前回まで、Olov Johanssonのソロコンサート(2021年5月)の日本語訳をしてきました。
今回からは、2021年8月にBror Hjorths Husで行われた「Väsen Duo(ヴェーセン・デュオ)」のコンサートの訳をしていきます。
訳すのが難しい時もあるかもしれませんが、できる範囲で頑張って挑戦してみます。
昔の演奏家のエピソードなどもたくさんありますので、コンサートを楽しむ際の参考にしていただければと思います。
Väsen Duo(ヴェーセン・デュオ)
デュオについて
「Väsen Duo」はフィドルやヴィオラなどを演奏するMikael Marin(ミーカエル・マリーン。通称Mickeミッケ)と、ニッケルハルパを演奏するOlov Johansson(オーロヴ・ヨーワンソン)によるデュオです。
この2人の付き合いは長く、1983年から一緒に演奏しているそうです。
1989年~2020年までは、この2人にギターなどを演奏するRoger Tallroth(ローゲル・タルロート)が加わり、「Väsen(ヴェーセン)」というトリオ(一時期は4人のカルテット)で活動していました。
2020年にそのRogerが抜け、現在はVäsen Duo(Väsen)として2人で活動しています。
2021年にアルバム「Väsen Duo」、2023年にアルバム「Melliken」を出しています。
アルバムとコンサートの時期
今回の動画のコンサートは、2021年の「Väsen Duo」のCDアルバムを出してわりとすぐの頃のものになります。
実はこの2人、1985年に「Det rister i Örat」というアルバム(カセットテープ)を出しているそうで、そのアルバムに収録されている曲を聴き直して今回作られたのが「Väsen Duo」のCDなんだそうです。
昔の演奏家たちから習った古い伝統曲を中心に、新しい自作曲も加え、古い曲と新しい視点を再構成したアルバムのようです。
(以上の情報はアルバムの解説より)
また、「低音を多めに使っている」と、とあるインタビューで本人たちが言っていました。
コンサートの会場は、以前訳したものと同じく、芸術家のBror Hjorthの元アトリエ兼、現在はミュージアムとなっている「Bror Hjorths Hus」です。
ここで行われた別のコンサートの日本語訳↓
Duo Cavez / Paulsonのコンサート、日本語訳①
「Olov Johansson ソロコンサート」(2021)の日本語訳①
動画
2021年8月26日に開催されたコンサートです。
コロナの影響がまだある時期ですが、以前は無観客で行っていたところを、今回は「少人数のお客さんならOK」という風に規制緩和された頃のようです。
最初の挨拶はまた割愛しますが、だいたいこんな感じです。
「YouTubeやFacebookなど、配信画面でご覧の皆さま、ようこそ。
そして今日こうして、このアトリエでコンサートを見られるチケットを手に入れた幸運な皆さま、ようこそ。
今日のコンサートは私たちがリクエストしたようなものでもあるのですが、このお二人をここに迎えられることをとても嬉しく光栄に思います。Olov JohanssonとMikael Marin、Väsen Duoのお二人です!」
(※以下、「※」で私の注を入れています)
①(1:31~)「Adventspolska(アドベントのポルスカ)」 av Olov Johansson
(4:35~)
(Micke):ありがとうございます。
(Olov):ありがとうございます。
皆さんにこうしてここでお目にかかれて本当に嬉しいです。
(※無観客ではなくお客さんが目の前にいる状況で嬉しい、の意味)
「特別なお客さん」ですね(笑)。
(※コロナの人数制限のため)
(Micke):良いですね、「特別なお客さん」(2人で笑う)。
(Olov):ただ今演奏しました曲は、昨年の12月初め頃に私が作ったポルスカで、「Adventspolska(アドベントのポルスカ)」といいます。
その頃は何かが起きるのを待っていました(笑)。
(Micke):それは「素敵なクリスマスプレゼントがもらえるかな?」とかそういうこと?
(Olov):うん…というより、「コンサートができるようになるかな?」とかそういう…。
(※早くコロナが収束して、コンサートができるようになればいいな、ということ)
(Micke):あ、確かに。そういうことね!
でも、コンサート、しましたね。
(Olov):はい、結局今年の夏は、私たちはたくさんコンサートをしてきました。良かったです。
ここでスタッフがOlovの配信用のマイクを入れる。(※それまでOlovのマイクはスイッチがオフだった)
スタッフがOlovに「マイクでしゃべった方がよく聞こえるから」と伝えてOlovが「そっか」と言う。
(Micke):Olovが何を言っているのか聞こえなかった皆さんへ。
ちょっと技術的な問題が起きていました。
彼のマイクが入っていなかったんです。
(Olov):入ってなかった。
(Micke):で、Olov、あなたは何を言っていたの?
