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Giftasvisan(結婚の歌)をめぐる考察

/ ニッケルハルパ奏者

今日は、先日ちょっと調べた曲(歌)について、調べた過程とともにご紹介していきたいと思います。

「Giftasvisan」という歌です。

Giftasvisan(結婚の歌)

「Gifta(イフタ)=結婚する」。「Visa(ヴィーサ。※ビザではありません)=歌」。

「Giftasvisan(イフタスヴィーサン)」で「結婚の歌」というような意味です。

232 Strängarの演奏

この曲(歌)を私が知ったのは、“232 Strängar”(トゥヴォーフンドラ・トレッティトゥヴォー・ストレンガル。意味は「232本の弦」)というデュオの音源からです。こちらです↓かわいいですよね。

(232 Strängarはデュオですが、この曲はピアノのソロです)

私はこの音源をSpotifyで以前よく聴いていて、先日ふいに「あ、そういればこの曲も良い曲なのだった」と思い出して、自分で弾いて録画してインスタグラムに投稿しました。

投稿する時に、いつも曲について調べて簡単に解説を書いているのですが(これが毎回1時間くらいかかる)、この曲についてはわからないことだらけ。

とりあえずSpotifyの曲詳細で、「作曲者=トラディショナル」だと出ていたので、「トラッド曲(伝統曲)ではあるんだろうな、とは思っていましたが、それくらいでした。

(※最近は音楽配信でも作曲者のクレジットをちゃんと表記しないといけなくなったので、トラッド曲なのか/作曲者がいるのかどうか、というのが非常にわかりやすくなりました。間違っている時もありますが)

Plejadernaの歌と演奏

で、まず出てきたのがこちらの動画です。Plejaderna(プレヤーデナ、ですかね。意味は「プレアデス星団」)というフォーク・グループの歌と演奏↓

この動画も好きです。歌がとても素敵だし(声の出し方とかニュアンスのつけ方とか、スウェーデンの人が歌う伝統歌という感じがします)、全体的なアレンジも、次の曲へのつなぎも気持ちが良いです。

セットの2曲目の方はMike Vass(マイク・ヴァス)というスコットランドのミュージシャンの曲だそうで、スウェーデンの曲ではありません。スウェーデンだと6/8拍子の曲ってあまり一般的ではないので、最初の1~2小節の拍子の感じで、もう「違う国の曲だ」というのがわかります。

話がそれますが、スウェーデンの伝統曲と他のヨーロッパの国(特に北欧以外の国)の伝統曲って、細かく見るともちろん全然違います。が、「なんとなく相性良いよね」ということで、ミュージシャン同士でコラボしたり(スウェーデンのミュージシャンがスコットランドのミュージシャンと一緒に組んだり)、曲をセットにして演奏したりすること、よくありますね。

(※地元の人とかはやりませんが、ミュージシャンの音楽や演奏としては結構よくあるかな、と。特に若い世代でグループを組んでいる方だと、よくやっていらっしゃいます)

話を戻しますが、「Giftasvisan」の曲の背景(どこの地方の曲かとか、本当にトラッドなのかとか)を知りたかったので、この動画の最初に出てくるクレジット「Text/Music:Mike Vass」というのに注目。

調べてみたのですが、これは2曲目の方を指しているだけで、1曲目のことではなさそうでした。

そこからさらに色々調べたのですが(Svenskt VisarkivのHPで検索したり)、この時は全然情報が出てこなくて。とりあえず、

  • 『Giftasvisan』というのは色々な歌詞とメロディがあるっぽい(→「似ている歌詞+違うメロディ」の歌の動画ならある)
  • 歌詞のだいたいの内容

この辺だけわかったので、それをインスタグラムにとりあえず投稿しました。

後日、さらにわかったこと(曲の地方、年代、歌詞の伝承者など)

さて、翌日、さきほどのPlejadernaの動画から歌詞を書き起こしていたのですが、それで思いついたことがありました。

「曲名で検索してあまり出てこなくても、歌詞の一部を検索したら、もしかしたら検索結果にヒットするかもしれない」

実際にやってみたところ、前日よりもさらに情報が出てきました。

ウルリカ・ボデーンの音源-オンゲルマンランド地方の曲、1700年代にルーツ、歌詞の内容

そこで知ったのがまずこちらの音源です↓

Ulrika Bodén(ウルリカ・ボデーン)のCDアルバムの音源です。オンゲルマンランド地方の歌や曲を集めたもの。

ウルリカはスウェーデンの伝統音楽界でも非常に有名な方で、このバックで演奏している方々も皆さん有名な方です。詳しくは動画の詳細欄に書いてあります。

(再生回数も多い動画なのに、なぜ前日の検索では一切出てこなかったのか、とても不思議…)

LIVEバージョンもこちらにあります→https://www.youtube.com/watch?v=GRXbdDz2d-U

この動画にいきついたのも、実はYouTube上の検索ではなくて、こちらのページ①のリンクのおかげです↓(YouTubeの検索だと最初出てこなかったんですよね。私が見落としていただけかもですが、余計なものばかり出てきていて)

Giftasvisan – Lajvmusik(Giftasvisanについて情報をまとめたページ。①としたのは便宜上)

この①のページに色々書いてあり(今回の歌については2番目の項目が該当)、とりあえず「この歌はオンゲルマンランド地方(Ångermanland)の歌だ(歌詞・メロディともに)」ということがこの辺で確定。

