峰村茜のホームページへようこそ!どうぞごゆっくりご覧ください。

1曲を深める練習のメリット5つ

/ ニッケルハルパ奏者

練習動画の記事の中で、「私は1曲を深めていく練習が好きだ」と書きました。

【動画】最近の練習動画3つ。Djävulspolska、Härjedalsschottis、Brudpolska efter Wilhelm Gelotte

今回は、「1曲を深める練習のメリット5つ」について書きたいと思います。

1曲を深める練習

1曲を深める練習というのは、ある1曲をずっと練習したり、長期的に弾き続けて、1曲を深めていく、という方法です。

別に1曲ではなくても(何曲でも)良いのですが、じっくり取り組むと、自然と曲数は限られてくると思います。

もちろん、色々な曲にふれるためにたくさんの曲をわーっと練習するのも、また一つの練習方法です。それはそれでメリットがあると思います。

1曲を深めていくことのメリットは、私はこのように考えています。

①曲を通して自分の癖を知ることができる

スウェーデンの伝統音楽は、1曲が1分くらいです。

長い曲を弾き慣れている人にとっては、もしかしたら「こんなの簡単だ~」と思うかもしれませんが(そう思ってもらうのは良いことだとも思いますが)、

実は色々な要素がつまっていて、たかが1分、されど1分、です。

伝統音楽ならではの「音の出し方」「音色の繋げ方」「フレーズの持っていき方」「リズムの感じ方」などがあり、普通に(伝統音楽のことを知らずに)1曲を弾いただけでは、出せない音の感じ、音楽の繋がりというのがあります。

自分の癖を知り、違いを発見する良い機会になる

では伝統音楽らしく弾くためには、どうしたら良いのか?ですが、

それは「その人が現時点で持っている『演奏の癖』によって変わる」と思います。

誰でも、多かれ少なかれ演奏の癖があります。

これは、『その人が今までに演奏してきた音楽ジャンル』による影響もあるかもしれませんし、『その人自身の個人的な癖』による影響もあります。

(私は、ジャンルよりも、個人的な癖の影響が強い場合が多いのではないかと思っていますが)

また、今まで音楽をあまり演奏していなかった・楽器をあまりやってこなかったという人も、

音楽を聴いている時のリズムのとり方に癖があったり、「楽器を弾いている人はこう弾いているのだろう」というイメージがあるので、それが癖に繋がることはよくあります。

癖のない人はいないと思います。

そういった自分の癖やイメージと、伝統音楽のその1曲の弾かれ方がどう違うのか?

1曲を通して、伝統音楽の奏者の演奏を見たり聴いたりして、自分の演奏との違いを1つ1つ発見していくことで、自分の癖に自覚的になるとともに、伝統音楽らしい演奏ができるようになっていきます。

もしくは、客観的に誰かにアドバイスをしてもらえる状況(レッスンなど)なら、アドバイスしてもらうなど。

1曲をじっくり深めていくことで、自分の癖と、伝統音楽の特徴と、それぞれを発見する良い機会になります。

②曲を通してテクニックを身に着けることができる

伝統音楽は「楽器の技術を磨いてから曲を弾く」のではなく、曲を通して楽器の技術を磨いていきます

この曲で、こんなリズムが必要とされているから、こういう弾き方を身に着けようとか。

この曲で、こんな音が必要とされているから、こういう弾き方を身に着けよう、という。

こういった練習は、たくさんの曲を、ただメロディの音だけ覚えてわーっと弾くのとはまた違う練習になります。

1曲にじっくりと取り組むことで、その曲が持つエッセンスをしっかりと練習し、自分のものにするこができます。

③他の曲にも応用できる

そのようにして身に着けたテクニックは、他の曲にも応用できる時があります。

応用できるかどうかは、音源を聴いてみたり、自分で試してみないとわかりませんが。

応用できるかどうかに関しては、たとえば曲の種類や、「8-delspolska/16-delspolska」の違い、「どこの地方の曲か」といった要素をヒントにしながら、自分で試していくと良いと思います。

スウェーデンの伝統音楽でよく出てくる曲の種類5つ

16-delspolska、8-delspolska、Triolpolskaについて(その1)リズムによる分類/ダンスの分類の違いと、それぞれの解説

16-delspolska、8-delspolska、Triolpolskaについて(その2)16-delspolskaの音源/動画

16-delspolska、8-delspolska、Triolpolskaについて(その3)8-delspolskaの音源/動画

16-delspolska、8-delspolska、Triolpolskaについて(その4)Triolpolskaの音源/動画

もしくは、これも他の人に(レッスンなどで)アドバイスを求めると良いかもしれません。

テクニックとして他の曲に応用できなくても、1曲を通して身に着けた基礎力、演奏にかかわる身体やメンタル(練習の習慣化など)の力は、他の曲にも必ず生きてきます

④耳が肥えてくる

たくさんの曲を聴くことももちろん大切ですが、1曲を突き詰めていくことで、自分の耳を肥やすことができます。

これは、自分の演奏を上達させるために、とても重要なことです。

より細かい違いを聴き分けられるようになればなるほど、自分の演奏に足りないものがわかるし、演奏動画や音源からより多くの情報を得ることができます。

これにより、自分が自分のコーチとなって、上達していくことができます。

私自身は「身体の使い方」も同時に見ているので、「聴こえるもの」と「目で見た情報」を合わせて、自分の演奏に活かすようにしています。

⑤曲が自分の中に入ってくる

1曲を深く練習すればするほど、その曲が自分の中に入ってきます。

曲を覚えてすぐの頃は、音を間違えないようにメロディを思い浮かべながら弾いたり、運指を思い浮かべながら弾いたり、響きを聴いたり、リズムに注意したり、色々なことに気をつかいながら演奏することになりますが、

それらを普段から意識しながら練習すればするほど、だんだんと意識することに使うエネルギーが少なくて済むようになり、

身体が勝手に動くような感じで、曲を弾けるようになります。

何も考えずに弾く、ということではない

「身体が勝手に動くように弾ける」と書きましたが、これは「何も考えずに演奏する」という意味ではありません。

意識は常にし続けるし、どう演奏したいかは常に考えます。

ただ、意識し続ければし続けるほど、意識するのが楽にできるようになる、ということです。

すると、演奏がより安定し、曲のメロディ以外の様々な要素(自分の身体の状態、今自分が演奏している空間、一緒に弾く相手の様子、お客さんの様子)などにも気を配ることができるようになります。


以上、「1曲を深める練習のメリット」を5つ書きました。

私はこういう練習が好きなので、普段からよくやっています。

ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。

お読みいただき、ありがとうございました。