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伝統曲と出身地域の関連性~専門性の深さが魅力~

/ ニッケルハルパ奏者

昨日は、「スウェーデンの人は出身地域を大切にしている」という話と、民族衣装の話について書きました。

スウェーデンの人は出身地域を大切にしている話~出身地域と民族衣装について~

今日は、伝統曲と出身地域の関連性について書きます。

伝統音楽の奏者は、出身地域の伝統曲(だけ)を弾く人がとても多いのですが、その専門性こそが演奏の魅力につながっているかもしれない、という話です。

私が普段考えていることを思うがままに書いてみたので、読みにくかったらすみません。

伝統曲と出身地域

多くの伝統音楽奏者は、自分の出身地域(地元)や生まれ育った地域、関連の深い地域の曲を好んで演奏しています。

「この人ならこの地域の曲」「あの人ならあの奏者が伝えた曲だよね」というように。

これはもともとは、子供の頃からそれぞれの地域に伝わる曲を聴いて弾いて育った場合が多かったり、自分に楽器を教えてくれる近所の奏者がその地元の奏者だから、自然と地元の曲ばかりを弾くことになった、というケースが多いと思います。

むしろ、「地元で伝わっている曲以外は全く知らないし弾けない」という奏者(でも素晴らしい演奏をする奏者)も多いです。

現代では、交通網も発達し、YouTubeやディスタンスコースなども増えたので、地元の曲以外にも色々な曲を弾くことが可能なのですが、それでもやっぱり地元の曲のリズムを自分のルーツとして持っていたり、地元に愛着を感じて、自分と関連性の深い地域や奏者の曲を好んで弾く奏者が多いかなと思います。

これを私は「奏者の専門性」と思っています。

スウェーデンの伝統音楽では、この「奏者の専門性の深さ」を大切に思っている文化があるな、と感じています。

専門性の深さが持つ魅力

最近では、伝統音楽と他の音楽を混ぜたジャンルレスな音楽を演奏したり、地元の曲というのではなく色々な地域の曲をアレンジして演奏したり、オリジナル曲を中心にわりとスマートに演奏する、若い世代の奏者などもたくさん出てきています。

それはそれで魅力があるし、私もブログで紹介していますが、一方で、やはり何かしらの地域性・専門性が見えてくる奏者の、ありのままの演奏(アレンジなどにあまりこだわっていない即興的な演奏)には特別な魅力を感じます。

これがおもしろいんです。

たった一つのメロディを弾いても、楽譜通りに弾くのではないゆらぎ、リズム、音の持っていき方が自然とあらわれてきます。

「ああ、この人の演奏だな~」と思わせる個性と、出身地域で伝わる曲のリズムのとり方とが合わさって、「おお」と独特なものとして聴こえてきます。

人それぞれの個性に加えて、「そうそう、この感じ!」みたいな「聴いている側としては予測可能な専門性/普遍性」(でも自分でやるのはできない、魔法の演奏)が、メロディをよりおもしろくしてくれるのです。

この専門性の深さは、一朝一夕に身につくものではありません。

だからこそ、その人の演奏に独特の魅力が宿るのです。他の誰にも真似できません。

「あの人は精霊に楽器の演奏を習ったのだ」と言われるくらいに、不思議な魅力があるのは事実だと思います。

リズムや個性を楽しむ

スウェーデンの伝統曲はメロディがシンプルですが、これはメロディだけを弾いて聴いているのではなく、「メロディの根底でその奏者が持っているリズム」をお互いに楽しむ文化があるからだと思います。

そのリズムが、奏者の出身地域の曲や、奏者が普段からよく弾いている曲のリズム、演奏の仕方、ダンスのリズムなどに基づいていて、しかも演奏中の1曲だけではなく、奏者の演奏全体の一貫性にも繋がっているから、聴いている側としてもリズムやゆらぎを共有できるし、「なるほど」とも思うし、同じような曲が何曲も続いてもおもしろいんですね。

本当におもしろいんです。「同じ曲でも、この人が弾くとまた全然違うな~。良いな~」と思います。

現代では色々な地域の曲をハイブリッドに演奏する奏者も増えているし、そもそもあまり地域性を感じさせない演奏の仕方を得意とする人も増えているかもしれませんが、それはそれで、その人なりの演奏スタイルのルーツや個性が曲とぴったりはまっていたら、とてもおもしろいと思います。オリジナルの場合は曲の個性もありますね。

全部をきれいに演奏しているものよりも、ちょっとしたいびつさや、地域性、個性がよく感じられる演奏の方が聴いていて美しく聴こえる、ということもよくあります。

神は細部に宿る、ではありませんが、1曲1曲の小さいところにおもしろみがつまっているので、1曲1曲や1つの地域を深く掘り下げている演奏はやっぱり素敵だなと思います。

深みと普遍性があります。

スウェーデンの伝統音楽奏者の持つ専門性の深さとその魅力を、私自身も大切にしていきたいです。


以上、出身地域の話から、伝統音楽奏者の専門性の深さが持つ魅力について書いてみました。

そういった観点でも、ぜひ伝統音楽を聴いていただけると、とてもおもしろいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。