楽器を弾いている時、「いかに力を抜くか」というのは、永遠の課題だと思います。
今回はこのことと、演奏する時の「イメージ」の大切さについて書きます。
つい力をこめてしまう
ニッケルハルパに限らず、楽器はなんでもそうかもしれません。
「演奏する時、つい余計な力をこめて演奏してしまう」というのが、誰にとっても、多かれ少なかれ永遠の課題なのではないでしょうか。(楽器だけでなく歌もですね)
力が入ってしまう箇所・身体の部位などは、楽器によって少しずつ違うと思いますが、ニッケルハルパの場合は特に「弓を持つ手・キーにふれる手、腕、肩、首」のあたりかと思います。
あと、私は以前クラリネットをやっていたので、その時は「あご・のど・首・おなか」などに無駄に力が入ることがよくありました。
本当は、特定の部位に力が入っていると感じている時は、それ以外の部位もつられて力が入っていることが多いので、結局は全身に力が入っていたりします。
特に「肩・首」などは、なんの楽器でも力が入る場所かなと思います。
この「つい力をこめてしまう」ことについて、私が思う最も根本的な原因と、それへの対策を考えました。
私の経験をもとに書いているので、当てはまらない方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
原因:力をこめて演奏するものだと(無意識に)思っている(=演奏イメージの問題)
力をこめてしまう原因には色々なものがあると思いますが、私が一番強く感じていることを書きます。
それは、「無意識に『力をこめて演奏するものだ』と思っている」ということです。
「間違った演奏イメージを持っている」とも言えます。
緊張で力が入ってしまう…といったこと以前に、根本的な原因として、こちらの問題があるのでは、と思いました。
「力を抜いて演奏できるイメージ」本当に持ってる?
「本当は力を抜かなければいけないとわかっているけど、力が入ってしまう」という人、とても多いだろうと思いますが、「力を抜いた演奏状態というのを、本当にイメージできているか?」と聞かれたら、どうでしょうか。
おそらく、「本当」にはイメージできていない場合が多いと思います。
力を抜かなきゃいけないということは、「頭」ではわかっているけど、実際にイメージしているものは「力を入れた演奏の仕方」。
というか、それ以外の演奏のイメージというのを、実はあまり持っていない/わからない。
だから、身体はそのイメージに従って、イメージ通りに動いているだけ…かもしれません。
ちなみに私はよく、「上手くなれば『楽に』演奏できるんだろうけど、上手くなるためにはまずは『頑張って』練習しなくちゃね。その過程では力が入ってもしょうがない」と思っていました。
この考え方では、いつまでたってもその「楽に弾ける状態」にはいけません。
「楽に弾ける状態」を、本当にイメージすることが必要です。
私の場合ー留学中の先生の動画を見返していて毎回思う
ここでちょっと私の話をします。
私自身、留学中に撮った先生達の見本演奏動画を見直していて、本当に毎回思うのですが、
「いや、ちょっと待って。私が思っているよりもずっと楽に弾いているよね!?」
と、先生達の演奏に対して、毎回気がつくのです。
どの曲の演奏動画も、少なくとも100回以上は見直していると思うのですが、それでも今あらたに動画を見ると、「私が思っていたその先生の演奏のイメージ」と「動画内の先生の演奏」が全然違うと気がつきます。
「以前の私の目は節穴だったのだろうか」と、いくら思っても思いきれないぐらいです。
特に、留学当時→留学から帰国後→それから半年後→さらに半年後…という感じで、間隔をあけて動画を見直すことで、以前は気がつかなかったことに、たくさん気づけるようになるのだと知りました。
そして、そんな風に動画を見直していて一番に思うのが「どの先生も、私が思っている以上に力を抜いて(楽に・力をこめずに)演奏している」ということなんです。
それで、「本当にこんなに楽に弾けるんだろうか」と半信半疑でそれを真似してみると、最初はもちろん真似できないのですが、動画を見直して、自分のイメージを(動画に合わせて)修正して、弾いてみて、また動画を見直して、イメージを修正して…とやっていくうちに、感覚がつかめる時があります。
すると、気がつくんです。
「本当に、こんなに力を抜いて演奏ができるんだ…」と。
しかもその方が音が良いんです。
演奏イメージを持つことの重要性
この経験から私が学んだことは以下の通りです。
- 演奏イメージが演奏の良しあしに与えるイメージは絶大。上手く演奏できない時は、「イメージができていない」場合がほとんど。
- 動画を見直す(音源を聴き直す)ことは大切。過去にたくさん見た動画(や音源)でも、今見ると(見直すたびに)必ず新しい発見がある
「力を抜いて演奏する」ためには、力を抜いた演奏イメージを本当に持つこと。
そしてそのためには、見本とする奏者の演奏音源を聴いたり、動画を見ること。何度も繰り返すこと。
これがとても大事だと思いました。
「自分の演奏が微妙だ」と思う時、多くの場合は「演奏スキル」などに原因を求めがちだと思いますが、そもそも本当に自分は「したい演奏のイメージ」ができているのか?ということです。
微妙な演奏をしていると自分で感じる時というのは、演奏以前に、自分の「イメージ」自体が曖昧だったり微妙である時が多いのだ、と私は感じています。
また、「いや、自分はイメージできている」と思っている場合でも、実は自分の中での演奏イメージと、見本としている奏者の実際の演奏との、「違い」がわかっていないだけかもしれません。
奏者の演奏を見る時、「自分のイメージしているもの・自分の見たいもの」をそこに投影して見るのではなく、その奏者の演奏に耳を傾け、その奏者の演奏をまっさらな気持ちで眺めるのです。
そうすると、毎回必ず発見があります。自分が思っていた演奏とは、何か違う点が必ずあるはずです。
その発見をもとに、自分の中での演奏イメージを作ってはこわし、作ってはこわしていって、より自分が目指したい方向へ、すり合わせていきます。
これをやると本当に、演奏への見方や聴き方が変わり、演奏が変わり、演奏するのがとても楽しくなります。
伝統音楽のリズムの感じ方なども変わってきます。
また、伝統音楽以外のジャンルの音楽の聴き方も変わってくるかもしれません。
伝統音楽ならではのリズムの感じ方、演奏の仕方に近づけば近づくほど、本当に楽しく、楽に、心地よく演奏していくことができます。
ぜひ、試してみてください。
以上、「力を抜いて演奏する」ことと、「イメージの大切さ」について書きました。
記事の最初に「なんの楽器でもあてはまる」と書いておきながら、最終的には伝統音楽の話になってしまいましたが、これをやると本当に楽しくなるし、音楽の聴こえ方や演奏の仕方が変わってくるので、ぜひ試してみていただけたらと思います。
伝統音楽は、自分のイメージだけで突き進むのには限界があります。
自分の道を一人で切り開こうとする前に、まずは先人達が作ってくれた道を、試しにそのまま歩いてみてください。発見がたくさんあります。
伝統音楽の世界に自分自身を開いてみてはじめて、伝統音楽の世界もまた、自分に心を開いてくれるんです。
それがとても楽しいのです。
お読みいただき、ありがとうございました。