さらに、このページの注釈から以下の②のページ(CDを出しているDRONE(ドローン)のページ)に行きつき…↓

DROCD024 – VÅLJE Å VRAKE

この②DRONEのページによれば、Svenskt Visarkiv(スウェーデンの音楽の保存をしている機関)のMärta Ramsten(メッタ・ラムステン)という方いわく、「Giftasvisanは1700年代にルーツがある曲」だそう。

歌詞の伝承者と内容

そして歌詞ですが、①のページには「Inga Ström(インガ・ストルム)伝承」と書いてありますが、ウルリカの音源の詳細だと

「1番はインガ・ストルム(Inga Ström)伝承。2番はウルリカ自身が作ったもの。3番は同じ曲の別バージョンであるラップランド地方ヴィルヘルミーナのアリーダ・グレーンルンド(Alida Grönlund från Vilhelmina, Lappland)伝承のバージョンから借りてきたものだ」と。

なので、とりあえず1番はもとからあるもので、2番はウルリカの自作、3番はアレンジとして他の歌から持ってきたものをウルリカがくっつけた…という解釈で良いのかなと思っています。ということで、歌詞↓

1番:Att gifta sig är ingen brådska
oro har man natt och dag
dräng och piga skall man kosta
hund och katt skall hava mat
サビ:Tar man riker blir man girig
tar man fattig felar mat
tar man gammal blir man gnarrig
och tar man ung så får man barn

2番:Jag ska ensam gå på jorden
och jag ska vara som fågeln fri
inte tro på de falska orden
men tacka nej till vart frieri
(サビ繰り返し)

3番:En idag och två imorgon
det är min förnöjelse
det fördriver alla sorger
jag ska aldrig gifta mig!
(サビ繰り返し)

ついでに訳してみました↓ぱっと訳したので、違っていたらすみません。

1番:結婚は急がなくて良い
心配がずっと尽きないから
下男とメイドを雇うにはお金がかかるし
犬と猫を飼うにもえさが必要

サビ:金持ちと結婚すると金の亡者になりそうだし
貧乏と結婚すると食べ物が無い
年寄りと結婚すると文句ばかり言われそうだし
若い人と結婚すると子どもが生まれてしまう

2番:私はこの地を一人で行くことにする
鳥のように自由に
間違った忠告は聞かない
すべてのプロポーズに「いいえ」と言う
(サビ繰り返し)

3番:今日は今日、明日は明日のことを考える
これが私の幸せ
そうすれば悲しいことは全部どこかへ行ってしまう
私は一生結婚しない!
(サビ繰り返し)

(※途中で「下男やメイドはお金がかかる」と出てきますが、昔の若者は独身の頃は下男やメイドとして雇われの身分で働き、結婚して家庭を持つと、今度は農民の身分となり(身分が上がり)、自身が下男やメイドを雇う側になる、という感じだったそうです。参考→スウェーデンの歴史⑮若い男女の出会い、結婚、教会の役割、徴兵(17世紀)

インスタでも書いたのですが、「この歌、こんなにかわいい歌なんだから、さぞかし『結婚って良いよね』みたいな歌なんだろうな~」と思っていたら、まさかの内容で衝撃的でしたが、

このかわいいメロディにのせて歌われると、なんだかんだ強がっているだけの歌(つまり、文句を並べつつも本当は結婚したい・結婚するのが嬉しい人の歌)にも聴こえてくる気がします。

(結婚の歌、というタイトルの通り、本来は結婚を祝う歌なのだと思いますし)

他のバージョン

また、さきほども書いた通り、歌詞もメロディもかなりバリエーションがあって、色々な地方で違うものが伝わっているみたいです。たとえばこちらとか↓

同じような内容の歌詞ですが、メロディは結構違います。エステルボッテン(Österbotten)のものだそうで、歌詞はマーリン・フォックスダール(Malin Foxdal。歌い手)が採集・調整したものだそうです。

あとこちらとか↓これもかわいい。

このバージョンは、フォークアカペラグループのKraja(クラヤ)も歌っている音源があります。スモーランド地方(Småland)のものだそうです。

このバージョンを聴いていて思ったのですが、今日の記事で一番最初に書いた232 Strängarが、ピアノソロのアレンジで最後の方に一瞬入れていたメロディ(2:08~2:14辺り)…。

あれってもしかして、こっちのバージョンのBパートのメロディ(0:20~/0:42~/1:05~)なのかも?と。

どうですかね?聴き比べてみてください。最初の音源(2:08~の再生)↓

「たまたまメロディが似てしまっただけ」というのもあるかもしれませんが、あえて入れているとしたら、さりげなくてカッコいいですね。

こんな感じで、最初の音源に戻ってきたところで、「Giftasvisan」をめぐる考察はひとまず終了しました。


以上、Giftasvisanについて調べたことをメモ的にまとめてみました。

調べても調べても全然情報が出てこない…という時に、視点を変えるだけでいきなりたくさん情報が出てくると、とても嬉しい反面、「検索機能にはまだまだ限界があるんだな」と思います。

今回私は、「歌ものの場合、『曲名』で検索するだけではなく、『歌詞の冒頭』(もしくはどこか一部)を使って検索せよ」ということを学びました。

歌の検索で困った時はぜひ活用してみてください。

では。