(Olov):…「もうすぐクリスマスイブですね」。
(笑いが起きる)
ではなくて、今演奏しました曲は「Adventspolska」でした。
アドベントの初め頃に作った曲です。
(Olovここから英語で話す。※英語も訳しました)
FacebookやYouTubeでご覧の世界の皆さんに、ここで少しご挨拶をしたいと思います。
ウプサラにある素晴らしいミュージアム、Bror Hjorths Husへ、ようこそ。
ここにはたくさんの絵画や彫刻があります。
また、私たちに大きな影響を与えた演奏家たちもここにいます。
たとえば、August Bohlin(アウグスト・ボリーン)。
私たちは彼の伝えた曲をたくさん演奏しているのですが、Bohlinもまた、このミュージアムのそこの廊下の壁に掛かっています(笑)。
(※Bohlinが描かれた絵がミュージアムの廊下の壁に掛かっている)
今夜はぜひ、音楽と、スウェーデン語をお楽しみください。
(英語おわり)
(Micke):はい。えー。次の曲は何でしたっけ?
(Olov):次の曲は「Silverschottis(シルベルショッティス)」です。
これも私が冬の間に作った曲です。
作った時はちょうど、このSilverbasharpa(シルベルバスハルパ。※古いタイプのニッケルハルパの1つ)を修理していました。
一度楽器を分解して、全部を組み上げた時、楽器が鋭く響いて、それでこの曲が頭の中でできあがった(※直訳:茹で上がった)のです。
(Micke):そういうことですね。
②(7:15~)「Siverschottis(シルベルショッティス)」 av Olov Johansson
(10:47~)
(Micke):非常に美しい曲ですね、ニッケルハルパだか、他の楽器だか何だか(※あえてにごして冗談ぽくしている)をいじっている時にあなたが作ったこの曲。
(こんなに良い曲を作ってくれて)ありがとうございます。
(Micke笑っている)
(Olov):私はここで楽器を持ち替えます。
(Micke):次の曲も、Olovが同じ場所で作った曲、と言えますかね。(←※Olovの工房で作った曲、という意味だと思います)
その時も何かまた壊したんですか?(笑)
(※Silverschottisの時に「楽器を『分解』した」と言っていたのを受けて、冗談で「次は何を『壊した』の?」と言っている)
(Olov):はい、その時私がネジを回して“壊した”のは、こちらの楽器です。(※現代モデルのニッケルハルパを指さす)
(2人で笑う)
キーがどういう風に削られていて、形が作られているのか、細かい部分を見たかったんです。
昨冬、私は2台のニッケルハルパの製作(※製作と修理)に取り掛かってましたから。
(※1台はニッケルハルパの製作、1台はさきほどのシルベルバスハルパの修理のことだと思います)
そしてこのニッケルハルパ(※製作の方)が完成した時、次の曲が頭の中で出来上がっていました。
ですので、このやり方を続けようと思います(笑)。
今年の冬は3台のニッケルハルパの製作に取り掛かってみようかと思いますので、いったい何曲できるでしょうかね。
(笑いが起きる)
(Micke):きっと3曲できますね。
(Olovも同意する。2人とも演奏にいきかけて、Mickeが思い出して次の曲の曲名を紹介する)
「Verkstad(ヴェルクスタッド、工房)」という曲です。
③(11:58~)「Verkstad(工房)」 av Olov Johansson
続きはまた明日。
以上、「Väsen Duo(ヴェーセン・デュオ)」のコンサートの日本語訳①でした。
お二人の仲の良さがうかがえるようなMCで、見ていてほほえましくなりました。
昔の奏者のエピソードを聞いていても常々思うのですが、素晴らしい演奏をする人たちって、だいたい「なんかこの人たち天然だな」って思わせるくらい、自然体でつきぬけていると思います。
良いですね。
演奏も、私はCDだけで聴くよりもこうしてコンサートで実際に弾いているのを見ることで納得したり感じる部分がとても多いなと思っています。
また、前回のOlovのソロコンサートを見てからこのデュオのコンサートを見ると、繋がりと発展(Mickeが入ることによる変化・広がり)をより感じることができるかなと思います。
シルベルバスハルパの華やかさはMickeの低音が入ることによってより華やかになるし、オクターブハルパ(3曲目の低音の出るニッケルハルパ)の低音と電子ヴィオラの低音は、アルバムの茶色いジャケットと相まって、ダークチョコレートやコーヒー豆のようなリッチさがあると思いました。
明日以降もお楽しみに。
お読みいただき、ありがとうございました。