回ご紹介している「I LUST~」のアルバムの後、OlovとCatrionaはデュオでのアルバムを2枚出し、ツアーもされています。
そんなお二人のデュオですが、今回私がアルバムを見直して驚いたのが「このデュオの曲って、アルバムの22曲中たった2曲だけだったのか!」ということです。
もっとたくさん入っていると思い込んでいました。それくらい、1曲1曲の存在感があります。
たとえば「Skottis」↓
カッコいいですよね。聴いていて、はっとさせられる瞬間がたくさんあります。
今回聴き直してみて思いましたが、お二人とも技術力が高いだけでなく、探求心と好奇心を持って演奏しているのが伝わってくるから、聴いていてわくわくするのかなと感じました。
二人だけの世界観で、とても素敵です。あらためて思います。
②Olovのフィドル演奏-やわらかく、丁寧
さて、このアルバムでは、Olovはフィドルも弾いています。
Olovのニッケルハルパの演奏に対する私の印象は、「鋭い、明瞭(クリア)、丁寧、理知的、細かいところまで計算されている」ですが、
一方で、Olovのフィドル演奏に対する私の印象は、「やわらかい、素朴、丁寧、やさしく跳ねている」なんです。
「ニッケルハルパとフィドルで印象が違うなあ」と、留学中から思っていました。
そしてその印象は、このアルバム「I LUST~」を聴いていても変わらず、むしろ「Olovのフィドルはやっぱりそこが良いところなのでは」と今回思いました。
Olovが一人でフィドルを演奏しているのがこちら↓「Ena foten i Uppland」
(個人的には、「ちょっとかわいい」とも思っています)
Olovと同じウップランド地方の奏者でも、もっと情熱的に弾いたり、もっと端正な感じで弾いたりと、奏者によって弾き方は違うので、色々な弾き方の良いところを発見できると、聴いている自分の世界が広がるかなと私は思っています。
③Mikael Marinとのデュオ-楽しそうなおじさん2人、昔の演奏家たちみたい
Mikael MarinはOlovとは長い付き合い(41年くらい)のフィドル(ヴィオラ)奏者で、「ミッケ」と呼ばれている方です。
そんなお二人ですが、今回ライナーノーツを読んでいて「そうか」と思ったのは、まず「このアルバムでのこの二人のデュオの時には、全曲Olovがフィドルでメロディをとっている」ということです。
たとえばこちら、「Polska efter August Bohlin」。
CDを購入する前はどちらがどちらをやっているかもよくわからなかったので、「そうか」と思えただけでも聴き方が変わりました。
また、このお二人は付き合いが長いだけではなく、曲を教えてくれていた「先生のような存在の人達」が共通していた(本人達も後から知った)ということで、演奏方法の共通点や、共有している曲のレパートリーがとても多いそうです。
なので、こちらも「二人の世界観」というのがすでにあって、それがとても楽しそうです。私的には平和でのどかな世界という感じですが。
ただし、レパートリー的に曲調がどの曲も似ているので、最初に聴いた時はあまりピンとこなかったというか、他の曲に比べてあまり印象に残りませんでした。
たとえば、「De Geers polska」↓
特に、Olovは「Catrionaとのデュオの時」のような鋭いニッケルハルパのイメージがあるし、この二人(Olov, Mikael)の組み合わせも、どうしても「カッコいい演奏」を期待していたので、最初に聴いた時は自分のイメージとのギャップがありました。
ただ、あらためて演奏を聴き直してみると、この二人の得意分野・バックグラウンド・楽しいと思うこと・本人たちの興味みたいなものが演奏から伝わってきて、「昔の演奏家たちが、同じような伝統曲を笑いながらあれやこれやと楽しげに弾いている様子」が思い浮かぶような気がして、「やっぱり良いな」と思うようになりました。
楽しそうに弾くおじさんたち、という感じです。本人には恐れ多くて言えませんが。
二人に対する見方を変えるだけで、同じ演奏に対する見方が変わるんだな、とおもしろく感じました。
④Kalle Almlöfとのデュオ-CDを購入してやっとちゃんと聴いた
Kalle Almlöfは、フィドル奏者です。
私はKalleについては全然詳しくない(有名な奏者だ、くらい)のですが、その分、今回は、OlovのフィドルとKalleのフィドルとの違いをアルバム内で聴き比べたり、Olovとのデュオを楽しんで聴いたりしてみました。
正直、「Kalleの音はきっと良い音なのだろう」と思いながらも、CDを購入する前はなんとな~く聴いていただけでしたので、ライナーノーツを見ながら聴くことで「なるほど」と思い、「やっとちゃんと聴けた」という気がして嬉しくなりました。
私はニッケルハルパに比べてフィドルの演奏を聴き慣れていないので、聴き方がわからない時がよくあります。
ライブのような生演奏だと良いのですが、こういう音源だと情報がさっぱりなので、「誰が何を弾いているのか」「どういうフレーズを楽しんでいるのか(曲の地域など付属情報)」等がわかった方が、聴きやすくなります。
Kalleとのデュオは、Mikaelとのデュオとはまた全然違う雰囲気なので(選曲が違うので)、デュオ同士で聴き比べてもおもしろいと思いました。
以上、前回に引き続き、「I LUST OCH GLÖD」を聴き直してあらためて思ったことを書いてみました。
聴き直すことでアルバムの良いところをたくさん見つけられたと思っているので、その気持ちがぜひ伝わっていましたら嬉しいです。
お読みいただき、ありがとうございました。