日曜日から続けている、「Maskin」のコンサートの日本語訳シリーズ④です。
①~③はこちらです↓
動画
前回の終わりの「Dr. Erika」の演奏部分~再生するようにしています。
⑪(37:09~)「Dr. Erika(ドクトル・エリーカ(エリーカ博士))」 av Olov Johansson
演奏とは直接関係ありませんが、演奏中、画面の左下に出ている番号は「swish(スウィッシュ)」という、スウェーデンで流通している個人間送金のアプリのための電話番号です。
今回の場合で言えば、主催者Boda Hembygdsföreningへの寄付の番号です。
このswishはスウェーデンの大手銀行らが共同で開発したシステムということで、電話番号と銀行口座が連携していて、電話番号とスマホを使ってタイムラグ無しで簡単に送金ができます。振込手数料などもほとんどの銀行口座間で無料らしいです。インターネットバンキングのさらに手軽で便利なバージョンです。
(40:27~)
(皆で一息ついて笑う)
(Erika)ふう。
(Olov)ここで一息つこう。
(Erika)速いテンポの曲ばかり弾いてきたね。ここでちょっと一息つかないと。
さて、今度はちょっと離れた場所、Bingsjö(ビングショー)の曲を演奏してみたいと思います。
(※Bingsjöはダーラナ地方の地域名です)
Viksta-Lasseは若い頃、Hjort-Anders(ヨート・アンダーシュ)ととてもよく一緒に演奏していました。
Hjort-AndersはBingsjö出身のフィドル奏者ですから、(Viksta-LasseはHjort-Andersから)Bingsjöの曲をたくさん習いました。
Bingsjöの伝統曲は、Gås-Andersが弾くような曲とはまた一味違う響きがあります。
さらに、彼らはBingsjöの曲に、ウップランド地方の伝統を加えて色付けをしました。
次にお送りするのはそんな曲です。
私がRobertのお父さん(=Bosse)に教わった曲で、「Kärleksvisa efter Pekkos Per(ペッコス・ペール伝承の愛の歌)」です。
Pekkos PerはBingsjöの偉大な演奏家の1人です。
私は、Robertのお父さん(Bosse)ほどこの曲を美しく弾く人を知りません。
(Bosseが弾くこの曲が)本当に美しかったんです。
(Olov)きっとRobertじゃない?
(※Bosse以外に美しく弾くのはRobertでしょ?という意味)
(Erika)確かに。Robertがこの曲で愛を周りに分けるんだね。(※「愛の歌」だから)
(Robert)…じゃあ、Pekkos Pers kärleksvisaを。
(Erika)うん。準備はOK?
※Hjort-Andersについてはこちらをどうぞ→Hjort Andersについて
⑫(41:36~)「Pekkos Pers kärleksvisa(Pekkos Perの愛の歌)」
「愛の歌なのに暗い曲だあな」と思われるかもしれませんが、スウェーデンの伝統曲は短調の曲がたくさんあります。地域によっては短調の曲ばかりです。
おそらく、昔は「長調=明るい」「短調=暗い」というような認識は、人々の間では一般的ではなかったのではないかと私は思っています。
(そう思うのは現代の私たちの感性だったり、クラシック音楽など他の音楽の影響があるのかなと思っています)
むしろ短調の曲に「美しさ」を感じていたり、結婚式などの場では短調の曲の方が「格式が高い」印象があったのではないかなと、個人的に考えています。
(45:45~)
(Robert)さあ、「愛」つながりで、次の曲にいきましょうか。
私は妻のLena(レーナ)に曲を作りました。
彼女の祖父がヴェストマンランド地方の地方紙に、「農場での人生」について、短いエッセイのような文章を書いたことがあります。
そこで奥さんのことを「Livsförljuverskan(人生を明るくしてくれる人)」と表現していて、ぴったりだと思ったので、真似しました(表現を盗みました)。
次の曲は、私のLivsförljuverskanへの曲です。
Livsförljuverskanは奥さんのおじいさんの造語だと思います。livは「人生」、förjuva(動詞)は「明るくする、心地よくする」という意味です。「人生を明るくしてくれる人」かな、と思います。
⑬(46:29~)「Livsförljuverskan」av Robert Larsson
(49:15~)
(Olov)あと1曲だね。
(Erika)うん、次で最後の曲です。
(Olov)次は全員でフィドルを弾きますが、チューニングを変えないといけないので…。
Robert、ちょっと何か話せる?その間に2人はチューニングしておくから。
(Robert)次に演奏する曲は、Viksta-LasseがHjort-Andersから教わったポルスカです。
タイトルは「Lilla Hins polska」。
この曲はダーラナ地方のMoraのHins Andersが弾いていた曲です。
とりあえずこのポルスカは、「可能な限りトリルをする曲」という感じです。
では、「Lilla Hin」。
(Erika)そう。「悪魔の」じゃなくて「Hins」 Anders(人の名前)なんだよね。
(※↑「Hins」と言うと「hin(悪魔)」+所有格「s」のように見えるけど、そうではなくて「Hins」という人名なんだよね、という意味だと思います。hinは悪魔(djävul)の別名です。MaskinのCDの曲としては「Lilla Hin」というタイトルなので、もしかしたらhinとHins Andersをあえてかけているのかもしれないし、違うかもしれません)
(チューニングしている間に、swishでの寄付を呼び掛ける画面が表示されます)
(Olov)最後の曲の前に、皆さん、ありがとうございました。
ここ、Bodaに来て皆さんとお会いできてとても嬉しいです。カメラと音響のPetterやOlle、すべてをアレンジしてくれたGunnar、ありがとうございました。
そして、コロナの有無に関わらず、毎年こうしてコンサートなどの素晴らしい機会をアレンジして催してくださっているBoda Hembygdsföreningへの寄付も、どうぞよろしくお願いいたします。
コンサートをお聴きくださり、ありがとうございました。
⑭(52:21~)「Lilla Hin」
この曲の演奏が終わるとすぐに映像が終わります。
不思議な余韻を残してコンサートは終わります。
以上、「Maskin」のコンサートの日本語訳をしました。
この3人はそれぞれの演奏の個性は結構違いますが、引き継いでいる伝統のバックグラウンドが共通しているので、独特の「共有している雰囲気」があると思います。
3人同時に弾かれると、正直どれがメロディなのかもよくわからないくらいに音が押し寄せてきて、私は最初は圧倒されました。
3人がそれぞれ自然体で楽しく弾いている姿がとても印象的です。
伝統曲の演奏方法は地域によっても違うので、いくら素晴らしい奏者であっても、「フィーリングが合う人を見つける」というのは大変なことだと思います。
こうしてこの3人がトリオでCDを出して、コンサートをしてくれていて、良かったなあと思います。
CDの方は21曲ほど収録されているので、コンサートで演奏していない曲もたくさん入っています。
お読みいただき、ありがとうございました。